半年の早期卒業の体験談
私は大学の仕組みを利用して半年の早期卒業をしたわけですが、良い点悪い点と色々と見えてきたので、書き残してみたいと思います。「半年」と「早期卒業」という2つの要素がかみ合った結果、かなりレアな状況に置かれています。メリットもデメリットも享受しているので、参考になる人は少ないとは思いますが、エンタメとして楽しんでください。
(想像以上の大作になってしまいました)
先に断っておきますが、大学によって用意されているシステムは様々ですし、おかれている環境によっても決断する際に考慮すべき点や、その後影響してくるような観点も変わってくると思います。一つの事例としてこういう人生もあるんやと面白がってもらったり、そういう選択肢もあるんだと先を見据えて考えてもらったり、何かになればと思います。ですので、細かくやいのやいの言わずに気軽に見て下さい。
はじめに
まず、詳細を書く前に、どのような環境や状況で大学生活を送っていたのか前提を共有したいと思います。環境や状況によって早期卒業の条件やその良し悪しなども大きく変わってくるため、一般的に早期卒業とは~~と語ることは難しいです。したがって、私個人の極めて狭く個別具体的な事例を共有することとなるので、私について簡単に説明をさせてください。
※興味が無い方は飛ばしてもらって構わないです。
まず以下に現在までの経歴を示します。
東工大に一年の浪人を経て入学し、学部を3年半で卒業後、大学院に進学し今は博士課程の貧乏学生です。
(ご支援お願いします。お仕事もお待ちしてます。)
東工大は受験時には学部を選択せずに、それに相当するようなもの(私の受験当時は「類」、現在は「学院」と呼ばれる分類)を選択し入学します。受験後はこの幅広い分類に所属し、2年目に「系」と呼ばれる学科に対応するものを選択し、専門を決めます。大学院に進学する際には、コースと呼ばれるものを選択し、さらに専門性を深めることとなります。
詳しくはホームページを見てください👇
東工大では早期卒業の制度が設けられていて、入学時のガイダンスでも説明がされます。(参考:学習案内 > 16.早期卒業)
簡単に言ってしまえば、早期卒業は文字の通り「4年制大学だけど認めた人に限って4年未満でも卒業を認めますよ」というものです。早期卒業を認めてもらうには、以下のような条件を満たす必要があります。
所属学科における成績順位や、単位の取得の難易度は科目によって異なることなど、全ての学生が平等に行使できるあるいは権利取得を目指すことができるシステムであるとはいいがたい点もありますが、このような条件をクリアした人は早期卒業を認められることとなります。
早期卒業に至った経緯
では、私がどのようにして早期卒業に至ったのか。まずその権利を得たところまでを説明したいと思います。学部時代にどのように過ごしていたのか、どのようにして権利を得たのか、などです。
学部時代の過ごし方
早期卒業するぞ!と意気込んで戦略的に取り組んでいたわけではなく、入学して説明を受けた時に、そんな制度があるのか、そんなんできたらいいなあ、という程度のフワッとしたことを思ったきり、正直思い出すことはありませんでした。ですが、1年の浪人期間を経て大学に入学していることもあり、できればその1年を巻き返したいあるいは1年分のプラスをどこかで回収したいなあ、とはなんとなく思っていました。
自分は、授業の履修計画を立てたり、日々の課題を計画的にこなしていくことが苦手だったので、主体的にスケジュールを立てたり管理をしたりするのではなく、周りの友人の様子を伺いながら、流されるようにして過ごしていました。ただ、必修科目や選択必修科目が多く、とりあえず目の前のものを一生懸命取り組んでいました。苦手な科目はいくつか落としたりもしてしまったこともあったんですが、専門科目は関心が持てるものが多く、レポートや発表形式での課題は時間をかけてちゃんと取り組むことが苦ではなかったので、良い成績を取れるものも多かった印象です。
3年目になるとコロナですべてがオンライン講義になり履修のハードルがさがったことと、レポートや発表形式での課題が増えたことが重なり、取得単位数と成績が上がっていった気がします。
やはりいずれの時点においても、具体的な進路を見据えていた訳ではありませんでした。その時々で関心の向くものに打ち込んで、周りと同じように大学院に行くんだろうな~とぼんやり思っていました。
教務課からの連絡
私の所属系では3年目の後半(1月ごろ)から研究室に所属し活動が始まります。コロナで不必要な接触や接近ができない時期だったので、オンラインでの活動が主でしたが、研究室に所属してまた新たな生活が始まるというタイミングでした。
3月の上旬に教務課から突然【重要連絡】というメールが来ます。
寝耳に水とはこのことです。突然のメールに驚いた記憶があります。周りに早期卒業した人はいなかったので、したら何が良いのか、さっぱり分からなかったので、オンライン活動中でしたが、助教に連絡をしました。
ということで、ミーティングをセッティングしてもらい、入って間もないペーペーにもかかわらず時間を取って相談にのってもらいました。そのミーティングでは、以下のような内容をお話ししました。
(おおよそこんな話をした気がします)
教授:今後の進路はどうするの?
