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文章の練習にまず「デッサン」をすべき理由 【文章術001】

僕のnoteでは、これからライターを目指す人やビジネスパーソンなどに向けて、文章力を培うための練習課題を出していき、そのポイントを解説していきたいと考えている。実用重視でいく。なるべく、日本語文法的なお作法の話はしない。

この時点で、少し文章テクニックをかじった人——すなわち、このnote投稿に興味がある人なら「無駄な箇所削る」とか「文章構造が大事」とか色々予想されていると思うので、まずはその期待を裏切りたいと思う。

第1回の課題はデッサンです

皆さんは普段、絵を描くだろうか?  こうした質問には「趣味で落書き程度」 「最近は忙しくて描いていない」「全然描かない」ーーなど、いろんな声が聴こえてきそうだ。しかし、こうした差こそあれ、誰しも一度は美術の授業などで「デッサン」を経験したことがあるだろう。

僕の文章術をテーマとしたnoteで、文章スキルをあげるための最初の課題として試してもらいたいのが、このデッサンである。まず、その理由を説明したい。


デッサンとは

デッサンについて「ググる」と、Oxford Languagesの定義として、以下の説明が表示される。

"絵画・彫刻の着想の大体をかき表す下絵。素描。"

要するに、プロの芸術家が下絵を描く工程のことだ。そして、より初歩的な段階では、立体的なモノを見ながら、鉛筆などを使って輪郭や陰影を表現して、見たままに平面へ描写するーーという訓練としても認識されていると思う。やることは単純だが、その難しさは誰もが知るところだろう。

さて、デッサンで養われる最大の技能とは何だろうか? 色々と捉え方はあるだろうが、僕はそれを「モノを正確に見て把握するチカラ」だと考える。要するに、林檎の絵を描くのが上手い人というのは、「絵が上手い」以前に、「林檎を見るのが上手い」のだ。

これを文章でやろう

「さぁ、みんな、紙と鉛筆を持って!」……とは言わないので安心して欲しい。あくまでもデッサンは比喩である。このデッサンをテキストベースでやりたい。便宜的に「文章デッサン」とでも呼んでおこう。

今回は「普段使いのカバン」を対象にしてほしい。具体的には、視点を決めて、情報を書き出すのだ。ここでは文字数を100〜200字と決めておこう。デフォルトのWordなら改行無しでMAX5〜6行くらいだろうか。

あとは、そのバッグの立体的な姿、あるいは時間軸を含めた姿が、そのバッグを一度も見たことがない僕に伝わるように文字で描写してほしい。

例えば、それはどんな形・色をしているのか。それはどんな特徴があるのか。それはどんな理由・経緯で手に入れたのか。それにどんな思い入れがあるのかーーなど、具体的な切り口をいくつも作っていけば良い。下絵の段階なので、断片的な文字で書けばOKだ。別に整った文章にしなくて良い。大事なことなのでもう一度言う。整った文章にしなくて良い

「百聞は一見に如かず」である。以下、ダメな例とOKな例を書いてみたので、ひとまずこちらをご覧いただきたい。

ダメな例

この前買った。安かった。ちょうど良いサイズ。好きな色。持ち運びやすい。紐があっていい。たくさん入る。ポケットが多い。キャラクターが可愛い。ものの出し入れがしやすい。軽い。収納しやすい。好きな人多そう。仕事で便利。

OKな例

2021年の9月にECサイトで購入。価格は1000円台後半。大部分は「dimgray」に近い灰色。表面は布地。横35cm×縦23cmくらい。13インチ程度のノートPCが入る薄型のブリーフケース。ノートPCの携行に利用。クッション付きメインポケット。入り口はファスナー。左右の金属に、紐を付け、肩からさげられる。金属はシルバー。右端の金具に、ゲームのキャラクターの人形を装着。表の側面にサブのポケット。

ダメな例では、情報が利用者の主観で構成されている。言い換えれば、これは書き手が頭の中で何を思っているのかという情報だ「好き」「安かった」のような情報は、有名人やインフルエンサーがブログやSNSに書けば価値があるものかもしれないが、今回の課題で求めているものではない。

一方、OKな例は、書き手の主観をなるべく排除したものだ。一部ボカした内容はあるものの、なるべく目に映ったカバンの情報を拾いあげ、そのまま文字に起こしている。そのため、この文字を通すことで、読んだ人の頭のなかにカバンの映像が描かれていきやすい。緻密な伝言ゲームのようなイメージになる。


この課題で身につけて欲しいこと

この練習課題を通して身につけて欲しいことは、「自分はモノゴトを正しく見て、相手に伝えられている」という勘違いを正すことだ。書き手の主観を排除し、目の前のモノの情報を忠実に拾い上げ、写実的に文字にしていく能力を高めていこう。これを繰り返し、無意識的に心がけられるようにすれば、ジャンルを問わず、あなたの書く文章の情報密度は確実に上がっていく。

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