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翔べ君よ大空の彼方へ     4-❾ 明日へ

 挑戦をするのは人だけではない。
競走馬もまた、明日の為に全速力でターフを駆ける。

 前年の有馬記念で2着惜敗のブレストファイヤーが、連覇を目指す天皇賞春の前哨戦、阪神大賞典を2馬身差で勝利した。
 上々のスタートを切った同馬であったが、レース後に歩様の乱れが見られ、検査を行った結果、右前脚繋靭帯炎を発症
、治療が長期間に渡る事から引退種牡馬入りも検討されたが、競争能力回復に至るとの判断により、治療長期休養に入った。

 再びの挑戦への休養である。


 4月上旬、阪神競馬場に精鋭が集結した

 悲願のG1制覇を暮れのグランプリで飾ったバッケンレコード、大阪杯連覇を目指す弾丸コルトガヴァメント、ダービー馬スターダイナマイト、凱旋門賞4着ユーフォリアー、菊花賞馬ハイパーレスキュー、更には前走香港でその絶対的スピード能力を活かし、G1を奪取したユーアーマイン、そして翌月のヴィクトリアマイル不動の大本命、2階級制覇に挑戦するレトロワグラースまでもが果敢に挑戦した。
 それらを迎え撃つゲメインシャフトを含め、実に8頭のG1馬の夢の競演であった。


 ゲメインシャフトと天才鷹のコンビは
、王者の如くその挑戦を堂々受けて立つ走りを見せた。

 逃げるレトロワグラースの2番手につけたユーアーマインの直後にピタリと張り付きインを追走、4コーナーを回り4馬身あったその差を残り150メートルで逆転、併走するユーフォリアーを競り落とし、凄まじい追い込みのバッケンレコード、コルトガヴァメント、スターダイナマイトの猛追を首差凌ぎ切り、G1レース6勝目を達成した。

 勝利ジョッキーインタビューで鞍上は
「アイツと一緒に英国に行きたいと思います!」と、堂々宣言をした。

 満員のスタンドからの大歓声が、阪神競馬場を包み込んだ。


 英国に再び世界の超一流馬が集結する報道が発表されていた。
 凱旋門賞馬ガルデリネルジェスは、前走のジャパンカップ5着後に休養に入り、5月中旬に英国入り、6月上旬開催のコロネーションカップ(G1芝2400m)に出走、ジャパンカップ2着の英ダービー馬ロゼッタストーンは、6月中旬地元開催のプリンスオブウェールズS(G1芝1900m)へ、米2冠馬ヴァイオレットエヴァーガーデンは、ジャパンカップを逃げ切ったその余勢を駆って、米国の高額賞金レースの一つである1月下旬開催のペガサスワールドカップ(G1ダート1800m)を圧逃後に休養に入り、6月中旬に英国入り、7月上旬開催のエクリプスS(G1芝1990
m)へ。

 米、英、仏の最強馬が、それぞれの前哨戦を叩いて狙う標的は、7月下旬開催の欧州最高峰のレースの一つ。

 日本最強の看板を掲げ、大阪杯を王者の走りで制したゲメインシャフトの次走は、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1芝2390m)に決定した。

 再び、世界の強豪に挑戦するゲメインシャフトである。


「行け〜‼︎」
最後の直線、少年は拳を振り上げ、大歓声で沸くスタンドのゴール前で力の限りの叫び声を上げていた。
 その声援が力の源になったかのように
、ストロングクーガーが先頭を走るハイパーレスキューを猛追する。
 残り100m、その差は半馬身、2頭のマッチレースだ。

 菊花賞馬対決•••互いのプライドと意地が火花を散らす。懸命にステッキを入れ
、互いのジョッキーがパートナーを鼓舞する。
 彼らは本能で、その意味を知る。
1センチでも1ミリでも前へ‼︎

 その数秒後、2頭は全力でゴールを駆け抜けた。
 その瞬間、ジョッキーは右手を突き上げ、雄叫びをあげた。

 歩夢は少年を抱き抱えるようにしてその場を離れ、次の目的地へと向かった。

 🐴📷✨🐴ー🐴📷✨🐴ー🐴📷✨🐴

 たくさんのカメラマンによる撮影が始まった。
 騎手を乗せた威風堂々の天皇賞馬を中心に、関係者が左右に分かれ、王者へと繋がれた綱を手に笑顔を見せている。

 とにかく賑やかな口取り式であった。
馬主、調教師、調教助手、担当厩務員、生産者•••その中で翼は満面の笑みを浮かべていた,
 妻も、3人の子供達も。

 前年の菊花賞に続き、歴史ある栄光のG1レース天皇賞春を自家生産馬で制覇するという、これ以上ない晴れ舞台。

 翼は、その輪の中に、1人の少年を迎え入れた。
 少年は、翼の隣で子供達と笑顔でピースサインをしていた。
 きっと彼も、そして彼の永遠のライバルも喜んでいるだろう•••翼は笑顔の奥で、親友と一緒に競馬に魅入られたあの日、あの時、あの瞬間を回想していた。

 PS•••いつもお目に留めて頂き、心より感謝したします🥹🙏次回配信は1月16日午前8時です。未来少年が、大切な恩人の前で一大決心を⁉︎馬に魅入られた少年は何を決断したのか?それでは皆さん、またお会いしましょう🙇🙏

         AKIRARIKA



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