穏やかに幸せになれない。
はっとして、スマホを手に取ってTwitterを開きかけて、やめた。この発見は140字に収まらないと思った。
明日の成人式(地元はめちゃくちゃな田舎なので、隣の市のホテルを借りて行う。そのため通常より1日前倒しされる)のために、昨日の夜から実家に帰っている。今日はこの後友人と飲む以外に用がなくて、午前中に耳鼻科に行ったけど暇でしかたなくて、無駄に凝った化粧をしてみたり。
叔父がくれたクッキーがあったので、祖母に淹れてもらった熱いお茶と一緒にそれを無駄にゆっくり食べた。久し振りに祖母と向き合って喋った。おばあちゃんは昔美人だったから今でも結構可愛くて、見た目よりずっと気丈でさっぱりした人で、小生はこの人がかなり好きだな、と少しずれる会話をしながら思った。この前祖父が亡くなったから、なんでもない時間がすごく貴重に思えて、少し泣きそうだった。
両親が仕事でいないので、どうせレポートを書かなければいけないし暇つぶしに本を読んだ。吉本ばななの『キッチン』。久し振りに面白い小説を読んだ、そもそも小説を読むのが久し振りだったけど。
小生がいる部屋の隣の部屋に敷かれた布団の上では猫が寝息を立てていて、とても静かだけど気持ちよかった。自分以外に生き物がいるだけで、無言の中にも温かさを感じる。穏やかな時間だった。名古屋でひとりで暮らして演劇を作っていると、いつも心が荒れ狂うから、こんなに穏やかな気持ちになったのは久し振りだ。誰かと暮らすっていうのはとても優しくて、幸せなことだと思った。
だからこそ、小生はこの家を出たんだな、と思う。小生が演劇を、演劇じゃなくても作品を作るには、こういう穏やかさの中にはいられない。もっと身を焦がすような激情の中にひとりでいないと、小生は何も生み出せない。小生は天才じゃないから。だからきっと、小生は幸せになれない。
成人式が終わったら、家族から離れて、個人になる。また孤独で雑多な名古屋のワンルームに戻って、また演劇を作る。
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