翔べ君よ大空の彼方へ 6-⑬ 初陣
まるで、彼等の初陣を祝福するかのように空はキラリと晴れ渡り、雲の一つも見られない。
風は緩く流れるものの、火照った体を癒すには至らない夏真っ盛りの新潟競馬場。
そのパドックでは、今まさにデビューを迎えようとしている16頭の競走馬が周回を重ねていた。
初陣を迎える2歳馬の存在は、競馬界に吹き込む爽やかな涼風であり、夢と希望を背負う人々を照らす、熱き太陽でもあるだろう。
さて、彼等は自身がこれから戦いに挑む事を理解しているのだろうか?
大勢の観客を目の前にして、テンションを上げる者、引き手を持つ厩務員よりも前へ!と入れ込み気味の旺盛な前進気勢を見せる者、目の前の牝馬に気を取られ、集中力を欠く者、ファン手作りのカラフな応援幕に物珍しさを感じたのか、しきりに首を横に向けながら歩様を進める者•••まさに十馬十色?である。
その輪の中に、およそデビュー戦を迎える若駒とは思えぬ、経験を積んだ古馬のように堂々落ち着き払い、首を軽く上下にリズム良く、パドックの外側を大きなストライドで、ゆったりと闊歩する1頭の競走馬の姿があった。
我、何事にも動ぜず•••泰然自若を地で行くその若駒に、誰もの視線が向けられるのは自明の理•••そう、今日というこの日が来るのを競馬ファンは待ち焦がれていたのだから。
パドックは、その人馬の姿を間近で見ようとする観客の人いきれで溢れ返っていた。夢を、希望を抱かずにはいられない人々の。
まるで、G1レースのパドックさながらに、手作りの応援幕が華やかに彩りを添えている前代未聞の新馬戦•••その応援幕のほとんどが、彼等人馬へのエールであった。
単勝1.1倍の支持率が、彼等への期待の大きさを如実に物語っていた。
額の上部に凛と輝くスターマークと炎の流星、白銀のたてがみと長い尾毛を僅かに揺らし、いかにも鍛え抜かれたその馬体を包む、薄い皮膚に隠された柔らかな筋肉が歩様を進める度に躍動する。
「キレイだねえ•••」
「うん•••天使みたいだ!」
「白の靴下もかわいい❤️」
パドックの最前列を陣取っているグループ一行から、続々と感嘆の声が挙がった。小学生数人を前列に、老若男女を含む結構な大所帯であった。
夏休み真っ盛り•••北は北海道、南は和歌山、四国•••大空翔馬に繋がる円の中の縦と横の糸。彼を見守る、全国津々浦々の仲間達が集結していたのである。
一行の前には、仲間達が心を込めて作成したエール••• 2枚の巨大な応援幕が飾られていた。
1枚はフランスから送られてきたもので
、
〝BE KAKERU🔥⭐️FIRESTAR🐴🔥💨💨〟と描かれ、青毛馬が疾駆する姿が、
そして、もう1枚•••
〝戦場に火を起こせ!ファイアスター🔥⭐️いざ見参!〟と。
「あ!翔馬さんが出て来た!」
少年の一声に、加奈も、とんぼも、うさぎも、駿馬を肩車していた萩花も、礼奈を抱いた久美も、そして周りの大人達も
、一斉に視線をそちらへと向けた。
騎乗号令がかかったのであった。
〝怪物誕生か⁉︎〟
宝塚記念で2着以下を6馬身切って捨て、G1レース3勝目を挙げ、凱旋門賞挑戦を表明したダークブリザードに対する記事の内容ではない。
宝塚記念最終追い切り•••坂路コースで僚馬と2頭併せの追い切りを実施していたダークブリザード。
併走する2頭•••その8馬身後方を単騎追いで追走していた1頭の競走馬が、一陣の旋風を巻き起こし、あっという間に先行する2頭を、G1レース3勝馬を置き去りにし、逆に2馬身先着して見せたのだ。
その驚愕のシーンを目の当たりにした調教師、騎手、関係スタッフ、そして何よりも報道陣が色めき立ったのは言うまでもない。
推定タイム、坂路800メートル46秒フラット•••途轍もない驚愕のタイムにモニター故障かと思われたのだが、機器は至って正常であり、報道各社はてんてこまい•••翌日から早速彼の馬の特集を組み、
〝三冠間違いなし!〟と、ファイアスターの名が一躍知れ渡る事になったのである。
PS•••いつもお目に留めて頂き、心より感謝申し上げます。
次回配信は、7月20日土曜日午前8時です🕗
互いに無心となり呼吸を整え、静かにその時を待ち•••いよいよ人馬がその時を🐴💨🔥😤
それではまたお会いしましょう🥹🙏
AKIRARIKA
正解は、ヒーローイズカミング、です🤣
細江純子さん、みてますかあ🤣🤣🤣