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朝のコーヒーは濃い目がいいし、サンドイッチは手作りがいい。
早朝のバスタ新宿は大きい荷物をもって、何処かへ旅立つ人たちで賑わっている。
着くや否や、家を出る5分前につくったサンドイッチをおもむろに食べた。
セールで買ったどこぞのホテルの食パンに、ハムを挟んでマヨネーズをつけただけだけど、美味しかった。旅の高揚感とやらはサンドイッチまでも美味しくするらしい。
眠気覚ましにと、ファミマで買った濃い目のホットコーヒーが慌ただしい時間にひと息つかせてくれた。
今回の東北旅は宮城県のとある市で行われるインターンシップへの参加。仕事でもなければ遊びでもないのだけど、少しワクワクしてる。
東北へは今回がはじめてではない。
2011年の4月に気仙沼に1週間ほど滞在した。震災ボランティアだ。
震災から1ヶ月経った気仙沼はまだ少し焦げ臭い匂いも残っていた。あるはずのないところに漁船が打ち上げられ、そこにあるはずのものが跡形もなくなっていた。
僕が参加したボランティアは、避難所へヒアリングしに行ってその声を拾い上げること。
どういった流れだったか忘れてしまったけど、避難所の他にも一般のお宅にも訪問させてもらった。
昆野さんという一人暮らしの女性の方のお宅だったと思う。
坂の上にあって、ずいぶんと階段を登った記憶がある。昆野さんとはたわいもない話をして、たくさんお菓子やらみかんをいただいた。
縁側の前には桜の木があって、お花見の季節には近所の人たちがよく集まってくると話してくれた。
話した内容はあまり覚えてないのだけど、家の中の様子は鮮明に覚えている。旦那さんの仏壇があって、少し散らかっていて、よくあるおばあちゃんの家という感じ。
昆野さんは今どうしているだろうか。帰り際に「また来ますね」と何気なく言ってしまった。
避難所は体育館や公共施設だけでなく、宿泊施設も避難所として利用されていた。
気仙沼の海の近くにあるホテルもその一つだった。
そこは避難された方だけだなく、工事関係の方々の宿泊として、そして一般向けにお風呂も開放していたようだった。
ここは海の目の前にあるホテルだから、いつもは海の幸の料理が美味しくいただけて、部屋からも海がみえる素敵なホテルなんだと思う。
今度来る時はお客として来ようと思い、その場を立ち去った。
あれから間もなく9年。
未だ当時の宿題を提出できずにいる。
何度か足を運ぼうと調べたこともあるけれど、何かと理由をつけてその機会を失ってしまっていた。
今回ようやく東北に行く。
とはいうものの気仙沼に行くわけではないし、全く別の用事で行くわけだから、まだ宿題は提出できそうにない。
でも今回の旅で少し近くなる気がしている。
いつかちゃんと訪れることができる日には、どんな気持ちなんだろうかと考える。
気仙沼のホテルに泊まって、美味しい海の幸を食べる。昆野さんのお宅も探してみたいなぁ。やっぱり桜の咲く頃がいいかなぁ。
そんなことを考えてたらすっかりコーヒーも冷めて、バスが来る時間だ!急がないと乗り遅れる!
行くぜ、東北。