翔べ君よ大空の彼方へ 5-❺ 英雄達の戦①
2025年•••この年もまた、人々の夢と希望を背負いターフを駆け巡った競走馬達のドラマが数多く生まれた。
10月。
凱旋門賞には世界各国のG1馬が集結、その中でも特に注目されたのが、仏が誇る二大巨塔•••先輩の仏ダービー馬ガルデリネルジェスと本年の仏・愛ダービー馬フォンテンブローの直接対決であった。
負けてなるものかと、日本から勇躍参戦したのが、最強4歳カルテットの1角•••ダービー馬のスターダイナマイトであった。
レースは正に、3頭による3頭の為の戦いとなった。
前走の宝塚記念を制し、馬体回復後の7月下旬に早々と渡仏し、じっくりと調整されたスターダイナマイトは、最後の直線生涯一とも思われる鬼脚を発揮した。
しかし、僅かに前2頭を捉えきれず、鼻、鼻の差に泣き3着ではあったものの
、その怒涛の追い込みには、誰もが目を瞠った。
その激戦を制し勝利を掴んだのは、斤量差を生かし2番手に付け、ライバルよりも前でレースを進めたフォンテンブローであった。
史上最高とも言える激戦を戦いあった3頭の走りに、観客は盛大なるスタンディングオベーションで応えた。
同オーナー、同厩舎のワンツーフィニッシュはもとより、祖母ムーランルージュ、母レザンドリーへの最高の贈り物!と、多くのファンやホースマンが喜びに包まれたのは言うまでもない。
しかし、レース終了30分後に驚きのニュースがオーナーから発表された。
フォンテンブローの引退である。
絶頂期であり、まだまだ伸びしろのある3歳での引退はセンセーショナルに報じられた。
故障による引退ではなく、後世にその血を伝える為との、オーナーであるロッシ氏の決断によるものであった。
世界屈指の競走馬フォンテンブローは
、ジャン・リュクラガルデール賞、仏ダービー、愛ダービー、パリ大賞典、そして凱旋門賞と五つのG1を制し、惜しまれつつも次の重要な戦いへと旅立つ事になった
。
英チャンピオンSもまた、この2頭による一騎打ちとなった。
前走キングジョージ3着のゲメインシャフトと、同4着のロゼッタストーンの再激突である。
レースは最後の直線、残り200メートルでロゼッタストーンが2馬身のリードを保ち、逃げ切るかに思われたものの、大外から一気にゲメインシャフトが強襲、勝負は写真判定に持ち込まれ、結果、僅か4センチ差で凱歌はロゼッタストーンに挙がり、中距離世界最強の称号を獲得した。
秋の天皇賞も、また、熾烈な戦いであった。
前走キングジョージで鼻差の2着に泣いたバッケンレコードと、前走宝塚記念でスターダイナマイトの鼻差2着と惜敗の、弾丸コルトガヴァメントの再激突•••直線
、他馬を5馬身後方に置き去りにし、ゴールを駆け抜けた2頭。
長い写真判定の末に勝利を掴み取ったのはバッケンレコードであった。
主戦、河田ユウの勝利騎手インタビューでの涙が印象的であった。
11月。
オーストラリアのフレミントン競馬場に再び日の丸の国旗が上がった。
前年のブレストファイヤーに続く、日本馬によるメルボルンC連覇を目指したストロングクーガーに、この距離で叶うものは、一頭たりとも存在しなかった。
あの過酷な馬場で開催された英ゴールドCで、最強王者を追い詰めた豪脚を如何なく発揮、2着に3馬身の差を付け見事に連覇を果たしG1レース3勝目を挙げた。
鞍上は昨年に引き続き、
「来年こそ彼がこの馬に乗ってターフを駆ける姿を皆さんに見て欲しいです」と訴え、盛大なスタンディングオベーションを浴びていた。
そして、また新たなる歴史が刻まれた
。
前走の帝王賞。
2着に4秒差の大差を付け、新ダート王の称号を獲得したユーアーマインが米ブリーダーズCダートマイルに参戦、4ヶ月の休養によりパワーアップしたその馬体と、持ち前の前進気勢でハナを奪い取ると、他馬にその影さえも踏ませる事なく圧倒、2着に3馬身の差を付け、再び米国に日の丸を挙げる快挙を成し遂げた。
今、堂々と名乗りを上げる、日本が世界に誇るダート王の誕生であった。
次の目標は、翌年1月に米国で開催される高額賞金レース、ペガサスワールドカップ(G1ダート1800メートル)、待ち受けるは米国最強馬ヴァイオレットエヴァーガーデンである。
PS•••いつもお目に留めて頂き、心より感謝申し上げます。次回配信は3月30日土曜日午前8時です。たくさんの英雄達の疾走、新世代の台頭、種牡馬として、繁殖牝馬として新たなる物語を紡ぐ者、知を結集し、血に血を重ね続ける•••競馬はまさにロマンではないでしょうか?
それではまたお会いしましょう!
AKIRARIKA
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