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スズランの森
ジャンル:ダークファンタジー
ギルベルト(ギル):♂
クラウディア(クリス) :♀
グルーク:不問
※:グルーク役の方推奨
ギル「はぁ……はぁ……くっ、…どこだ…クリス…!」
グルーク「あれ、おーい、お兄さん!ちょっと待って待ってー!」
ギル「ん?子供…?なんだ?俺は急いでいるんだが」
グルーク「はぁー!ビックリした!ここの森立ち入り禁止って言われなかった?」
ギル「聞いたさ。ここは通称蜘蛛の巣。蜘蛛の巣のように入り組んでいて1度入ったら出られない地獄迷路だってな。(皮肉な感じで笑いながら)死体になったとしても連れては帰って来れないと言われたよ。」
グルーク「あっは、そうなんだ!村の人達はやっぱり心配性だなあ。あ、僕はグルーク!お兄さんは?」
ギル「グルーク?随分とまた"いい"名前を付けてもらったな?俺はギルベルトだ。」
グルーク「ギルね!ギルはどうしてこの森に?急いでるって言ってたけど」
ギル「初対面で馴れ馴れしいやつだな。…俺は恋人を探しに来たんだよ」
グルーク「ギルの恋人?」
ギル「ああ、クラウディアが行方不明となって半年程が経った。仲間の警察共も諦めろと首を振ったが、俺は荷物をまとめて家を出たんだ。」
グルーク「半年も…!でも諦めろなんてそいつら酷いね!」
ギル「そうだろ?アイツらは結局面倒事を捨てたかっただけだ。俺にかけてくる慰めの言葉も全て上面だけの作り物だったんだよ。(舌打ち)クソ!待ってろよクリス…俺1人で君を見つけてやる…。」
グルーク「クリスはこの森にいるの?」
ギル「確証は無い。だが昨日やっと手に入れた唯一の目撃情報がこの森の奥なんだ。」
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ギル「すまない、この女性に見覚えはないか?どんなに些細なことでも構わない、なにか思うことがあれば教えてくれ。」
※「おや、この女性……」
ギル「知っているのか?!彼女はどこに行った?!様子は?!怪我などはしていなかったか?!周りに怪しい人物は…!」
※「少し落ち着きたまえ青年、つい数時間ほど前に私の目にチラと写っただけなのでな。確実にこの女性だとは言いきれぬが、似たような女を見かけたよ。」
ギル「す、すまない…。今まで全く情報がなくて、やっと見つけた手がかりなんだ。」
※「そうかい、少しでも役に立てるなら良かったよ。さてええと、見た感じは特に怪我などしている様子は無かったな。ただ少しぼーとしていて危なっかしかったよ。彼女は1人で確か……そう、あっちの方角へ向かっていったな。」
ギル「この方角だな?ありがとう、助かった。では」
※「まて青年、まさか1人で行くつもりか?あの先には蜘蛛の巣と呼ばれる森しかないがあそこは危険だ。その名の通り蜘蛛の巣のように入り組んでいて1度入ったら出られない。まるで地獄迷路だ、今は立ち入り禁止のはずだし、死体になったとしても連れては帰って来れないよ。」
ギル「ご忠告ありがとう、だが俺は必ずクリスを連れて帰る、……必ず。」
※「そうかい……、幸運を祈っているよ。」
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グルーク「へえ、その人、幸運を祈ってるって言ったんだ。じゃあ僕に会えてよかったね!」
ギル「はは、名前が"幸福"、だからか?」
グルーク「えへへ、そうだよ!だからきっと見つかるよ!クリスもギルが迎えに来るのをずっと待ってるはずだよ!」
ギル「ありがとう、森の奥へ進むまでに君に会えて良かったよ。君も早くうちに帰りなさい、じゃあな。」
グルーク「はあい、頑張ってね!…………、そう、そのまま進めば、…きっと会えるよ、ギルベルト…」
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ギル「はぁ……はぁ……っクソ!ダメだ!さっきから同じところをグルグル回ってる!……木に印を付けているのに何故だ…?!こんな所で止まる訳には……」
