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年間600本超の記事を書くコスプレカメラマンが伝える「イベント撮影で差別化する方法」
2024年12月29日と30日の2日間、東京ビッグサイトで開催された「コミックマーケット105」を取材して来ました。お目当てはコスプレイヤーさんの撮影です。
近年のコスプレの盛り上がりはすごく、コスプレイヤーを撮るためにカメラを始める方が増えていて、メーカーもそれを意識した宣伝をするようになりました。そんな盛り上がるイベントでのコスプレイヤーさんの撮影は大変です。
大きなイベントほど、長時間撮影に並んだり、撮影が回ってきても数分しか撮影できなかったり(それ以上だと後列の方の顰蹙を買ってしまう)・・・。さらに、多くの方がプロと遜色のないカメラやレンズ、ストロボ、ソフトボックスを使っていて、限られた条件下の撮影では差別化が難しいと感じています。
でもせっかくなら、他と差別化した良い写真が撮りたい。この記事では、2024年に600本以上コスプレ記事を書いた、様々なコスプレイベントを取材して来た経験から、イベント撮影では「こういうことを意識しているよー」という考えを、「コミケ105」を通してお伝えします。参考になれば幸いです。
持参したカメラとレンズ
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現在、イベント撮影で持参するカメラとレンズを紹介します。
カメラ:
SONY α7R V(スチール用)
SONY FX30(ムービー用)
DJI オズモポケット3(ムービー用・カメラがすぐ出せない時に活躍)
レンズ:
Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical(スチール用)
LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FF(スチール用)
SONY FE 24-70GMⅡ F2.8(スチール用)
SONY E 15mm F1.4(ムービー用)
+ジンバル
イベント撮影での立ち位置を考える
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イベント撮影はスタジオやロケのように、時間が十分にあるわけではありません。100%イメージ通りの写真は難しいです。自分が何を目的として、どんな写真や動画を撮らなきゃいけないのか、それを考えた装備でなければいけません。
動画撮影可能なイベントの場合、ワンオペでのスチールとムービーを撮らなきゃいけないため、上記のカメラとレンズでも最低限の装備です。そして、スチールオンリーと比べて、一人の撮影にかけられる時間がさらに少なくなります。しかし、メディアとして取材に入る分、コスプレイヤーさんの撮影人数が必要になります。コミケ会場は本当に混雑するし、移動するのも大変なため、カメラとレンズ以外の機材を削る判断をしました。ストロボは基本1個でアクセサリーはフラッシュヘッドだけ。アンブレラもソフトボックスも、三脚も持参していません。
差別化するために選んだのは「個性が強い」レンズ
今は、ほとんどのカメラマンが高額なカメラやレンズを使っています。正面からストロボをしっかり当てて、高価な機材で撮影する分には、いわゆるプロとアマチュアにも大きな差はないのでは?と感じています。
私は取材する立場。コミケはたくさんのメディアが取材して、同じコスプレイヤーを取り上げることになります。そこで、いかに読者の反応を勝ち取れるか、写真の「差別化」が必要になってきます。私はSONYを愛用しており、最高峰のGMレンズも持っています。しかし、2024年はイベントでほとんど使うことはありませんでした。その理由は、「クリアでシャープ、ボケ」を追求した最高品質レンズではあれ、個性が弱いと感じているからです。もちろん素晴らしいレンズで、信頼度が高いです。しかし、最初のインパクトを出すために、もっと個性が強いレンズを選びます。ケースバイケースというわけですね。それでは、選んだレンズについて解説していきまっしょう!あくまで個人の主観なので、よろしくお願いします。
「魔法をかけるレンズ」Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical
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私の相棒です。いわゆるオールドレンズテイストの現代レンズです。マニュアル操作ではありますが、フル開放でもピントが合わせやすい。光を多く取り込んでくれる、しっとりとした描写、背景のボケが不自然ではないのが持ち味です。
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35mmと50mmの中間に「どんな意味が?」と思う方もいるかもしれません。でも、バストアップにした際に35mmほど歪まず、全身を撮った際に50mmよりも角度をつけられる絶妙さが良いんです。
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オートフォーカスのレンズと比べて、部品が少ないからか、本当にたくさん光を取り込んでくれて、しかも柔らかく、ノンストロボ、ノンレフ版でもディティールを保ってくれるのが嬉しい。SONYのGMレンズがクリアでシャープすぎるので、比べると、映りがあまいことが利点だと感じています。いわゆる「想像の余地を人間の脳に与えてくれる」のではないでしょうか。
「世界が変わるレンズ」LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FF
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中華メーカー・LOWA初めてのオートフォーカスレンズで、フルサイズ換算で10mmと世界最広角では?(調べていないので、実際は分かりません)
四隅が歪みにくい設計で、F値が2.8という・・・日本のメーカーにはなかなかない非常に強い個性を持っています。扱うのはすごく大変、頭でっかちになったり、短足になったり、周りの写り込みが多かったり、被写体の顔が盛れにくいし・・・でも、絶妙な画角を見つけ出せたら、唯一無二の描写を見せてくれます。超広角レンズの絵はインパクト絶大です。40mmの対極として、アクションを撮るのに欠かせないレンズです。
「万能レンズ」SONY FE 24-70GMⅡ F2.8
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個人的にSONYで最も万能なレンズだと思っています。スチールもムービーもこれ一本あれば、最上級の描写が出せます。コミケの企業ブースでは、撮影位置が決まっているため、単焦点レンズだと被写体との距離が不足したり、オーバーしたりするので、ズームレンズが必要です。また、動画撮影向けに考えられた性能と軽さもあるので重宝しています。動画は1回しかチャンスがないような、失敗できない撮影だと、これ一本ですね。
オマケ:SONY E 15mm F1.4
中国人気コスプレイヤーの綺太郎さん、撮影の様子!日本人では私が一番撮らせてもらってるかも!? https://t.co/XrnkYoetWr pic.twitter.com/uINkyLOWIw
— 📸乃木章 (@Osefly) January 5, 2025
APS-Cレンズなので、フルサイズ換算1.5〜1.6倍の約24mm。スチール用カメラのFX30に付けて密着撮影する時に非常に軽くて便利です。国内外で活躍しています。今回は、このレンズはほぼメインで、コミケのコスプレまとめ、reoさんの踊ってみたの2本の動画を撮影しました。
まとめ
オールドから現代レンズまで、数えきれないカメラとレンズがあります。なので、どんな写真や動画をどれだけ撮りたいのか、どういった条件下なのかを踏まえて、設計図を組み立てた上で、チョイスするべきだと思っています。イベントは限られた時間ではありますが、本当に多くのコスプレイヤーが参加します。承諾を得れば撮影させてもらえる貴重な場として、最大限活かしましょう。