頭痛と漢方
漢方薬は良く頭痛治療に使用されます。その特徴と効果を挙げてみたいと思います。
片頭痛には
五苓散(ゴレイサン)
苓姜朮甘湯(リョウキョウジュツカントウ)
半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジツテンマトウ)
呉茱萸湯(ゴシュユトウ)
葛根湯(カッコントウ)
桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)
桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)
麻黄附子細辛湯(マオウブッシサイシントウ)
川キュウ茶調散(センキュウチャチョウサン)
肩こりの頭痛には
葛根湯(カッコントウ)
芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)
釣藤散(チョウトウサン)
加味逍遙散(カミショウヨウサン)
桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)
当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)
芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)
甘草(カンゾウ):
成分はペオニフリン、ペオノール、タンニン、グリチルリチンサン、リクリチンです。芍薬は沈静、鎮痛、抗炎症、抗アレルギー、免疫強化、健胃作用をしめし、腹痛、下痢、頭痛を改善さらに末梢血管拡張作用があり血液の循環改善、筋肉のこわばりをとります。急激におこる骨格筋や平滑筋のけいれん性疼痛、腹部の疝痛などに、頓服、あるいは他の処方と併用する。
葛根湯(カッコントウ)
葛根(カッコン):
麻黄(マオウ):
桂皮(ケイヒ):
芍薬(シャクヤク)は沈静、鎮痛、抗炎症、抗アレルギー、免疫強化、健胃作用をしめし、腹痛、下痢、頭痛を改善。生姜(ショウキョウ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)3種類で漢方胃薬セット
うなじ、肩のこりがあれば使用します。かぜの漢方薬として、もっともよく知られている処方で、発汗して解熱させる作用があります。比較的体力がある人に使います。 自然発汗している人には使用しません。葛根湯の効果は風邪に限らず五十肩、気管支炎などにも使用されます。
呉茱萸湯(ゴシュユトウ)
呉茱萸(ゴシュユ):
生姜(ショウキョウ):
大棗(タイソウ):
人参(ニンジン):
呉茱萸は保温、鎮痛作用があり、生姜、人参にも体を温める作用があります。発作性の激しい頭痛や嘔吐症で、多くの場合胃腸部に冷感や水分の停滞感を伴います。片頭痛で身体が冷えると感じる方に試して良い薬です。グレープフルーツを濃縮したような味と表現された方もおられました。味の感じを良く捉えています。すぐに効果が出る薬ではありませんので最低でも2週間位は服用してください。 先日も前頭部に冷えを訴える片頭痛の患者さんに使用し冷え、頭痛ともに消失しました。妊婦さんには呉茱萸の子宮筋収縮作用のため使用できません。
五苓散(ゴレイサン)
沢瀉、蒼朮、猪苓、茯苓、桂皮(ケイシ)発汗作用、解熱鎮痛、血流改善作用がある。沢瀉(タクシャ)、蒼朮(ソウジュツ)、猪苓(チョレイ)、茯苓(ブクリョウ)は余った水を調整する作用があり水のたまる病、漢方で言えば冷え、めまい、嘔吐、吐き気に効果があります。桂皮は気をめぐらし水を循環させる働きを有します。口渇、尿量の増加・減少、ムクミを伴う頭痛に使います。吐き気止めとしては即効性があります。
釣藤散(チョウトウサン)
石膏(セッコウ):
橘皮(キッピ):
麦門冬(バクモントウ):
半夏(ハンゲ):
茯苓(ブクリョウ):
釣藤鈎(チョウトウコウ):
防風(ボウフウ):
菊花(キッカ):
