翔べ君よ大空の彼方へ 8-❽ 飛翔
海から吹き付ける寒風が、白毛のたてがみと尾を、金色のポニーテールを激しく揺らしている。
まだ夜明け前であった。
時折吹き付ける雪混じりの風が、辺り一面を少しずつ、緑から白の世界へと変えていくのだろう•••いよいよ本格的な冬の到来であった。きっと、彼もその大好きな光景を見つめている筈である。
仏の英雄、フェニックスルージュとクリストフ•エリーは、彼のモニュメントの前に佇んでいた。
彼女はモニュメントを薄く覆っている雪を手で払いのけ、彼の全身を露わにした。
ライトに照らされた彼は、まるで雪の中を駆けて行きそうな、力強さ、荒々しさを内に秘めながら、じっと海を見つめていた。
フェニックスもまた、彼に何があったのかを理解しているのだ。この場所に来ると、いつも真剣な表情で彼を見つめているのだから。
人馬はじっと彼を見つめていた。
時間の許す限り、この場所で時を過ごすのが、フェニックスとエリーのルーティンであった。
エリーは時刻を確認した。
「そろそろ行かなきゃねフェニックス。マジョ、今日もたくさんの人達があなたに会いに来るから、優しく迎えてあげてね。じゃあ行ってくるから!」
人馬は栄光のオリンピック金メダリストとして、とある国からの栄誉ある招待を受けたのだった。しっかりと、その責務を果たさねばならない。天国を駆ける彼の為にも。
エリーは軽々とフェニックスの背に跨り、颯爽と駆け出した。
海の遥か彼方向こうから、光が溢れ出した。生まれたての色鮮やかな光が。
遠ざかる人馬を鮮やかに照らす光が、金色のモニュメントをも煌びやかに照らし始める。
まるで、命が吹き込まれるかのようであった。
また、新しい1日が始まって行く。
凱旋門賞•••競馬史に永遠に刻み込まれた壮絶な叩き合いを演じたファイアスターは、2週間の仏滞在でその疲れを癒し、10月下旬、勇躍米国へと出発した。
ブリーダーズカップクラシック(芝2400メートル)に出走する為に。
ケンタッキーダービー、プリークネスS
、本年の米2冠馬サクソフォン、ベルモントS勝ち馬スタンディングオベーション、豪州のG1レース3勝馬バトルロワイヤル等のG1馬6頭を含む14頭の精鋭が集結したものの、彼を脅かす者は皆無であった
。
コンクリートのような硬い馬場も、平坦なトラックでの調教も、ただ1頭での遠征も、彼にとっては何の障壁ともならなかった。
勢いよく先手を奪ったファイアスターは、他馬に影をも踏ませぬレースを展開し、正に圧倒、従来のレコードを3秒更新するスーパーレコードで、2着以下を10馬身半引き離しゴール、競馬場を埋め尽くした大観衆は、その常識外の強さに言葉を失い、夢か現実か判断がつかない様子であった。
しかし、間違いなく彼は駆け抜けたのであった。
ファイアスターは堂々と、優勝馬に与えられる記念馬服と優勝レイをその背に乗せ、翔馬は盛大な花束を手に掲げ、自ら愛馬の引き手を引いて、場内の大声援に応えていた。
彼等、人馬のライバルも天国で見守ってくれた事だろう。
栄光を知り、そしてその栄光を超える悲しみを知った人馬。
ファイアスターは大観衆の前で力強く嘶いた。翔馬もまた感謝を伝え、そして思いをも伝えたのだ。
〝一生涯をサラブレッド達のために捧げる〟と。
歓声が、拍手が鳴り止む事はなかった。
PS•••いつもお目に留めて頂き、心より感謝申し上げます🥹🙏
次回配信は、10月26日土曜日正午🕛となります。
雨は上がった。
人々は空を見上げ息を呑んだ。
頭上に広がる奇跡の、祝福の虹が🌈🌈
目に焼き付けなければならない。
心に刻み込まねばならない。
彼らの最終章を。
それではまたお会いしましょう🙏🙏
AKIRARIKA
菊花賞回顧🐴💨🔥
第85回菊花賞は、2番人気アーバンシックが鞍上ルメール騎手に導かれ、春の悔しさを晴らす快勝劇を演じました。
春、いとこの牝馬レガレイラと共にクラシック戦線を沸かしたものの、皐月4着
、ダービー11着と不完全燃焼だったのですが、前走セントライト記念で勝利、いざ本番へ🐴💨🔥😤
先頭が次々入れ替わる難しい展開も、正にルメールマジック😳😳焦らず慌てず徐々に進出、4コーナーで3番手に上がり、2着へデントールに2馬身半の差を付けてゴールしました👏👏
しかしながら恐るべしルメさん😅
一体どこまで💨💨🥇🥇😅😅
2着へデントールも3着アドマイヤテラも奮闘しました。
特にテラは、武豊騎手に導かれ、そのまま押し切るかの勢いでした。
来春の古馬長距離路線、王者を争う戦いが楽しみですね。ついでながら🤣🤣
この作品を通して、養老牧場への牧草寄付等の引退馬支援を行います。その為のサポートをしていただければ幸いです。この世界に生まれたる、すべてのサラブレッドの命を愛する皆様のサポートをお待ちしております🥹🙇