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夏の標と青い空

ジャンル:ほのぼの

海:♀
男:♂
女:♀セリフ少
陽子:♀セリフ少

陽子「ほんとだるい、この式いるー?てかさなんでこういうなんとか式ーみたいなのって外でやんのかな?なんとかなんないのこれー」
海「校長に聞けば」
陽子「海ってば。もう少し優しく言ってくれたっていいじゃんー!・・ぎゃあ!セミ?!ほんときもい!ないんだけどまじで!」
海「ちょっと、静かにしなって陽子」
陽子「っもおお・・・あ、ねえねえ、明日さ買い物に付き合ってくれない?」
海「はぁ?明日?やだよ、暑いし。なんで夏季休暇一日目に、あんたの買い物ついていかなきゃいけないの」
陽子「ね、一生のおねがい!可愛いバック見つけたのー!ついてきて?ね??」
海「あんたは小学生か。一生のお願い何回乱用するつもりだ。・・・(ため息)わかった・・遅刻しないでよ?」
陽子「えへへ!ありがとっ!じゃあ明日の11時に駅前ね?」

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海「遅刻するなって言ったのに・・・あんの馬鹿陽子・・・。2時間遅れなんて頭おかしいんじゃないの・・・。馬鹿らし、帰ろ・・・・っあ(立ち眩み)」
男「ーーーーーー誰かーーーー」
海(M)「男の人の声・・・?」
男「誰かーー、ーーーーー!」
海(M)「ん・・?くそ、なんだこれ目があかない・・・?」
男「誰か!!俺と結婚してくれませんかー!!」
海「結婚っ?!・・あ」
男「・・・俺のこと変だとおもったでしょ今」
海「え?あ、あは・・・・やば・・・」
男「あああ、ご、ごめん!怖がらせるつもりはなかったんだよ!ごめんね?大丈夫?俺怖いやつじゃないから!優しいから!」
海「逆に不安だわ…いや…わたしもすみません」
男「俺は全然気にしてないから大丈夫だよ。おかしいのは俺の方だしね。まあ普通は怖がるよね。気でも狂ったやつだと思われるよ。」
海「自分でわかってんだ・・・。え、と・・・結婚相手を探してるんですか」
男「そうだよ、俺の使命なんだ、これが」
海(M)「やばい・・とんでもないのに捕まったかもしれない・・・」
男「はは!あー、やっぱり君はそうかー」
海「…?」
男「ね、君、俺と結婚できる?」
海「出来ませんよ馬鹿。・・あ」
男「いいね!そういうの!!もっと言って!!」
海「はあ(あきれたように)」


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海「はっ!(目が覚める)・・・ん??あれ、ここは駅前・・・だけどさっきも・・・。夢・・?」
男「誰か俺と結婚してくれー!!!」
海「夢じゃなかったか・・・まだやってるんですか」
男「あ、君か!やるよーいつまでも!俺の命が尽きるまで!!誰か俺と結婚ーーー(人にぶつかって倒れる)あ痛ッ!あたた・・・」
海「………大丈夫ですか。女子高生相手にものすごい飛ばされてましたけど」
男「へーきへーき!さてと・・じゃあ次は」
海「なんですかそれ、チョーク?」
男「んー、印…かな」
海「印ってなんの」
男「そうだなぁ、生きた印、かな」
海「はあ(あきれたように)」
男「はは、またそんなとぼけた声だして!あのね、俺が行った場所に印をつけたいんだ。俺にはやることがあって、あまり遠くには行けないから今日はここまで来たんだっていう印をつけるんだよ。」
海「チョークなんてすぐ消えちゃいませんか、もっと別ので書いたらいいのに」
男「いや、いいんだ。俺が本当に残したいのはこんなものじゃないから。そうだ!君はさ、今この瞬間に何かを残したいとは思わない?君の、この世界に残したいものってなに?」
海「…ないです」
男「…ない?」
海「はい」
男「ひとつも?」
海「………」
男「そりゃ勿体無いなー!勿体無いよー!君には時間がまだまだあるじゃないか!あ、俺と結婚してくれませんかー!!」
海「(ぼそっと)・・そんなものがあってわたしの何が変わるっていうの。こんな平凡でなにもない空っぽの毎日がこれ以上増えたところで。」


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男「あ!ねぇ見て!見つかったんだ、俺の奥さん!!」
海「…………は?奥さんだと………?」
女「初めまして可愛いお嬢さん」
海「あ、初めまして…。え、マジ?」
男「ごめんね、俺たち用事あるからいいかな」
海「ああ、それは別に…買い物とか?」
男「は、はは・・・えっとね・・」
女「うふふ・・・ちょっと恥ずかしいですね・・」
海「あ、ハイ。女子高生の前でそんなふしだらなこと言わないでもらえます?」
男「ははは・・」
女「うふふ・・・」
海「微笑みながら消えるなーーーー!!!!」