私:大学院には行こうと思っています
私:英語がまるっきりダメだし忙しいので諦めてたんですけど、ほんとは留学もしてみたいなと思ってます
教授:半年ずらして何かやりたいことがあるの?
私:早期卒業するとどうなるのか、いまいちイメージできていない
私:就職もしないのでインターンも特にするつもりはない
私:1浪してるので、卒業時期を早めるのはポジティブに捉えている
教授:半年早期卒業するとこうなるんじゃない↓
①大学院進学を想定通りの4月にして、ブランクの半年を留学orインターンに使う
②そのまま大学院進学して卒業して、ブランクの半年をインターンとか留学とか早く就職したりとかする
③博士に進学して研究に突き進む教授:何したいかによると思うよ
私:今のを聞くと、インターンとかっていうのよりは、研究に早くのめりこみたい。
私:博士進学もありなんじゃないかと思っている
教授:早期卒業したら学部卒業までのスケジュールはこんな感じかな
・早期卒業だと秋卒業になるから半年で卒論を書くことになるよ
・院進(大学院進学)するなら、修士の必修科目を学部4年目にとっておかないと通年のプログラムが1年目でとれないよ私:なるほど。
教授:卒業論文の内容はどうしようね。過去の研究プロジェクトを引き継いで分析を行う形にしようか。
私:仰せのままに。
私:いろんなオプションがあって、想像もできました。一度持ち帰ってきちんと考えたいと思います。
ということで、早期卒業をするとどんなことができるのか、何が起こるのかのあれこれを聞き改めて持ち帰ろうと、いうことになるのです。。。
決断までに何を考えたのか
このミーティングから決断するまで、実は少し時間がかかっています。3つの点で悩んでいました。
今後の進路
学部3年目の終わりごろには、その後どうするのかなど決めていなかったので、半年卒業を早めてその後どうするのか、とても悩みました。大学院に進学することは決めていましたが、どこで半年のギャップイヤーを持ってくるのか、大学院の後はどうするのか、色々と考えるべきことが出てきます。
無計画で何も考えていなかったので、3年目が終わるという時点で、学部卒業までの残りの半年でインターンや留学の準備ができるはずがない、ということで①は早々に選択肢から外れました。大学出たら何をしたいのか色々考えてみましたが、どこかの企業に入って働いている自分があまりにも想像できなかったことと、2年間で研究を終えてしまわずにきちんと取り組んで終えたいなと思ったことから、博士進学を考えるようになります。
私は学部ではいろいろな基礎科目を興味の向くままに広く学んできていて、これといった専門がなかった為、2年の修士の期間で専門を深めることになりますが、それで十分なのか?という思いがありました。その上、研究トピックにはとても興味があり打ち込めるものをようやく見つけられたという感覚だったので、2年で手放すのはもったいない、とも思っていました。したがって、この時点で博士進学も十分ありうる選択肢として見据えていました。
ということで②、③の選択肢が残りますが、先述の通り受験で1年遅れている分を取り返したいということもあり、③全て半年早める、という選択を真剣に検討するようになります。
「半年」ずれること
全て半年早めることの大きな問題点は、周りの人とタイムラインがずれてしまうことがでした。
東工大には秋入学のシステムを利用して入学している人もちらほらいますが、留学生の人が大半で、日本人だと早期卒業のケースは稀であとは院浪(大学院入試の浪人)でした。日本の大学システムは春入学春卒業を大前提にしているカリキュラムがほとんどなので、不利益を被ることがあるのです。
ただ、海外の大学と入学・卒業時期が重なるので、留学を少なからず考えている身としては魅力的な選択であるとも思っていました。半年で卒論を書く必要があること、他の人とは異なるスケジュールで大学院を過ごし秋に節目が来ることなどは想定できる不利な点ではありましたが、自分のやり方次第でどうとでもなると割と楽観的に考えていました。
博士に進むということ
以上のような選択肢の整理と、楽観的予測に基づいて、博士進学を前提に全てを半年ずつ前倒しにする、という選択肢が有力候補となります。
学部を3年半で終わる、という話しが回りまわって、半年ずつ前倒しして博士まで行くというキャリアプランに発展してしまったわけです。
博士進学となれば、そう簡単に決断はできないので親や友人に相談し、教授にも改めて相談しました。
博士進学についての葛藤を書き出したらまた長くなってしまうのでここでは割愛しますが、とにかく色々と調べてしばらく悩んでいました。研究漬けの日々やお金の問題、論文発表のプレッシャーなど。。。ネガティブな側面が強調されて耳に入ってくることも多いので天秤がぐらぐらし続けていましたが、早期卒業を決めた後でもいくらでも軌道修正の機会はあるだろうと思っていたので、結果的にはポジティブな面を信じようと思い決断に至ります。
決断の理由
ということで、早期卒業後のキャリアプラン、半年のずれ、博士進学という3点を十分に考えて、早期卒業をすることを決断します。
決断した最大の理由は、選択肢が増えると思ったから、でした。半年の猶予が生じることでできることが増えたり、半ばあきらめていた留学などもできる可能性がでてきたりと、これから先の選択肢が広がるメリットの方が大きいのではないか、と感じました。
(逆張り精神なのでm人とは違う境遇で希少価値を高めることができるのも魅力でした)
(半年早期卒業してるんですよね、って言いたいじゃん?)
