兵庫県知事選ルポ〜各候補者に聞いた(斎藤元知事にも聞きました)〜
元県民局長による内部告発文書などを巡り、県議会で斎藤元知事がリコールされ、行われることとなった兵庫県知事選挙。投票日が迫る中、各候補者はどのような戦いに挑んでいるのか。候補者の街頭演説や直接のインタビューを通じて、現地を歩いて感じた雰囲気をつらつらと書いていきたいと思います。
さいとう元彦候補(元職)
元県民局長の内部告発文書でパワハラ疑惑などが告発されたさいとう元彦候補。リコールを受け、失職し、選挙戦に出馬すると決めた9月から街頭で活動。「最初は殴られたりしないか不安だった」と話していた斎藤候補だが、SNSを中心に徐々に支援の輪が広がり、選挙戦中盤(9日午前)にJR兵庫駅で行われた街頭演説には約200人が集まった。
県政の混乱の謝罪とこれまでの実績
街頭演説では、まず県政の混乱を謝罪し、「これからは県議会や県職員の方との対話を丁寧に進めていく、自分の周りの方に感謝の気持ちを抱く、謙虚な気持ち、初心を忘れずに、県民のために良い施策をやっていく」と話した。
県知事時代に力を入れたプレミアム付商品券や自転車ヘルメットの購入補助、公立高校の設備投資、不妊治療への支援などを例に挙げ「すべての県民の皆さんが幸せで笑顔に暮らせるような政治を」とこれまでの政策の継続させてほしいと訴える。
”パワハラ知事”とメディアの偏向報道
そして、これまでの報道などで定着した”パワハラ知事”のイメージの払拭を図る。斎藤候補は「何が正しいか見定めてほしい」と演説で語り掛ける。
11月2日夜、西宮市の大型商業施設前での街頭演説では、「県議会の引きずり降ろせとの反発、メディアの偏向報道。多くの方がおかしい、なんだろうと気付き始めている。既存のメディアの報道におかしいんじゃないか。自分でインターネット、X、YouTubeを調べていく中で、何が真実か、何が本当か、みんな自分で調べようとしている。それが知事選の最大のテーマ。実はこれからの日本の将来、政治の在り方、実は大事な選挙」と聴衆に呼びかけた。
齋藤候補の支持者と反対派の衝突
支援者の熱量が強く、「クーデターに負けるな」「斎藤知事がんばれ」などと声を掛ける支援者や、「県民のために闘ってくれてありがとう」とプラカードを掲げる支援者の姿もあった。一方で、「さいとう元彦反対 #道義的責任」と掲げる反対派の姿もあり、罵詈雑言を浴びせ、小競り合いが起こる異様な雰囲気の街頭演説であった。また、SNS上では、斎藤候補の支持者とみられる男性が反対派と小競り合いの末、逮捕される動画も流れた。選挙戦が言論を闘わせる場でなく、暴力の衝突が起こる異例の展開を見せている。
斎藤候補に直接聞いた
選挙戦終盤に差し掛かった13日朝、斎藤候補に直接、話を聞いた。
◯選挙戦で印象深い県民の声は?
「厳しいご指摘もあれば、頑張ってね、という声あるので、いろんな声に感謝と受け止めている」
◯SNSでの斎藤現象については?
「応援する輪が広がっている、大切な声だと思う」
◯反対派との小競り合いが起きていると思うが、受け止めは?
「政策とかどういったことをやっていきたいのか、きちっと伝えながら、有権者に判断いただきたい」
◯街頭演説で「メディアの偏向報道」と話されていたが、記者会見の他に県民のコミュニケーションはどのようにしていくのか?
「SNSに注力してやらせていただいたり、こういった自分自身が県内各地に回らさせていただいていろんな皆さんの声を聞くということをしっかりとやっていきたいと思います」
◯マスコミとも丁寧なコミュニケーションをしていく?