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海「ねえ、」
男「ああ、君かあ。彼女は死んだよ」(声明るめに)
海「・・・酷いですね」
男「ん?」
海「あんな出会いとは言え奥さんでしょ。なのになんで悲しそうな顔しないんですか。何とも思わないんですか」
男「ん………そうだな…。けど、彼女がすぐ逝ってしまうのはわかってたことなんだ。彼女も……俺も。俺はね、死ぬことが怖いこととは思わない。悲しいことだともね。生まれ変われるんだ、それって素晴らしいことだろ?俺は彼女が生まれ変わったときヒトである事を願うよ。」
海「あなた・・・」
男「ん?なあに?独り身になった俺と結婚する気になった?」
海「・・わたしはあなた方とは結婚出来ませんから」
男「ふふ、そうだね、でも俺君のこと大好きだよ」
海「はい、わたしも意外と好きですあなたのこと」
男「意外って!(笑う)」
海「ふふ(笑う)」


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海「………………」
男「あ、おはよー!」
海「なにしてるんですか、そんな道のど真ん中で仰向けに寝て」
男「んー………日向ぼっこ?」
海「くだらない冗談はやめてください」
男「あははは!君は変わらないねえ!」
海「今日、なんですね」
男「君には感謝してるんだ。感謝してもしきれないくらい」
海「わたしはなにもしてません。あなたこそわたしに何かしたでしょう、あなたと話せるように」
男「いーや、俺もなんにも。早めに生まれてきた俺を神様が慰めてくれたのかね。
俺は嬉しかったけど君も災難だったね、こんなやつと話す羽目になるなんてさ。」
海「いえ、わたしも…楽しかったです。あなたと話せて」
男「やけに素直じゃない、可愛いな。あ、そうだもう一回笑ってよ!あの顔もっかいみたいな!ね?いいでしょ?ねぇねぇ」
海「うざい」
男「(笑う)」
海「(笑う)」
男「君はいつからわかってたの?俺のこと」
海「最近です。一昨日くらい。あなたはいつから知ってたんですか」
男「んー会った日から分かってたよ。」
海「え、」
男「俺のことが見える人にとったら、俺のあの言動はなんらおかしいことではないからね。君のあの怪訝な顔をみたらすぐわかるよ。ああ、この子は人間なんだな、ってね。」
海「・・・・」
男「正直諦めていたんだ。早く出てきたせいで周り誰もいないし、俺はなんも残せないまま死ぬのかって。そこに君が現れて、君は俺の子を産むことは出来ないけど、でもそれと同じくらい大切なものをくれた。」
海「わたし、何かあなたにあげましたっけ…」
男「記憶だよ、君の。君は俺のことを知ってる。それが何より嬉しいことなんだ、俺にとったら」
海「あなたが残したかったものは子孫じゃないんですか」
男「それもある。確かに俺の使命っていってもいい。それをしなきゃそれこそ俺はおわってしまう。でももうひとつ。俺が残したかったのは印だ。」
海「あのチョークの?」
男「あれもそう。生き物は必ず死ぬだろ?それが長いにしろ短いにしろいつかは死ぬ。その間になにを残すのかが俺は大事なんだとおもうんだ。足跡みたいなものかな。それは本当に小さい足跡で、たぶん俺の足跡なんて誰も気付かない。だけど、君がいてくれた。俺の足跡を、存在を認めてくれる君がいてくれたから俺は思い残すことなく死ねる。」
海「やっぱり・・今日・・」
男「………そんな顔しないで!言ったでしょ、俺は悲しくないよ。ほら、たとえば俺が生まれ変わってヒトになった時また君と出会えるかもしれないよ!」
海「なにそれ・・(笑う)」
男「さてと、じゃあそろそろいこうかな」
海「ねぇ、」
男「ん?」
海「あなたは幸せだったの?こんな一週間しか生きていられない人生で」
男「勿論幸せだった。奥さんがいて、子供がいて、そして君に会えて。」

男「(息を吸って)俺は!精一杯生きたぞーーーーーー!!!」

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陽子「あ、・・・海?海?目、覚めた・・・?」
海「……陽子」
陽子「海ごめんね・・私・・・日射病で倒れたって聞いて・・・」
海「わたしが倒れたのはいつ…?」
陽子「今日だよ。さっきこの病院に運ばれてきたんだよ?覚えてる?」
海「そっか・・・先生呼んできてくれる?もう大丈夫だから。・・・行きたいところがあるんだ」

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陽子「どこ行くの?家に帰んないの?なに?なんか忘れ物?ここって待ち合わせの場所だよね?」
海「・・・あ、いた。」
陽子「うわ、ちょ、なに拾ってんの蝉じゃんそれ。もう死んでるって、やめなよ気持ち悪い」
海「大丈夫、意外と恰好良かったから」
陽子「ええ・・・・?」
海「全く、なんで道の真ん中なんですか。踏まれたら身も蓋もないでしょーが。ふふ」
陽子「・・・あ、なんか、海が笑ってるの、久しぶりに見たよ(嬉しそうに)」
海「そっかな、さあ、帰ろう(微笑みながら)」