人参(ニンジン):
甘草(カンゾウ):
生姜(ショウキョウ):
中年以降で、高血圧、動脈硬化からくる慢性頭痛に悩まされている人に有効な処方です。目標となる症状は、朝、目覚めたとき、または起床後しばらくすると頭が重く感じられる、それに肩こり、耳鳴り、めまい、のぼせなどです。気力を高め、認知症予防にも非常に有効な薬です。
抑肝散(ヨクカンサン)
当帰(トウキ):
釣藤鈎(チョウトウコウ):
川キュウ(センキュウ):
蒼朮(ソウジュツ):
茯苓(ブクリョウ):
柴胡(サイコ):
甘草(カンゾウ):
「カンが強い」と言う状態に使います。短気、イライラ、不眠・うつ状態などを目標にします。 漢方では内臓は精神と密に関連し肝の高ぶりは怒り興奮などの精神科症状を引き起こしやすく、ヨクカンサンは不眠、手の痙攣、ひきつけにつかいます。
半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジツテンマトウ)
陳皮(チンピ):
半夏(ハンゲ):
茯苓(ブクリョウ):
沢瀉(タクシャ):
白朮(ビャクジュツ):
天麻(テンマ):
麦芽(バクガ):
人参(ニンジン):
黄耆(オウギ):
乾姜(カンキョウ):
黄柏(オウバク):
生姜(ショウキョウ):
頭痛とめまいに用いる漢方処方です。もともと低血圧や胃腸虚弱があって手足が冷えるような人に適します。腹部軟弱で胃内停水(イナイテイスイ=上腹部を押すと胃の中でチャポチャポ音がする)があり腹部に動悸を触れる。
加味逍遙散(カミショウヨウサン)
柴胡(サイコ):
芍薬(シャクヤク):
蒼朮(ソウジュツ):
当帰(トウキ):
茯苓(ブクリョウ):
山梔子(サンシュユ):
牡丹皮(ボアタンピ):
甘草(カンゾウ):
生姜(ショウキョウ):
薄荷(ハッカ):
イライラ、精神的不安定、肩こり頭痛、疲労、めまい、不眠、冷え、のぼせ感、怒りなど多様な症状を訴えます。気分が高ぶりやすく、イライラする場合によく使われます。加味逍遙散の使用中は便が柔らかくなります。
桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
桂皮(ケイシ):
芍薬(シャクヤク):
桃仁(トウニン):
茯苓(ブクリョウ):
牡丹皮(ボタンピ):
足の冷え、生理痛があり、腰痛、肩こり、頭痛がある場合の代表的血の病の漢方薬。動悸、めまいが使用目標になります。少々胃腸が強くないと使いにくい。使用中に便が柔らかくなります。
柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)
柴胡(サイコ):
半夏(ハンゲ):
黄ゴン(オウゴン):
生姜(ショウキョウ):
桂皮(ケイシ):
芍薬(シャクヤク):
大棗タイソウ):
茯苓(ブクリョウ):
甘草(カンゾウ):
小柴胡湯と桂枝湯の合方。葛根湯に近いですが胃腸が弱く葛根湯が服用しづらいときに使います。頭痛、悪心、嘔吐、身体痛、口が苦く食欲不振などがあるもの。慢性疾患の場合は、胸脇苦満が認められ、カゼをひきやすい、不眠、疲れやすい、のぼせ、腹痛などを伴う虚弱な体質の改善に用いる。
当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
芍薬(シャクヤク):
蒼朮(ソウジュツ):
沢瀉(タクシャ):
茯苓(ブクリョウ):
川キュウ(センキュウ):
当帰(トウキ):
生理不順、生理痛、手足の冷えなどを目標にします。胃腸の強くない若い女性用で痩せ型、顔色不良の時に使用します。胃腸の弱い人に使ってもそれでも胃痛が出る人がいるので要注意です。内容の当帰が胃にさわる事があります。
川キュウ茶調散(センキュウチャチョウサン)
香附子(コウブシ):
川キュウ(センキュウ):
荊芥(ケイガイ):
薄荷(ハッカ):
白シ(ビャクシ):
防風(ボウフウ):
キョウ活(キョウカツ):
甘草(カンゾウ):
茶葉(チャヨウ):