こうして半年早期卒業をすることになるのでした。。。
実際してみてどうなったのか
半年早期卒業してのメリットデメリットを以下に整理してみました。(細かいエピソードはそれはそれで沢山書ける気がするので、また気が向いたら書きます。)(特にデメリットはモノ申したいことがたくさn….)
私の感じた早期卒業のメリット
①見本がある
半年ずれていることで、一歩先の状態がどんなものなのか、身の回りの人を見て想像しながら取り組むことができるというのはメリットだと思いました。この時期にこの程度できていないとまずいんだな、とか、このくらいの時期に発表があるのね、とかを傍で見ながら研究ができることは非常にやりやすかった気がします。
②経歴でアピールできる
学部時代に大学で何かをした、ということを周囲に伝えたりアピールしたりすることは中々難しいなかで、経歴で分かりやすくアピールできるのはある意味でメリットだと思います。(なんとなく優越感もありますし)
③多年代と同期のような感じ
半年ずれているので、例えば自分の修士1年目は、一個上の代の後期と、同期の前期と重なることになります。グループワークとかプロジェクトとかも多いので、2つの代に友達や知り合いができることはメリットだと思います。研究の協力とかも依頼がしやすくてとても助かった記憶があります。
④自分でしっかり取り組むようになる
周りに教えてくれる人もおらず、並走している人もいないので、自分ですべて管理する必要があります。ある意味計画的に自分のことにきちんと責任をもって取り組む必要があることで、真剣に取り組めている気がします。
私の感じた早期卒業のデメリット
①手続きがめんどくさい
日本のほぼすべてのシステムは春に年度が新しくなるので、4月-3月で区切られていることがほとんどです。税金から奨学金の申し込み、学校内の諸手続きなど。。。在学の証明が必要な場合、学部→修士、修士→博士の2回、変なタイミングで手続きをして更新が必要です。申し込み時期が秋ごろで年度末に結果が出て、次年度から適応、みたいな奨学金や支援システムも多いです。通年のカリキュラムも春始まりなのでずれ込みます。せめて大学の中だけでも、対応してほしい。。。
②海外大学との親和性難しくないか
日本国内だいたいそうだと思いますが、4~7月、8-9月休み、10月-2月頭、-3月休みというスケジュールだと思います。一方、海外大学は9月とか遅いところは10月から始まります。
進学後1年目で留学しようとするとどうなるのか。進学後の手続きはオンラインでは済まないことが多くあり、多くの壁が目の前に立ちはだかることになるのです。。。(これは確実にまた今度書きます)
③忘れられがち
春は新たに始まる雰囲気がありますし、夏は慣れてきてまた引き締めてという雰囲気になりますし、冬は忙しく色々大変だとなります。その雰囲気と完全に逆位相になっているので、浮いています。自分を強くもってきちんと制御する必要があります。特に教授に重要なイベントや手続きについてしつこくリマインドをしないと忘れられてしまったりします。。。
現在は
現在は博士課程の1年目が始まり半年が経とうとしています。上記のようにメリットデメリット色々と思うところはあるのですが、現時点では決断は良かったのではないかと思います。自分は計画的にコツコツというより、何かに駆り立てられて目の前に一生懸命に、というスタンスがあっている気がするので、周りとずれているのは良い効果も享受していると思います。半年ずれたことで色々とキャリアを考えることができましたし、選択肢も増えたことで本当にやりたいことをできている感覚もあります。
また経過や詳細も書きたいと思いますが、振り返って書きだしてみると、色々な記憶が繋がっていって、大学に入ってからずいぶんと長い月日が経っているなと実感することにもなりました。これだけの長い文章をここまで読んでくださった方も何か面白かったと思っていただければ幸いです。
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2024/03/09 最終更新
伊藤鑑