「小話」を挟む【文章術053】
僕のnoteでは、これからライターを目指す人や、新たなスキルを身につけたいビジネスパーソンに向けて、文章力を培うためのポイントを解説し、練習課題を出していく。
今回は、原稿の書き出しに、小話を据える書き方について紹介しよう。
目的は共感からテーマに興味を持たせること
インターネットで「小ばなし」について検索すると、“気の利いた短い話”という定義がヒットする。表記を「小話」としたのは、この定義に沿いたいという意図だ。落語用語の小噺・小咄とは、少し機能が異なる。
たとえは、プレゼンテーションや商談などで、本題に入る前にする雑談や小話は、「アイスブレイク」としての目的が強調される。つまり、参加者の緊張をほぐし、場を温めてから本題に着手できるようにする機能があるわけだ。
一方、原稿の冒頭で使われる小話には、身近ではないテーマについて読者に「自分ごと」と感じさせ、興味を持ってもらう効果がある。そのため、小話なら何でも書いて良いというわけではない。まず、この点を理解してほしい。
具体的な使い方
やや専門的な話題について書き始めるときには、冒頭で読者が置いてかれないように気をつける必要がある。もちろん、専門誌に掲載される場合や、一般的なトレンドとして広まっているテーマである場合には、この限りではない。しかし、そうでない場合には、「なぜそのテーマに注目するのが面白いのか」を説明する必要がある。
その際に効果的な手法が、たとえば体験談などを小話として描き、読者に擬似的な追体験をしてもらうことだ。
たとえば、次のようなテーマで原稿を書くとしよう。
このテーマの場合、いきなり本題を書いたら唐突すぎて読者は置いていかれてしまう。初めからスマートフォン連携のプリンタを探している人以外に、興味をもってもらいづらいだろう。
そこで直前に小話を置いてみる。
こうした体験談を冒頭に書くことで、読者は課題や疑問を「自分ごと」にできる。そして、実際に読者がそのニーズを抱えていたときに、文章として強い説得力を持つようになる。
ちなみに、もしちょうど良い体験談がない場合には、人から聞いた話や、寓話の比喩など、まさしく「小話」としての構造を使うこともできる。ただし、難易度は少し上がるだろう。
注意点もある
一方で、注意点もある。小話を使った書き方をしたときに、場合によっては強く訴求する読者が限られてしまうことがあるからだ。
たとえば、先のプリンタの例文では、「引越ししたてでPCも持っていない」という条件を限定してしまったために、すでにPCやプリンタを持っている人に対して、共感しづらい導入になってしまっている。
この点はトレードオフな構造が生まれやすいので、記事の想定目的と合致させることを意識しなくてはならない。つまり、編集部やクライアントとの段取りが重要になるわけだ。
練習課題
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