翔べ君よ大空の彼方へ 5-❻ 英雄達の戦②
マイルチャンピオンシップは、正に一強であった。
最強マイル女王、レトロワグラースの登場もあり、京都競馬場のスタンドは立水の余地もない程の観客で埋まっていた
。
引退戦の彼女の勇姿に込められたその単勝オッズは1.2倍•••騎手心理としては計り知れない重圧がかかるであろう。
しかし、最内1番枠から飛び出した彼女は天才鷹に導かれ、あっという間にハナを奪い逃走、残り150メートル付近で1馬身差まで迫られるもの、そこから鞍上の合図で再び突き離し、2馬身半の差を付けてゴール、正に無敵のマイル女王•••G1レース6勝目を飾り、ウイニングランを見事に飾った。
既に翌年の交配種牡馬も、本年欧州を席巻し、先月引退を発表したフォンテンブローとレース前に発表されており、彼女のファンにとっては正に夢の広がる1日となった。
JCは国内外から多士済々のメンバーが集結した。
愛オークス馬ディヴァインリリー、仏サンクルー大賞勝ち馬で、凱旋門賞4着のサンダーボルト、そして米国最強馬、JC連覇を目指すヴァイオレットエヴァーガーデン、国内からは世界屈指の末脚を持つ2頭•••、バッケンレコードと、これが引退戦となる弾丸コルトガヴァメントの再びの激突•••正にアドレナリン全開の直線の攻防に、血湧き肉踊るかの如く、正にスタンドが揺れてると言っても過言ではない程の声援が人馬に送られた。
最後の直線、正攻法の逃げを打ったヴァイオレットエヴァーガーデンが残り200で追いすがるサンダーボルトを競り落とし先頭に立ち、その差を1馬身半に広げ、襲いかかるは馬場の真ん中からディヴァインリリー、そして大外から2頭、一気にやってきた内にバッケンレコード、外コルトガヴァメント。
残り50でヴァイオレットエヴァーガーデンを捉え3頭横並びとなり、首の上げ下げのままゴールを駆け抜け、勝負は長い長い写真判定へともつれ込んだ。
スタンドが息を呑むかのように静まり返り、静寂が破られたのは約10分後•••弾丸コルトガヴァメントが見事ハナ差で勝利を掴み取ったのである。
2着ハナ差同着で2頭が入線、レースは確定し、最終レース終了後にG1レース3勝馬コルトガヴァメント、並びに先週のウイニングランを見事に飾ったレトロワグラース2頭の引退式が行われた。
スタンドの観客は、2頭の勇姿を涙と笑顔で見つめ、片や自らの血脈を後世に広げる為、片や新たなる命を生み出す為の戦いに挑む2頭の未来に思いを馳せ、その姿を見送ったのであった。
12月に入り、衝撃の一報が国内外の競馬サークルのみならず、多くの競馬ファンを混乱に陥れた。
英チャンピオンS2着の後、香港カップ連覇に照準を合わせたゲメインシャフトであったが、渡香2週前の調教後に歩様の乱れが発覚、検査の結果右前脚繋靭帯炎と診断され、約1年の休養、治療が必要と診断されたのだ。
その優秀な競争実績と良血の血を後世へと、オーナーは引退種牡馬入りを決断した。
しかし、同じ症状で1年前より休養に入っていたG1レース3勝馬ブレストファイヤーが、まもなく復帰の目処が立つであろうという時期でもあった事、そして、オーナー、厩舎宛の、
〝彼と愛馬が再びコンビを組んで、ターフを駆ける姿をもう一度見たい!〟と多くのファンの願いがオーナーの心を動かし、引退種牡馬入りを撤回し現役続行を発表、彼の帰りを待ち、長期休養に入る事になった。
年末のグランプリ。
ユーフォリアー、ハイパーレスキューは既に種牡馬入りしており、コルトガヴァメントは先日引退、バッケンレコードは天皇賞秋とJCの激走での疲労回復を優先し回避•••人気は、圧倒的に2頭が背負う事になった。
前走凱旋門賞小差3着スターダイナマイトが単勝2.0倍、前走メルボルンカップを圧勝、連覇を果たしたストロングクーガーが2.5倍、3番人気に先月の菊花賞を5馬身差で圧勝した新鋭アモルファスが7.5倍で続き、単勝1桁台は3頭•••夢のドリームマッチは幕を開けた。
アモルファスが前走同様、そのスピード能力ですんなりと先手を奪い、マイペースの逃げに持ち込んだ。
向こう正面で一旦ペースを緩め、後続を引きつけてから3コーナー手前で再び後続を引き離し、4コーナー入り口までに2馬身半のリードを取り最後の直線。
坂の途中、内からストロングクーガー
、外からスターダイナマイトが猛追、その差を縮めにかかる。坂を駆け上がりゴールまで残り70、いよいよ2頭が先頭を捉え、人馬共に力を振り絞り最後の勝負に挑む。
地鳴りのような大歓声が彼らに襲いかかるかのようだ。
互いのプライドをぶつけ合うかのように、2頭が首の上げ下げで、ゴール板を駆け抜け、僅かに遅れてアモルファスが入線した。
激闘の結果は、写真判定のリプレイがターフビジョンに示された通り、僅か4センチのハナ差でスターダイナマイトが宝塚記念に続くグランプリ連覇を達成した
。
2年連続2着惜敗の鞍上が、悔しげな表情を浮かべていたのが印象的なグランプリレースは幕を閉じた。
この年もまた、海外G1制覇の快挙と共に新世代の台頭があり、また一方では次世代にその血脈を引き継ぐ為、一流馬の引退種牡馬、繁殖牝馬入りが発表され、新なる物語の始まりを想像する多くのホースマンやファンに見送られ、それぞれが次の戦いへと旅立っていくのであった
。
PS•••いつもお目に留めて頂き、心より感謝申し上げます。次回配信は4月3日
水曜日午前8時です。
心の修行に打ち込む彼が、僧正に呼ばれて、一大決心を迫ります🔔🔔果たして⁉︎
この前正月終わったばかりなのに、あっという間に4月ですか😅😅もう少し、ゆっくり時が流れてくれたらいいのにね😁🤣
それではまたお会いしましょう🙏🙏
AKIRARIKA