「メディアの皆さんとはこれまで信頼関係もありましたし、これからもそこはしっかりと続けていきたいと思います」
いなむら和美(前尼崎市長)
11月9日夜、JR三田駅で街頭演説した稲村候補。県議2期、尼崎市長3期務めた豊富な経験を実績とし、各社の世論調査では”稲村候補がややリード”とされていたが、斎藤候補の猛追を受けている。
自民党の一部の県議、立憲民主党、国民民主党の事実上の支持を受け、選挙戦に挑む。この日も、応援弁士として現尼崎市長の松本眞氏も駆けつけ、約40~50人の聴衆を前に演説した。
選挙戦の混乱と政治に対する想い
稲村候補は、まず選挙戦が混乱していることに触れて「ネットであることないこといわれたり、N党の人が入ってきたり、これで、皆さんが政治から遠ざかってしまうのが嫌なんです。私たちが声を上げて全うに届く。健全な政治をしていきたい」と声を上げた。そして「文章問題で停滞している兵庫県政をしっかりと前に進めていきたい」と話した。
阪神淡路大震災のボランティア経験が政治に入るきっかけとなった。「現場がいろんなことよく分かっている。その声で政策が進んでいくべきだという強い思いで、尼崎市長3期仕事をさせていただいた」と政治家人生とその経験を強調する。
”抜本的改革”を進める政策を
そして、県の借金が全国ワースト1の大きさであることに触れ、「3年前に新しい知事になったときは、財政問題の解決を期待したが、センチュリーをやめるとかではなく、そういうレベルでなく、”抜本的な改革”が必要」と井戸、斎藤県政で進まなかった改革を進めたいとする。
外郭団体の組織や県のハコモノを見直しするなどの”抜本的改革”と、子育て支援ができるように市町が自由に使える交付金の創設、高校生の授業料の負担軽減などの”未来への投資”の両立を「子どもたちにツケを先送りしない形で進めていく」と訴える。
齋藤元知事の問題について
齋藤元知事の問題は「知事のふるまいで委縮してしまう。(知事の)マネジメントのまずさこそが今回の問題の本質。組織運営の力、現場の市長、町長と連携していく、信頼関係を構築するその力、これが不十分だった。ただちに変えないといけない」と指摘する一方で、「斎藤さんのすべてを否定するものではない。部活の補助、奨学金の返済支援、不妊治療への応援は継続していく」と述べた。
誤解をしないで、改革を進めます
「皆さん、誤解がないように。誤解がされている方がいらっしゃったら広めていただければ」と、演説後半ではネット上で流れる噂について時間を割いた。
「稲村が知事になれば、しがらみで改革ができないんじゃないか」という疑問には「もう一つの民意である議会とも是々非々で対話します」とし、県立大学の授業料無償化を例に、議会などとの対話によって「より対象を拡大するためにもう一歩進める政策にしていく」と述べた。
また県庁の建て替えについては「コンパクトに最低限で機能を果たせる機能を見直していく」と述べた。
演説は、ジャーナリストの堀潤氏、関西テレビの記者が取材していた。
稲村候補に直接聞いた
街頭演説後、稲村候補に話を聞いた。
〇SNSで熱狂的な支持を集める斎藤氏についてどう感じるか?
「これからの4年間の担うマネジメント力、政治力、実行力が問われている選挙であって、好き嫌い、0か100かで正義かどうか、被害者や加害者やと判断するような選挙戦になってしまっているのは本質からずれてしまっていると心配している」
〇稲村候補自身、選挙選を通じて誹謗中傷や身の危険を感じるようなことはあったか?
