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リストランテ・トンド

ジャンル:ほのぼの
唯:♀
まる:不問

唯「はぁ・・・今日も終電かあ。(息を吸う音)・・・いい匂い・・この辺のお家、かな。いいなあ、私もあったかいごはん食べたいなー・・ん?何だろこの看板。『リストランテ・トンド』・・・え、24時間営業?!・・・(唾を飲み込む)」

ドアを開ける
唯「す、すみませーん・・・」
まる「ベンヴェヌータ!こんばんは、お嬢さん。」
唯「ベ、ベン・・・?」
まる「ベンヴェヌータ、ようこそって意味だよ。僕の生まれ故郷の言葉さ。」
唯「へ、へえ~・・日本語凄くお上手ですね。」
まる「ありがとう。長く住んでいたからね。さあさあ、お腹空いてるでしょう?とびっきりのディナーをふるまってあげるよ!」
唯「あ、ま、待ってください!私今そんなに・・その・・・」
まる「もしかしてお金のこと?あーダメダメ!そんなの全然心配ないよ!僕は君からお金を取る気はさらさらないんだからね。」
唯「え?!待ってください、それってどういう意味・・・」
まる「もーとにかく、ほら!ここに座って!」
唯「わわ!わかりました・・・」
まる「さて、君のお気に入りは『お味噌汁』だったかな?」
唯「メニューにあるんですか?!・・・リストランテってイタリアの・・・」
まる「難しいことは気にしない!僕は作りたいものを作るし、僕の作りたいものは君の好きなものだからね。それに、僕もお味噌汁の具が大好きなんだ。」
唯「ふふ、そうなんですね。」
まる「そ。だから何にも気にしなくていいよ。ちょっと待っててね、すぐに準備するから。」

まる「お待たせ!一人で寂しくなかった?」
唯「はい、お店の素敵な内装を眺めてたらあっという間でした。」
まる「はは、褒めるのが上手だね。嬉しいよ、僕なりにこだわったんだ。じゃあ、もうひとつ僕のこだわりを見てもらおうかな。」
唯「わあ・・・美味しそう・・!」
まる「君が好きそうなものを詰め込んだ渾身の和食。リストランテで和食ってちぐはぐだけど、それもまたいいでしょ?」
唯「・・・・・」
まる「ん?どうしたの?もしかして苦手なものとか入ってた?」
唯「いえ・・・私の好きなものばかりです。」
まる「そう?それならよかった。」
唯「私・・・最近コンビニのお弁当とかインスタントばかりで。勿論それもおいしいんですけど、人が作ったものをたべるのがすごく久しぶりだなって思って・・・」
まる「そっか、泣いて喜んでくれるなんて嬉しいよ。」
唯「え、あ、ごめんなさい!わたし・・・」
まる「いいんだよ!そんな君もとってもキュートだしね!でも、笑顔の方がもっと可愛いと思うな!」
唯「え、ええ・・・?(ちょっと照れて)」
まる「ほら、冷めないうちに召し上がれ?僕の料理は冷めても美味しいけど、温かいうちに食べるのが格別なんだ。」
唯「はい・・・。・・・ん、美味しい・・・不思議、私が昔食べてたお味噌汁と同じ味がする・・・」
まる「ふふ、世界一嬉しい言葉だね。」
唯「(少し笑って)私が一人暮らしをする前、実家でお母さんがよく作ってくれたなあ・・・、うちで猫を飼ってて、その子がよく料理の邪魔して具材を食べちゃったりして」
まる「・・・へえ、猫かあ。なんて名前をつけたんだい?」
唯「まるっていうんです。捨て猫だったから拾った時はやせ細ってて・・・まるまる太って欲しいっていう意味を込めて」
まる「ああ、そういう意味のまるだったんだね?なるほど。・・・実はね、ここの店の名前もまるなんだ。」
唯「そうなんですか?」
まる「リストランテ・トンド。トンドっていうのは丸っていう意味でね。太ってる、とは違うんだけど。」
唯「へえ!すごい偶然ですね・・・!」
まる「本当にそうかな?」
唯「えっ?」
まる「さあて!ディナーの邪魔しちゃあ悪いから僕は厨房にいるね!何かあったら声をかけて!」

唯「あの、本当にいいんですか・・・?少しだけでも・・・」
まる「いいのいいの!最初に言ったでしょ?僕は君からお金を取るつもりはないんだよ。」
唯「でも・・・」
まる「まったく君のそういう律儀なところ嫌いじゃないけどね?ちょっとは甘えてくれてもいいんじゃないかい?」
唯「で、でも初めて会った方にそんな・・・」
まる「初めて、ね。僕は君と初めて会った気がしてないからなあ」
唯「な、なんですかそれえ」
まる「ふふ、本当だよ?・・・それじゃ、気をつけて帰ってね唯。さようなら。」
唯「ありがとうございました!また来ますね・・・!」

唯「あれ・・・私の名前、言ったっけ・・・?」