翔べ君よ大空の彼方へ 4-⑲ 競演
雲1つなく晴れ渡った空の下、目の前では夢の競演が行われていた。血縁関係の4頭が仲良く放牧地を駆けているのだ。
名牝ムーランルージュの娘レザンドリー、そのレザンドリーの全弟であり、命を繋ぎ止め不死鳥の如く甦ったフェニックスルージュ、レザンドリーの息子のフォンテンブロー、そして数ヶ月前にこの世に生を受けたサイレントマジョリティーであった。
生まれて四か月のサイレントマジョリティーは美しい栗毛のたてがみと尾を揺らし、母親の側にぴったりと寄り添いながら、力強く大地を踏みしめていた。そして名馬2頭を恐れる事なく、いやむしろ興味津々といった様子で、自ら彼らに近づいては、その血の繋がりを確認しているのであろうか•••そして彼らもまた分かっているのだろう、優しい眼差しを向け
、彼が駆けるスピードに合わせて放牧地を駆けているのだ。
その小さな命を守っているかのようにも見える。
「おうまのおやこはなかよしこよし、いつでもいっしょに、ぽっくりぽっくりあるく♬」
ヴェロンが母親に教えてもらった童歌を歌い出した。
その4頭を見守るオーナー、調教師、クリストフ一家、スタッフ達•••皆、その長閑な光景に心を和ませながらも、重大な責任を背負っている事を改めて認識し、より一層気持ちを引き締めるのであった
。
雲の欠片1つも見当たらない、広大な青空。容赦なく照りつける強烈な日差しを浴びたサラブレッド達が今、人の手を離れ、決戦への準備とばかりにターフへと舞い降りた。
いよいよ始まる大一番。
世界一の称号を競い合う戦いの発走時刻が刻々と近づいていた。
歴史あるこの晴れ舞台•••観客が放つ熱気が彼らにも伝わったのだろう•••11頭の出走馬が思い思いにターフの感触を、異国の風景を、風を感じながら疾走して行く。
世界中の競馬ファンの視線が、ここアスコット競馬場に注がれていた。
ある者は現地で観戦を、ある者はテレビ中継を。どんなに時差があろうとも、この一戦を目に焼き付ける為に眠たい目をこすりながら耐えている者、仮眠を取ってこの時間帯に合わせて起き出した者
•••国によって様々であろう。
ここ日本では、前日早めに就寝を取り
、眠い目をこすりながらも起き出した1人の少女が、抜き足差し足忍び足で来客が休んでいる和室の前を静かに通り、階段を降りてリビングへ向かう姿が見られた。
「おっ!寝坊しなかったな!」
父の貴加志と母の由奈子は既にテレビの前でスタンバイしていた。
加奈は顔を洗って準備万端の様子でソファーに座った。
深夜1時•••日付が変わり土曜日となったが、明日から学校は夏休みだから何の心配もない。それでも、母と一緒に朝食の準備をするので7時には起きよう!豪華な食事を食べてもらうのだ!父も母も、
〝ゆっくり休んで!〟と言ったから大丈夫だろう。レースが終わったらすぐ寝なきゃ!
続々と出走馬がゲートインを始めた。
「決して大声を出さないように!」
貴加志がテレビのボリュームを少し下げながら注意を促した。
2人は首を縦に振り、仲良く3人並んで
、今にもゲートを飛び出そうと待ち構えている競走馬達の姿を見つめ始めた。
少女は、愛馬の馬房に備えられた大型モニターを見つめている。
「さて、いよいよ始まるよ!」
愛馬は両耳をくるりと回し、飼い葉桶から顔を出した。
まるで、自身がこれから疾走を始めるかのように鼻息を荒くした愛馬に少女は笑みを浮かべた。
少女の横で、抹茶のジェラードを口にしていた親友が目を丸くした。
「今からジェスが走るよ!この前遊びに来たからわかるよね、フェニックス⁉︎」
これこそ、正しく人馬一体•••白馬は肯定するかのように大きく首を振った。
やがて始まる少女と白馬の戦いを前に
、その1戦の火蓋が切られた。
PS•••いつもお目に留めていただき、心より感謝申し上げます🥲🥹次回配信は2月21日水曜日午前8時です。
何と、この日は私の誕生日🎊🎂🎉🤭
5○歳?です😅ああ、やだやだ😖😖
ヨギボーヴェルサイユリゾートファームでの半日、素敵な時間でした😊😊また夏にきますね!🥲🥹
AKIRARIKA
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この作品を通して、養老牧場への牧草寄付等の引退馬支援を行います。その為のサポートをしていただければ幸いです。この世界に生まれたる、すべてのサラブレッドの命を愛する皆様のサポートをお待ちしております🥹🙇