「身の危険まではないが、外国人参政権の導入についてネットで話題になって、街頭でもたくさん質問を受けた。それは国政の課題であって県政の課題ではないと思う。これだけ大きくクローズアップされていることに違和感を覚える。対話を信条としているので、誤解は解いていきたい」(稲村候補は、自身のHPでネット上の流言に反論する動画を投稿している)
清水貴之候補(前参議院議員)
日本維新の会の参議院議員であった清水貴之候補は、約12年間所属した維新を離党して、無所属という立場で選挙戦に挑む一方、一部の自民党や維新の議員が応援に入り、選挙戦に挑む。選挙戦序盤にはデヴィ夫人も応援演説に駆け付け話題となった。
9日の昼は、姫路城のお膝元、みゆき通り商店街を練り歩いた後、姫路駅前で街頭演説。応援弁士として、維新の参議院議員も駆けつけた。
内部告発問題について
街頭演説では、まず知事の内部告発問題に触れ、「文書問題によって悪い形で兵庫県が全国に報道された。悪いイメージが広がった。残念でならない」と語る。
また、関西テレビの番組に出演した際、今回の知事選で注目するポイントの1位が”知事の資質”だったと語り、「公益通報さえ間違っていなければ、元県民局長の死は防げたと思う。文章問題は怪文書と決めつけてしまった。告発された側がした側を処分すること自体に間違いがあった。第三者、公平な目を入れてしっかりと対処していたら、結果は違っていたと思う」と語る一方で、前知事の子育て対策などの実績は評価しているとし、「良いところは継承していく」とした。
そして、参議院議員2期11年、ABCアナウンサーとして皆さんと話してきた経験を踏まえ「トップダウン型よりもコミュニケーション、人の話を聞く。県庁内と正しい形にしていく」と前知事と比較して”知事の資質”があると訴える。
維新の参議院議員として
維新の参議院議員を11年務めたことには「私自身、ずっと維新にいて、(県民から)維新の斎藤やろと言われてきた。僕自身がこうやって選挙で勝つことで、兵庫県政を正しい形にしていく、刷新していく、これが私の責任の取り方」と話す。
”ブラックボックス化”した県庁の改革
清水候補は「県知事はずっと総務官僚がなってきて、ブラックボックスとなっているところがあると思う。オープンにして改革していく」と訴える。
具体的に、外郭団体の数も880万人の大阪府よりも534万人の兵庫県の方が多く、県有施設、県有地の使用されていない問題や、県庁の建て替え問題に触れ、「1000億で立て直すのは高すぎ。防災機能を備えた県庁を作っていく」と語る。
観光施策について
また、力を入れる観光政策については、兵庫県に来る観光客は日帰り客が9割を占め、宿泊客が少ないと指摘。魅力ある温泉地や古民家があるのに素通りされる現状は問題とした上で、「都市圏だけが盛り上がるのではなく、地域地域の観光政策や、特産品を生かした政策をしていかないと、兵庫県全体が元気にならない」と述べた。
演説会場には、朝日新聞、神戸新聞、選挙ドットコムの記者も駆け付けたが、足を止めて、近くで清水候補の演説を聞く聴衆は休日の姫路駅にしては少ないなと思う印象だった。
清水候補に直接聞いた
演説後の清水候補に話を聞いた。
〇手応えは?
「厳しいのは、数字が出ているので、十分に分かっている」
〇選挙選を通じて県民の声で印象深かったのはどんな声か?
「この半年間、文章問題で兵庫県が混乱したことを感じていらっしゃるので、(県民から)”よくしてよ”という声を聞いている」
〇斎藤知事の演説会場では反対派が出てくるなど分断が進んでいるようにも見えるが、そのそうな現象をどう見ているか?