風邪に限らず頭痛に用いております。
五積散(ゴシャクサン)
蒼朮(ソウジュツ):
陳皮(チンピ):
当帰(トウキ):
半夏(ハンゲ):
茯苓(ブクリョウ):
甘草(カンゾウ):
桔梗(キキョウ):
枳実(キジツ):
桂皮(ケイシ):
厚朴(コウボク):
芍薬(シャクヤク):
生姜(ショウキョウ):
川キュウ(センキュウ):
大棗(タイソウ):
白シ(ビャクシ):
麻黄(マオウ):
下半身が冷えて上半身がのぼせる人、便秘気味にはあいません。胃腸は比較的弱い人向け。頭痛も程度は軽い人に向きます。
桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)
桂枝(ケイシ):
甘草(カンゾウ):
茯苓(ブクリョウ):
乾姜(カンキョウ):
苓姜朮甘湯(リョウキョウジュツカントウ)
茯苓(ブクリョウ):
乾姜(カンキョウ):
白朮(ビャクジャツ):
甘草(カンゾウ):
下腹部、腰部、下肢などの冷感が著しく水の中にいるような腰の冷えと痛みを自覚する場合によく適応します。この点で五積散(ゴシャクサン)の適応と似ていますが、苓姜朮甘湯には冷えのぼせや消化器症状はありません。
桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)
桃仁(トウニン):
桂枝(ケイシ):
ぼう硝(ボウショウ):
甘草(カンゾウ):
大黄(ダイオウ):
体力が充実した人で便秘がある場合に用いますが、頭痛やのぼせ、精神不安、月経困難などの「お血」症状がさらに激しい場合に用います。また、腹部の左腸骨に著明な抵抗圧痛があることがあります(漢方では「小腹(しょう)急結」といいます。)体力の低下した人や下痢の場合には使用しません。
麻黄附子細辛湯(マオウブッシサイシントウ)
麻黄(マオウ)、細辛(サイシン)、附子(ブシ)。おもに老人や虚弱者の感冒に用いますが、若い人でも疲労や冷えによって体力の低下を伴うものには使用できます。
女神散(ニョシンサン)
香附子(コウブシ):
川キュウ(センキュウ):
蒼朮(ソウジュツ):
当帰(トウキ):
黄ゴン(オウゴン):
桂枝(ケイシ):
人参(ニンジン):
檳榔子(ビンロウジ):
黄ゴン(オウゴン):
甘草(カンゾウ):
木香(モッコウ):
大黄(ダイオウ):
黄ゴンを含んでいるのでいらいら解消に使う生薬。気鬱、じっと我慢の人に使うと良い。性周期や更年期などに関連し、産前産後の神経症、のぼせ、めまい、頭痛、動悸、不安、不眠、精神不安、月経不順などがあるもの。症状は慢性で、多彩に出現することが多く、体質にも特徴が少なく、オ血もはっきりしない。
漢方薬一般論についてのお勉強
1. 血が貯まる、お血に使う生薬
下記の症状で点数をチェックしてください。下記の点数が21点以上あればお血です。
2. 血が少なく、皮膚のかさつき、つめが弱くなるのを防ぐ薬 (血虚=ケッキョ)
下記の症状で点数をチェックしてください。以下の点数が30点以上であれば血虚です。
3. 水毒(スイドク)に使われる生薬
めまい、頭痛、中耳炎、冷え、排尿障害、むくみ、関節水腫、下痢、腹部振水音、下痢気味、歯根舌、汗かき、水太り、二日酔い
下記の症状で点数をチェックしてください。以下が13点以上は水毒です
4. 気虚(キキョ)に使われる生薬
気虚の症状、意欲の低下、日中の眠気、舌は淡紅色で腫大している。目に力がない。下痢気味である。消化吸収機能の低下、声が小さい
下記の症状で点数をチェックしてください。以下の点数の合計が30点以上あれば気虚です。
5. 気鬱(キウツ)に使われる生薬
下記の症状で点数をチェックしてください。以下の点数の合計が30点以上あれば気鬱です。
6. 気逆(キギャク)に使われる生薬
頭痛、焦燥感、冷えのぼせ、驚きやすい、嘔吐、動悸発作、臍周囲の動悸、手足の発汗異常、腹痛発作
下記の症状で点数をチェックしてください。以下の点数の合計が30点以上は気逆です。