クリス「(所々聞こえない)ギル……ギルベルト…」
ギル「え……?クリス……?……クリス!!!クラウディア!!!どこだ?!どこにいる?!君なんだろう?!?!」
クリス「助けてギルベルト…ここよ……早く来て……」
ギル「クラウディア!!!向こうから声が聞こえる……!!待ってろ…直ぐに助けてやるからな…!!!(走り出す)」
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ギル「クリス!!どこだ!!助けにきたぞ!俺だ!ギルベルトだ!!」
クリス「……ギル…!!!」
ギル「クリス!!ああ良かった…!!ずっと会いたかった…!!!」
クリス「ギルベルト…!私もよ……!こんなにボロボロになって……」
ギル「必ず俺が見つけてやるって、…そう、心に決めていたんだ……!!……半年間だぞ…心配させるな…!」
クリス「もうそんなに経ってしまったのね…本当にありがとうギル、信じていたわ…貴方ならきっと、私を見つけてくれるって……」
ギル「当たり前だろ!!さあ、早く帰ろう。この森は危険なんだ、俺も散々迷っ……て……」
クリス「どうしたの?ギルベルト」
ギル「クリス、君、その姿…」
クリス「姿……?私がどうかしたの…?普通じゃないかしら…?」
ギル「ああ、普通だ。普通すぎる……どうして汚れ1つ着いていないんだ……?半年前の姿のままで……」
クリス「え?」
ギル「俺がこの森に入ったのは昨日だ。探し回ったとはいえ…君が言ったようにこんなにもボロボロになってしまった。まるで木の根が俺の足を引き止めるように何度も転んだ。訓練を受けてきたこの俺がだ。……なのに君は……あの時のまま…美しいままだ……異常なほどに。」
クリス「…………」
ギル「クラウディア、本当のことを言ってくれ。俺たち約束しただろう、嘘は無しだ。君が生きていてくれたんだ、それだけで今はいい。君が何を話そうとも咎めたりしない、絶対にだ。」
クリス「…………」
ギル「クラウディア……!」
クリス「……本当に怒らない?」
ギル「ああ、約束するよ。」
クリス「本当に?」
ギル「本当だ。」
クリス「わかった。……私ね、この森から出たくないの。」
ギル「……は?」
クリス「気に入っちゃったのよ、この森を。だからここで一緒に暮らしましょう?ギルベルト」
ギル「何を……言って……そんな事が出来るわけないだろう?!」
クリス「あら、怒らないと約束したのに、早速破ってしまうの?」
ギル「俺の質問に答えろクラウディア!!何故君は美しいままなんだ?!何故この森に来た?!俺の元を離れて何をしていたんだ?!」
クリス「ふふ、怯えた顔をして……そんなに美しい私が怖いの?心配しないで、浮気なんてしてないわよ?私には貴方だけだもの」
ギル「クラウディア……?」
クリス「でもね、この森を出ることは出来ないの。貴方と一緒にいる為には貴方もここに居てもらわないと叶わないのよ。」
ギル「クラウディア、どうしたんだ、なんだか……変だぞ……」
クリス「変?へん、へん、へん……そうかしら?私はいつも通りよ、ただ貴方のことを愛しているクラウディア……ふふ、ふふふふ……」
ギル「どう、してしまったんだ…クラウディア…!クラ(遮られる)」
グルーク「ああ、やっぱりこれも完璧じゃなかったかぁ。残念だ、今回は上手くいったと思ったのに。」
ギル「グルーク?!何故君がここに…!危ないから早く戻るんだ!」
グルーク「あは!優しいギル、僕の心配をしてくれるんだね?…でも本当に心配をしなきゃいけないのは君の方じゃなあい?」
ギル「……は?」
クリス「ふふふふ…うふふふふ!!ああ愛してるわギルベルト、永遠に…ずっとずっとずっとぉ…愛し続けているわ…!!ねえ?貴方もでしょう?…貴方も私を愛しているでしょう…?なら…ずっとずっと一緒にいましょうよ……?ねえ、お願いいいいい!!」
ギル「なん、だよ…これ…クラウディア…しっかりしろ…!どうしたってんだよ?」
グルーク「え?まさかまだ本当にクラウディアだと思ってる?あちゃー、ちょっと幻覚強めにかけすぎちゃったかな?思い込み過ぎるのも良くないよねえ、…ほら、ギルベルトよく見てみなよ。"アレ"は本当に君の愛するクラウディアかい?」