「特にネットの中での対立が激しいなと。僕自身は候補者ですし、見てもあんまりいい気分はしないし、見ないようにしているが、噂ではよく聞く。それは決して良い形ではなく、表立って討論会とかで、直接議論することがすごく大事と思う。それがネットなので、誹謗中傷とかこき下ろすとか。顔が見えないじゃないですか。後々禍根を残すし、誰が知事になってもまとめていかないといけないのに、後々尾を引きそうな感じはしている。そういうのも全部ひっくるめて兵庫県を良くしていきたい」
おおさわ芳清候補(共産党推薦)
今回の県知事選挙に最も早く出馬表明をした大澤候補は、共産党の推薦を受け、選挙選に挑む。
選挙戦中盤の9日の土曜の朝、山陽電鉄・月見山駅であった街頭演説を聞きに行った。土曜の朝10時ということもあって、聴衆はまばらな中、手元に準備した原稿を目にしながら演説した。
齋藤元知事の問題について
街頭演説では、まず県政の混乱に触れ、「内部文書を(斎藤)元知事や県の幹部らが最初から揉み消そうとしたのが問題。二度とこうした事態が起きないように、どのように組織動かすか、仕組みづくりとともに、リーダーの知事の役割が重要」と訴える。
これまで病院院長として、職員とのコミュニケーションを取り続け、組織を運営した経験を活かし「なにより県の職員の声をよく聞いて、県政を運営していく」とし、公益通報制度を県庁の外に作り、ハラスメント研修と相談体制の充実などしていくと話す。
医療・介護政策の充実を
大澤候補は、医師という経験を生かして、医療・介護の政策について主張する。斎藤県政下では兵庫県独自の障がい者、高齢者の支援が削減され、保健所の数や病院のベッド数も減少するなど、住民サービスが低下したことに触れ、「医療・介護の充実に取り組む。高くなった国民健康保険料、介護保険料を県の力で引き下げる。医師を増やし、保健所の機能を強化。所得制限をなくした18歳までの医療費無料を実現したい」と訴える。
教育政策について
また、教育に関する政策については、大学生向けの県独自の返済の必要のない給付型の奨学金の制度導入、高等学校の授業料無料化、前知事の公約だったが実現しなかった少人数学級の実現、県立大学に通う学生すべての授業料無料化などを主張する。
特に学校給食費について「一般会計の0.6%で小中学校すべての学校給食費の実現はできる。財源はある」と話す。
大澤候補に直接聞いた
演説の終わった大澤候補に話を聞いた。
〇選挙戦で印象深い県民の声は?
「若い方からDVに悩んでたり、仕事がきつくて精神的にしんどいという声を聞いた。兵庫県で気軽に相談できる窓口を作りたい。切実な願いだと思う。そういうことを実現したい」
〇斎藤知事のSNSの人気ぶりはどのようにみられてますか?
「亡くなられている方がいて、命を大切にしたいと思う。真実をちゃんと究明していきたい」
立花孝志候補(NHKから国民を守る党党首)
政治団体NHKから国民を守る党党首の立花孝志候補は、斎藤元彦前兵庫県知事のパワハラ問題の”真実”を伝えるために立候補。当初、出馬時には同党から複数人の擁立を目指したが断念した。その名残として選挙管理委員会が立花候補に備えて急きょ増やしたポスターの掲示板(阪急夙川駅では24まである掲示板も:トップ画像参照)が県内各地に残されていた。最終的に「ふざけている感の払拭」で立花候補のみの出馬となった。
選挙ポスターで「立花孝志には投票しないでください」と記し、あくまでも自身の当選を目的とせず、斎藤候補の当選を目指す。政見放送では「斎藤知事と話したこともない」としつつ、「目で合図をいただいた。立花さんよろしくと目と目で合図ができた」と話す。
街頭演説は、斎藤知事の街頭演説が終わった後に、演説会場に登場、そのまま演説を始めるスタイル。実際に、斎藤知事の演説後も立花候補の演説を聞くため、多くの聴衆が残っていた。選挙戦中盤、JR兵庫駅での斎藤知事の演説後に現れた立花候補に、手応えを聞いたところ、多くの聴衆が残る会場を前に「もうばっちり」と笑顔で応じた。
