「インタビュー」を堅実に書くための 3つのコツ【文章術021】
僕のnoteでは、これからライターを目指す人や、新たなスキルを身につけたいビジネスパーソンに向けて、文章力を培うためのポイントを解説し、練習課題を出していく。
今回は、地の文をベースにした記事で、インタビュイーなどのコメントを挿入する書き方について考えていきたい。
前提として
まず、コメントを使った文章として、基本的には皆さんが以下の例0のような文章を想定できる——という前提で話を進めていこう。
例0)Aさんは、「インタビュー記事が書けることはライターとして重要です」と話しました。
これは既に書けるだろうから飛ばす、という意味である。この文を基本として、3つの型を使って、メリハリをつけていこうというのが今回のテーマだ。
|1|「次のように」型
例1)Aさんは次のように話しました。「インタビュー記事が書けることはライターとして重要です」。
こちらがコメントを挿入する基本の型だ。誰が話した内容なのかが頭で分かり、コメント部が長くなっても使いやすい万能型である。
ただし、これを鵜呑みにすると、Aさんは次のように話しました。「〜」。Aさんは次のように話しました「〜」。と続く恐ろしく単調な原稿になってしまう。そこで重要になるのが、表現を少しずつ変えることでリズムを作っていく(読者を飽きさせない)ことだ。
例えば、「次のように」の部分は「以下のように/こう/このように」などとも書き換えられる。また、「話す」も「説明する/述べる/解説する/語る」などと変えられる。さらに、文脈によって「補足する/強調する/胸を張る」などを使えば、こなれた感じも出てくるだろう。
例2)なお、A氏は以下のように補足する。「インタビュー記事が書けることはライターとして重要です」。
例3)A氏はこう強調する。「インタビュー記事が書けることはライターとして重要です」。
例2、例3を見てもらえば、「Aさんは次のように話しました」以外の内容は同じでも、書き方の工夫によって、稚拙な印象がなくなったのがわかるだろう。
|2|「〜と言う」型
例4)「インタビュー記事が書けることはライターとして重要です」とA氏は言います。
こちらは、話し手が誰かを文末に持っていくる形だ。先述の「次のように」型と比べると使い所は限られる印象がある。これは、読み手が文頭で「誰が話しているのか?」という情報を把握できないからだ。
具体的な使い道としては、前回の投稿【文章術020】で紹介したような(1)書き出しか、(2)既に話し手が分かりきっているタイミング、(3)文章の締め——の3つに絞られやすい。
1つ目は、書き出しで使う場合だ。以下の例5のように、「セリフ型」と「他者紹介型」を混ぜた導入などにしても雰囲気が出るだろう。
例5)「インタビュー記事が書けることは、ライターにとって重要です」と語るのは、記者のA氏だ。A氏によれば、〜。
この型のメリットは、話し手よりもその「コメントの中身」に読者の目を向けやすいということだ。A氏が情報としてそこまで引きが強くない人物である場合でも、印象的なコメントをピックアップして使いやすい。
要するに、読み手が「あ、こういう話が始まるんだな」と把握しやすくなる効果がある。
例6)A氏は、書き手に求められるスキルについて、次のように語る。「インタビュー記事が書けることは、ライターに取って重要です。これは単純に需要が多いからです」。確かに筆者も文筆業を営んでいて、インタビューを請け負うことは多い。
「ただし、インタビュー記事は手間がかかります。記事化の打診、取材先の手配、録音した音源の文字起こし、記事に整える作業、インタビュイーへの確認出しなどなど、ライターがすべきことは多いのです」、とA氏は補足する。
2つ目は、既に話し手が分かりきっているタイミングだ。例6のように、A氏が話しているんだな、と周知の流れで使えば、A氏はA氏はA氏は〜と地の文が悪目立ちして文章の流れを阻害することを避けられる。
例7)つまり「インタビュー時間をなるべく短く抑えること」や、「文字起こしツールを活用すること」、そして「書かない部分を決断すること」が、インタビュー記事の執筆には重要になるというわけだ。
「もちろん、質問がうまいことや、しっかりした文章が書けることが前提ですけれどね。その上でコツを知っていることが重要になると思いますよ」、とA氏はインタビューを締め括った。
3つ目は、文章の締めとしてアクセントに使う場合だ。こちらも原理としては、冒頭にコメントを入れるそれと同じである。地の文を混ぜたインタビュー記事の末尾を書くのは、なかなか難しいものだが、例7のようにコメントを利用して終わらせると、程よい余韻が残る。
|3|省略型
例8)なお、「インタビュー音源を全て文字に起こそうとするのは、多くの場合、時間の無駄です」とのこと。
これは、「〜と言う」型の既に話し手が分かりきっているタイミングで使う例の延長線上にある書き方だ。「もう、A氏ってわかるから、いちいちA氏って書かなくて良いよね?」という選択である。
例8のように、「とのこと」を末尾に加えるのがシンプルだ。また、以下の例9のように、例4のような「〜と言う」型の後ろに、コメントだけを続けて書くこともある。こちらは、小説などでもよく見かける書き方だ(ただし、媒体によっては好まれないので、商業ライティングでは多用すべきではないとは思う)。
例9)「そうですね。インタビュー記事が書けることは、ライターとして重要だと思いますよ」とA氏は言う——。「ただ、インタビュー記事ってすごい手間がかかるから、それだけで稼ぐのは大変ですけれどね」
また、インタビュイーが複数人いる原稿などでも使用は避けるべきだろう。その場合には、基本通りに「次のように」型を使った方が良い。
(おまけ)媒体指定の書き方
媒体や依頼内容によっては、コメントのフォーマットが指定される場合もあるだろう。例えば、以下のようなスタイルだ。
例10)
「インタビュー記事が書けることはライターとして重要です」(A氏)
例11)
A:インタビュー記事が書けることはライターとして重要です。
また、一問一答の書き方を選び、Qをインタビュアー(質問する人)の言葉として、Aをインタビュイー(答える人)の言葉として、書くことも多い。
例12)
——インタビューで大事なスキルを一つ挙げるなら何でしょうか?
質問する力ですね。例えば、相手がはっきり言わなかったところを具体的に深掘りできるかどうか、はインタビュアーの知識量やスキルによって左右されると思います。
フォーマットがある場合には、それに準じるのが大切だ。そして、自由に書ける場合にも、こうしたフォーマットを真似てみるのは一つの手である。広い視野を持ちつつ、今回紹介したような3のコツを利用してみてほしい。
今回の練習課題
【課題021】自信の得意なジャンルについて、セルフインタビュー記事を書いてみよう。その際、例1〜9までの型のどれを使っているのか意識して書いてみよう。字数の制限はしない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?