ギル「え……?…………あ、あ、あああ…嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ…!!!」
クリス「愛しているわ…、ギルベルト…」
ギル「クラウディアが…俺のクラウディアが蜘蛛の化け物のはずが無い…!!!そんなはずが……!!ああああ、ああ……」
グルーク「ちょっとぉ、まだ壊れないでよー?ここから僕のお楽しみタイムなのに!恋人と再会してハッピーなところをズドーンって落とすの!!そこからゆっくりと死ぬまで僕のオモチャにするんだからね?そのためにクリスも僕が一生懸命丁寧に育てたんだから。」
ギル「そだ、てた……?」
クリス「グルーク様ぁ?おかえりなさぁい!愛するギルベルトに夢中で気付きませんでしたわ?」
グルーク「いいんだよクリス、気にしないで?君はずっと彼を待ってたんだ、夢中になるのも仕方の無いことさ。」
ギル「待ってた…?クリスが…俺を……?」
グルーク「言ったでしよ僕、クリスはずっとギルを待ってるって。僕が彼女を連れ去ってこの森に連れてきた時からずっと言ってたよ。『ギルが必ず助けに来てくれる、ギルが絶対に見つけてくれる』って、ガタガタ震えながらね。」
クリス「ふふふ、愛しているわ、ギルベルト……ずっと、ずっと待ってたのよお……?」
グルーク「僕に虐められても偉かったんだよ?君の名前を叫び続けるだけで逃げなかったんだ。あ、逃げられなかっただけかもしれないけど。あは、足、取っちゃったからさあ!」
ギル「あ、し……?お前……クリスに……一体何を……」
グルーク「折角ずっとずーっと待ってたギルベルトが来てくれたのに、可哀想なクラウディア。……生きてる間に、会えたらよかったのにねえ!」
クリス「ずっと待ってた……ずっと待っテたノニ……ドウシテ来テクレナカッタノ、ギルベルトオオオ!!!」
ギル「うわあああああ!!!!」
クリス「追イカケッコォ?大好キイイイイ!!」
グルーク「あは、この森からは出られないって、"最初"に教えてあげたでしょ?」
____________
クリスに追い詰められたギル
ギル「(怯えて)はッ……はッ……はッ……」
クリス「恐れないでギルベルト……怖くないわ……?私よ…クラウディアよ…?」
ギル「(怯えながら)う、そだ…………ッ……クラ、ウディアは……クラウディア……(泣)っく……ふ、うぐ……!うう…!」
クリス「ああ泣かないでギルベルト…もう大丈夫よ…私がここにいるわ…?」
ギル「(泣)お前はクリスじゃないッ……お前は…!!っぐ、う……!もう、クリスには会えない……!俺が、俺がもっと早く来ていれば……!!俺が…!ああ、ああああ……!」
クリス「ギル……ギル……大丈夫よ……ほら、思い出して……?あのスズランのこと。」
ギル「え……?…スズラン……?」
クリス「私がいい匂いだって言ったら、貴方が買ってきてくれたでしょう……?貴方も気分が安らぐっていって好きだったあの花。ほら、周りを見て……?」
ギル「あ……!この、あちこちに咲いてるのは…あのスズランか……?」
クリス「そうよ!素敵でしょう?ほら、貴方も大好きなあの香りまでしてきたわ……!」
ギル「(匂いを吸う)、本当だ、凄く…落ち着く…」
クリス「ね?ここで一緒になるのも、悪くないでしょう?ギルベルト……愛し合っている私達にぴったりの場所だと思わない……?私のお願いを叶えて頂戴ギルベルト。私、幸せになりたいのよ……。」
ギル「…そうだな、クラウディア……、君と俺が大好きなこの花に囲まれながら…一緒に……」
クリス「愛してるわギルベルト、永遠に。」
ギル「(幸せそうに泣きながら)ああ、俺も、愛しているよ、クラウディ」
バツン!(クリスに食べられるギル)
グルーク「あーあ、名前くらい最後まで言わせてあげたら良かったのに。…って、食事中で聞こえてないか。…あは、クリスは好きなものを最後に残す派なんだねえ。じゃお顔を拝見……、ありゃ、恐怖に怯えた顔かと思ったら笑ってるよギルベルトのやつ、つまんないの!!僕はそんな顔を期待してたわけじゃないのに!全く……。ふうん、スズラン、ね。……ねえ、この花、毒があるって、知ってたぁ?」
終