街頭演説では、元県民局長の内部告発は元県民局長自身に不倫などの個人的な問題があったとして、「知事のパワハラ問題はそもそもなかった」と訴えている。
木島洋嗣候補(ニュース分析会社社長)
今年10月の衆議院選挙でも兵庫1区から出馬したニュース分析会社社長の木島洋嗣候補は、兵庫県と大阪府の合併し、東京と並ぶ経済圏を作る「関西州」の実現を訴える。維新の掲げる政策の一つに「道州制の導入」があることもあって、維新の国会議員など維新関係者が応援に駆けつけているという。木島候補は、元維新の参議院議員で無所属で知事選に出馬する清水候補よりも自身の方が「維新の政策に近い」と語る。
選挙戦中盤の9日、兵庫県知事選にも関わらず、JR大阪駅のヨドバシカメラに木島候補の姿があった。演説会場には「YouTubeを見てきた」という聴衆など約10人が木島候補の前に集まった。
街頭演説冒頭、兵庫県知事選挙の候補者が大阪で街頭演説を行う理由について、「有権者の方があまりいないかもしれないが、大阪府民の方が関西州の提案をどう思うのか、ぜひ聞きたい」と話した。
関西州の実現で東京を超える経済圏を
街頭演説では、関西州のテーマに多くの時間を割いた。大阪と兵庫との合併によるメリットとして、東京は1408万人、大阪と兵庫を足すと、1413万人日本で最も大きい広域行政体で、大きな経済圏が生まれると主張。「東京と関西2つの経済圏で日本を引っ張っていく。東京は6兆円を超える税収で法人税収が2兆強となっている。医療、介護、福祉教育が充実している。同じことを関西でもやりたい」と語り、「今の経済活動の中心はやはり東京。関西州になれば企業を誘致する、東京に出て行った企業に戻ってきてもらう、外国の企業も関西を選んでもらうといったさまざまな経済政策が可能になる」と主張する。
実現可能性についても「地方自治法に”都道府県は合併できる”と書かれており、手続きにのっとれば法律上問題はない」と訴える。
関西州を導入するメリットの身近な例として、県ごとに異なる最低賃金問題を挙げ、知事選で最低賃金を上げる政策を訴えても、有権者が実際に働いてるのが大阪というケースが少なくなく、「兵庫県で最低賃金が上がっても、大阪府内の給与が上がらないと自分の給与が上がらない」という望ましくない状況になると指摘。その解決策として、「知事が同一人物で、経済が一体となっている状態が望ましい」と述べた。また、警察、ゴミ、災害対応などでも統合のメリットがあることを主張した。
斎藤知事の路線は「大賛成」
街頭演説では、斎藤元知事についても触れ、斎藤元知事の県立大学の授業料無償化や県庁舎建て替えを見直すなどの改革路線については「大賛成」と話す。「知事になったらその路線を引き継ぎたい」と述べた。
木島候補に直接聞いた
街頭演説後、木島候補に直接話を聞いた。
◯選挙戦を通じて自身の政策、関西州が広まっているという手応えは?
「ネット討論番組を見ましたという声は多いけれども、浸透しているかというかは謎だ。ポスターもチラシもあまり配ってないので、その影響がどのくらいあるか。反応は増えていて、手応えはあるが、票につながるのかはわからない」
◯兵庫県知事選には元々出たいと思って出馬したのか?
「元々兵庫県知事選挙には維新から清水さんが出ると思っていた。道州制やライドシェアなど維新の政策をやってくれるなら、兵庫県知事には清水さんが最適だと思っていて、維新として出るならスタッフとして応援しようと思ってたが、維新から離党して、さらに維新のやってきた県立大学の無償化も見直し、県庁建て替えもしますと逆のことを言いはじめたので、僕が出るしかないと思った」
〇国政政党をバックにしない候補者が乱立していて、分かりにくいように見える今回の選挙戦をどう見るか?
