翔べ君よ大空の彼方へ 5-❽ 影
3度目の旅は、体調と天候不良に悩まされた、正に綱渡りの旅であった。
コンビニの青年店員、四阿(あずまや)のおばあさん、公園で遊んでいた園児の男の子からの、とても大きなお接待と笑顔、天国で駆けてるであろう、彼ら、彼女らへの祈りを捧げた家畜堂、体は疲れ切っている筈なのに、足は止まる事を許さない•••まるで、背中を押され歩いているような、不思議な感覚であった。
一六タルト、坊ちゃん団子、松山城、道後温泉•••写真の中の彼女は、いつも満面の笑顔を見せていた。
あれはどこだったろうか•••確かに目が合ったのに、逃げようともせずに、じっと見つめ返していた不如帰(ホトトギス)•••そうだ、石鎚山だ。
逆打ちの遍路グループとの遭遇、薔薇の楽園、似顔絵を描いてくれた女性の笑顔。
彼女の言葉には深い思いが込められている事を理解していた。
振り向けば、そこには自身の影があった。
夕日を浴び、歩き続ける自身の影が。
歩いては立ち止まり振り返る。そして、また。歩けども歩けども、自分自身の影は付いて離れなかった。
〝自分自身からは逃れられないのだな•••〟
身体は疲労困憊ではあるけれど、気持ちは晴れ晴れとしていた。
コンビニで袖を触れ合った男子高校生
、白い航跡、光に照らされた大小の島々
、金色の太陽の美しさ、神秘的な太子堂
、そして一夜の滞在を許された善通寺。
縦横無尽に張り巡らされた深いご縁、
今生かされている事の不思議を感じ、彼女の贈り物のその味を優しく口に含みながら海を見つめた。
結婚記念日の夫婦の笑顔、手打ちうどんと天ぷらのお接待、幸せへの祈り、そして無数の白い蝶•••魂を運ぶ命の架け橋、天使。
そして、導かれるように歩いた先で出会った1人の少女。赤いランドセル、揚げパン、眩しい笑顔、素敵な出会い•••。
夢を見た。
白い蝶を追いかけている夢を。
蝶はやがて、彼女に姿を変えた。
追い掛けて躓き、立ち上がり、また追い掛けて•••叫んだ。力の限りに。
彼女の笑顔、そして•••。
出会い、別れ、納め札、四つ葉のクローバー帳、2段のお弁当、そして•••耳に届いた、今も心にこだまする少女からの力強いエール。たくさんの君影草と、天国で駆けている好敵手の変わらない笑顔•••。
答えは、自分自身の中に確かに存在していた。
最後の旅は逆打ちと決めていた。
リュックの中には、たくさんの想いが詰められていた。
赤と錦の納め札、四つ葉のクローバー帳、似顔絵。3枚の写真と、師と彼女の魂が眠る2つのお守り。
大僧正から預かった書状を袋に納め、左手首に大切なG-SHOCKを巻き、8月中旬彼は再び八十八番大窪寺の門前に立った。
自分自身を解放する為の、最後の旅の始まりであった。
順打ちの旅であるならば、道標を頼りに、いや、過去3度巡礼を経験した身体が、その足が自然と次の目的地へと導いてくれるだろう。しかし、今回の旅はそうではなかった。
自身が見逃したすべてのもの•••花、雨、風、光、森、川、山、海•••自然を、すべての命を、自身が置き忘れた足跡を見つめながら、歩みを進める事ができるのだから。
逆打ちは正に新鮮そのものであり、何より一期一会の連続であった。
順打ちであるならば、一度出会った人達と一緒に歩いたり、別れたとしても途中で見かけたり、その背を追いかけ追いついたり•••再びの出会いはあるだろう。
しかし、逆打ちは1度別れてしまえば
もう会う事はできない。人生の悲哀を感じながらも、それでも前へ進まねばならない。歩く事は、祈る事でもあるのだ。
大僧正の言葉、少女の両親の言葉の意味を改めて噛み締めながら、たくさんの善根、お接待を受けながら、しっかりと大地を踏み締めて歩く巡礼の旅•••。
彼は、座禅の姿勢を崩す事なく、瞑目を続けていた。
PS•••いつもお目に留めて頂き、心より感謝致します🥹🙏次回配信は4月10日水曜日午前8時です🕗翔馬の心の修行の旅はまだ続きます🚶🚶真っ直ぐに、未来に向かって✨✨人々の、たくさんの思いを背中に乗せて大きく羽ばたく為に!
それではまたお会いしましょう🙏🙏
AKIRARIKA
⑪ライトバック、⑫ステレンポッシュのワイド馬券で勝負します💪💪😤😤🤭