見出し画像

第8回 ドヴォルジャーク チェロ協奏曲第1番

チェコ音楽のレコード紹介Vol.8はドヴォルジャークのチェロ協奏曲第1番を取り上げたいと思います。第1番ってチェロ協奏曲は1曲だけなのでは、と思われる方も多いと思います。数あるチェロ協奏曲の中でも代表格であるロ短調作品104以外に、実は若い頃にイ長調のチェロ協奏曲を書いているのです。1865年ですから若干24歳のころで、仮劇場でヴィオラを弾いていたころに同僚のチェリストであるペールのために書いたものですが、オーケストレーションをする前に渡したピアノとチェロのための楽譜は行方不明になってしまっていたらしい。結局この楽譜は彼の死後25年経った1929年に発見され初演されたとのこと。
オーケストレーションされず未完成だというおおかたの見方から、彼の協奏曲の数には入れてもらって無かったわけですが、1975年になってドヴォルジャークの作品番号の編纂者でもある作曲家ヤロミル・ブルグハウゼル(ブルグハウザー)とチェロ奏者ミロシュ・サードロの手によって管弦楽化と幾分の改変が行われ発表されたのである。これはその記念すべき世界初録音のレコードになるわけです。帯に「新発見」とありますが、そういう過程から新発見は言い過ぎにはなるのですが、当時新しいチェロ協奏曲が世に出てきたという新鮮さはあったのだと思います。
ジャケットの裏には編曲したブルグハウゼルの解説とサードロ教授の談話の和訳が載り、さらに内側に藁科雅美さんと門間直美さんの解説が添えてあり、作品の詳細が網羅されている。
曲はやはり習作期の作品であり、また有名なロ短調の作品が偉大過ぎて比べてしまうと物足りなさがあるわけだが、冒頭から彼らしい愛らしいメロディーも聴かれるし、幼いころから弦楽器に親しんだ生い立ちが功を奏し、充分に魅力ある作品と言えると思う。ブルグハウゼルの編曲も長年ドヴォルジャークを研究した人だけに、まさにドヴォルジャーク本人でもこのように管弦楽化したであろうという仕上がりになっている。
ノイマン&チェコ・フィルとサードロの演奏も満を持しての感が強く、世界初録音に対する意気込みもあり丁寧かつ力強い演奏となっている。ただ他の録音にまだお目に書かれていないのは、少し寂しい気がする。(エンモ・コンサーツ:加藤)(2024年5月24日・Musica Panenka facebook 投稿)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?