怖くて死ねないから永遠に眠る。
長い夢を見た。
沢山の豪華な料理が並んでいた。小学校の6年間と中学1年生の7年間クラスがずっと一緒だった、大して仲良くもなかった奴と化粧品を買った。大好きな映画俳優とキスをした。恋人とプールに行って、卵かけご飯を食べた。
目覚めても目覚めてもまだ夢の中で、悪夢ではないのに居心地が悪かった。ずっと夢が続くのではないかと思った。
目が覚めたら、真っ暗な部屋にいた。恋人の腕の中だった。彼はスマホゲームをしていて、小生が起きたのに気づくとキスをしてくれた。「ずっと寝てたから死んでるんじゃないかと思って確認しちゃった」と言う。
昨晩は6時に寝た。10時に起きるつもりだった。すでに19時だった。稽古を無断欠席してしまった。
起きて真っ先に、恋人に「○○くんは現実?」と聞いた。頬を触って、温かさと髭の感触に安心した。同時に、目覚めたくなかったなァと思った。
小生の恋人は(実際の年齢もそうだが)圧倒的に大人で、精神的に健康だ。中間管理職の彼はまさしく「社会人」という感じで、大人の象徴のような人だ。
対する小生は情緒が終わっているメンヘラなので、すぐに泣く。泣き喚く。パニックになる。まともな生活ができない。今この文章を書いている部屋もゴミ溜めの様相で、洗濯機の中には2日前の洗濯物が入っている。遅刻癖が治らないし、最近は稽古にも行けていない。社会に向いていないのだ。というより人間に向いていない。
数日前にパニックを起こして、部屋の隅にうずくまっていた。その時家に来ていた恋人は、怖い顔で小生を見つめていた。「そんなとこで泣いても何も変わらない」「俺が怖いなら帰る」「体調悪いんだから早く寝な」。恋人の言葉。すべてが刺さって痛かった。
小生が泣くと、彼は困った顔をする。身体に悪いことをしてストレスを発散する小生を彼は変わってると言う。小生のせいで彼の睡眠時間が削られていく。迷惑ばかりかけている。小生は、彼に愛される資格がない。そう思ったときには、眠る恋人を部屋に残して鍵も持たずに家を出ていた。パジャマ1枚で外に出たので、風がナイフのようだった。深夜の公園で、ベンチに座って震えていた。
あまりの寒さと寂しさで、結局5分ほどで家に帰った。ぼろぼろと涙をこぼす小生を、恋人は苦笑いを浮かべながら静かに叱った。「これだけ年が離れてたら、あきらに何かあったら俺が捕まる」「あきらは俺といるときに死ぬの?」「俺に迷惑かけたくないなら、こういうことやめて」正しかった。何も言えなかった。
その後は扉を塞がれて、支配的なセックスをされて、抱き締められて眠りについた。
恋人は小生がメンヘラを治して普通になることを期待している。自己否定や卑屈なところを見せると叱られる。親が子供を叱るみたいに。ありのままの自分を愛してなんて傲慢だから言わないけど、この人は不安定な自分を認めてくれないんだなと思う。
あの日から毎日恋人が家に来る。過保護だと思うが、仕方がない。小生だってあんなところ見せられたら心配になる。これ以上迷惑をかけたくないので、元気なふりをする。恋人が眠った後と、帰った後はやっと自分に素直になれる。憂鬱は、ひとりで大切に眺めたい。
また怖いことが起こった。こういうときに限って恋人がいない。
少し前に処方されていた睡眠薬はあまり残っていなかった。
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