「分かりにくくしているのは候補者の問題で、選挙の争点は候補者が提示するものと思う。マスコミは今回、斎藤知事のふるまい、マネジメントを争点にしたいとなっているが、僕は関西州を争点にしていきたい」
福本しげゆき候補(レコード会社社長)
2024年の東京都知事選挙にも立候補したレコード会社社長の福本しげゆき候補は、兵庫県知事選挙にも出馬。事務所を置く明石市を中心に、選挙戦中盤の日曜(11/10)は姫路市を自転車で巡り、有権者と触れ合うなど独自のスタイルで活動する。
本記事では、全候補の街頭演説を聞くということでやってきたが、街頭演説の周知がほぼなく、今回は電話で本人に直接お話を伺うことができた。
齋藤元知事の政策を継承したい
斎藤県政のこれまでの政策には「賛成している」と語る福本候補は、今回の選挙公約にも斎藤元知事の政策を多く取り入れているという。自身が知事に選ばれれば、斎藤氏には「ポストに入ってもらって、政策に携わってもらいたい」と構想を抱く。
ただ、今回の県政の混乱や新たに立花氏の主張する元県民局長の問題がでてきたことで、「再選されても半年、1年ももたないだろう」と分析する。その上で、情勢調査で優位とされる稲村候補についても「実際は組織の支援を受けており、斎藤氏の政策を活かすと言うが、しがらみで難しいのでは」と語り、「真に斎藤路線を継承できるのは自分だけ」と訴える。
若者・障がい者・高齢者への支援を
政策としては、若者、障害者、高齢者を支援する施策に力をいれる。特に若い世代について、若い世代から終活のことを考えることが大事だとして、「ライフプラン(人生設計)」のサポートの他、県警と協力した闇バイト対策、スキルアップのための就業訓練などの施策を進めたいという。
加えて、メンタルを病む人が増えているとして心のケアーにも注力して取り組みや、レコード会社社長の経験を生かし、県内にAIを使ったコミュニケーションツールを導入していきたいとも語る。
まとめ
今回の兵庫県知事選挙は、元県民局長による内部告発文書を巡る問題、県議会で斎藤知事がリコールされて行われる異例の選挙戦である。当初、斎藤前知事の再選は厳しいと見られていたが、SNSを中心に斎藤前知事の政策が評価する声が広がって、街頭演説は数百人単位で集まる盛り上がりを見せている。
私がこの選挙戦を通じて、懸念しているのは“事実”が誰を支持するかによって、異なってしまうことだ。トランプ支持者とそうでない人で対立が根深くなってしまっていることと同じことが今の選挙戦で起きているのではないかと心配している。
東日本大震災によって原発神話が崩れ、新型コロナウイルスのワクチン接種を巡る議論。正しいと思われていたことが簡単に崩れてしまうこの現代において、何が事実を見極めるのはとても難しいと思う。
この“斎藤現象”とも呼ばれる熱狂の行き着く先はどこにあるのか。清水候補は「誰が知事になってもまとめていかないといけないのに、後々尾を引きそうな感じはしている」と懸念を示した。斎藤知事の街頭演説には、反対派の市民がプラカードを掲げ抗議し、斎藤候補の支持者から暴行を受ける映像がネット上で拡散されている。稲村候補は12日、選挙戦での暴力行為や誹謗中傷についてXに声明を発表した。
7名の主張を聞いて感じたのは斎藤元知事の政策そのものに反対する候補は少数であり、ほとんどの候補は、知事の政策を「良いものは引き続き進めたい」と話していた。内部告発問題を除けば、斎藤候補が当選するレベルの支持は存在するのではとも感じた。
混乱を極める兵庫県知事選挙。次の4年間の兵庫県を誰に託すのか。兵庫県民の有権者は、その候補を選んで良かったと思う選択をしてほしい。
本記事の引用、メディア問い合わせについて
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最後に、今回のルポで移動費など若干の諸経費がかかっております。もしこの記事を評価いただけるのであれば、少しばかりのご寄付(クリエーターサポート機能)いただけますと大変喜びます。ありがとうございました。