「最近の若者は」構文に気をつける【文章術048】
僕のnoteでは、これからライターを目指す人や、新たなスキルを身につけたいビジネスパーソンに向けて、文章力を培うためのポイントを解説し、練習課題を出していく。
今回は、記事の冒頭でやりがちな“根拠のない記述”について説明したうえで、それを避ける方法を紹介したい。
冒頭でありがちな都合の良い表現
「まったく最近の若者は〜」というフレーズは、どこかで耳や目にしたことがあるだろう。
そして、この枕詞には、「いや、それ若者に限った話じゃ〜」とか「いつの時代も〜」みたいなリアクションまでがセットになる。これはおそらくご存知の通りだ。
こうした流れは、「最近の若者 = 〜である」という事柄が、事実なのかどうか、裏付けられていないから発生する。
つまり、この構文は「私は/僕は/俺は、こう思う」という個人からの限られた視点からの意見なので、“情報”としての価値はないわけだ(※エンタメとしてはさておき)。
これは、ライターが原稿を書いているときにも、気をつければならないことである。不慣れな書き手は、気を抜くと「私はこう思っている/思いたい」という内容をあたかも事実のように書いてしまいがちだからだ。
たとえば、以下のような文を書いてしまうのなら要注意である。
このような導入文は、一見それらしいことが書いてあるように思えるかもしれない。しかし、よく考えると、「最近の若者は〜」構文になっている。具体的なツッコミどころは3点ある。
1)「ここ数年」がいつのことなのかハッキリしていない。
2)“誰もが”テレワークをするようになった、という記述は事実と反する。
3)ビデオ会議ツールを欠かせないインフラと表現するのはやや誇張しすぎに感じる。
中でも一番の問題は、「誰もが」と主語を大きくしてしまったことだ。これをテレワークを導入できない業種の人が読んだら「誰もがじゃないけどな」と反応したくなるのは当然だ。
書き手がそう思いたいからーーあるいはそのような結論を前提に据えて話を展開するとラクだからーー雰囲気だけの表現を使ってしまう。これによって、「最近の若者は〜」構文が完成してしまうわけだ。
どうやって解消するか
この「最近の若者は〜」構文を解消する方法はシンプルだ。不必要に主語を大きくせず、具体的な“ファクト”ーーすなわち「根拠」を提示しながら表現すれば良い。
こうした文章ならば、事実を並べただけであり、概ね反論の余地はない(もちろん、リサーチの手法などについて考えることはできるだろうが)。
ただし、このような文書は多くの場合、堅すぎる。専門誌でなければ、冒頭文としては適していないこともあるだろう。
そのため、実用的には、あまりツッコミの入らないように調整した“ふんわりめ”の文を冒頭におき、その後ろに裏付けのための文章を配置することになる。これで読みやすさを維持しつつ、ツッコミを回避できる。
もちろん「最近の若者は」構文の全てが悪い訳ではないだろうが、ライター仕事としては、多くの場合、避けた方が良いとは思う。ぜひ、読みやすさと説得力を兼ね備えた導入文・背景説明文を書くのに、挑戦してみてほしい。
練習課題
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