書くための「検索」で必要な、たった1つのルール【文章術002】
僕のnoteでは、これからライターを目指す人や、新たなスキルを身につけたいビジネスパーソンに向けて、文章力を培うための練習課題を出していき、そのポイントを解説していく。実用重視でいく。日本語文法的なお作法の話はしない。
前回の投稿——「文章の練習にまず『デッサン』をすべき理由 【文章術001】」——では、目の前にあるモノを文字で写実的に描くことが、文章の情報密度を高めるトレーニングになることを紹介した。
これに続き、今回は目で見ても得られない情報の書き方について、考えていきたい。そこで重要になるのが「取材」という行為である。具体的には、その中でも最もカジュアルに行え、それでいて質が問われる作業——「検索」に焦点を当てたい。
第2回のテーマは「検索」です
インターネットの普及期、様々なWebサイトを閲覧していく検索行為は「ネットサーフィン」というスラングで表された。今や、スマートフォンのSNSアプリ上で情報検索をする時代である。とっくの昔に死語になっているだろうが、僕はこの表現に、今でも言い得て妙だと感じる部分がある。
例えば、実際に海で行う「サーフィン」では、無数に打ち寄せてくる波のなかから、どれが「乗れる波」なのかを見極めるのにコツがいる。僕は数度しか経験したことがないが、なかなか波に乗れず、プカプカと海上で揺られながら、遠くの波をぼーっと眺める時間が長かったことだけは、よく覚えている。
インターネット上の検索も、検索結果として押し寄せる無数の情報のなかから、どれが適切な情報なのかを見極めることに肝がある。当然、プカプカと情報の波に揺れるネットサーフィンは心地よく、簡単だ。しかし、それだけではボードの上にテイクオフし、格好良く技を決められる日(=ビジネスシーンにおける文章スキルが向上する日)は来ない。
では、文章術という視点で「適切な情報」を見極めるコツとは、一体何になるだろうか?
いろんな切り口が作れるとは思うが、ここでは「参照していい情報」と「参照してはいけない情報」の線引きを明確にすることを紹介したい。
伝言ゲームの先頭を見極めよう
情報伝達の原理は、まさに「伝言ゲーム」と同じである——。発信源から情報を得る人までの間に、介在する人の数が多くなるほど、情報は原型を失い、その信頼性も無くなっていく。
そのうえで文の書き手が情報収集で意識すべきことは簡単である。発信源そのものから情報を得ればよいのだ。つまり、伝言ゲームの先頭にいる人を見極めるのである。
例えば、ちょっとした文章を書くときに、参照する情報を限定してみる。それだけで、情報の信頼性が上がり、ビジネスシーンにおいても使いやすい文章となるだろう。
具体的に参照して良い情報としては下記のようなものが挙げられる。
◎参照してOKな情報の例
△参照すべきではない情報の例
特に、就職活動や社会人になりたての教育で、「新聞やニュースを読みなさい」と情報取得の方法を刷り込まれた人は多いだろう。しかし、こうした媒体は伝言ゲームの構造において先頭ではなく、2番目か3番目に位置するものだ。
もちろん、これらも情報を効率的に得るためには、便利な手段である。しかし、もし情報を発信する側になったり、文章のクオリティをあげたりしたいならば、たとえ検索でトップヒットする情報でも、それを鵜呑みにして参照すべきではない。
ニュース記事の書き出しに挑戦しよう
それでは、第2回のまとめとして、こうした「検索」を交えた課題を設定したい。
具体的に行うことは、2つの工程に分かれる。
まず、東京都内にあるカフェが新しく出したメニューの情報を検索する必要がある。この際、先述の通り、報道機関による記事や、第三者によるブログ投稿などの情報を参照するのはNGだ。検索中に、それらを手がかりとして辿るのは問題ないが、最終的には店舗や企業による公式の発信にまで辿り着いて、情報の正誤を確認しよう。
今回、具体的にチェックしてほしい項目は、以下の通りだ。
次に、これらの情報を下記のフォーマットに当てはめて、文として整えよう。掲載する媒体にもよるが、これでニュース記事の書き出しはほぼ完成する。もし余裕があったら、メニューの特徴などを追記してもよい。
この課題で身につけて欲しいこと
情報の発信源にたどり着いて正誤を確認するというのは、思いのほか難しく、手間な作業である。検索するジャンルによっては、想定以上に時間がかかることもあるだろう。
苦労はするだろうが、今回の課題を通じて、どういう検索を行えば、説得力のある情報に辿り着けるのか、という勘を養ってほしい。
なお、今回の課題は、Webメディアにおけるニュース記事の体裁にしてみたが、こうした情報検索のテクニックは報道以外の場面でも必ず役に立つものだ。
例えば、第1回の課題である「普段使いのカバンの文章デッサン」で言えば、そこに「製造を担う企業の情報」や、「製品の発売日」など、目では見えない情報を追記できるようになる。その価値は、ここまで根気よく読んでくれた皆さんなら言わずとも分かると思う。自分は報道に関わるつもりはないから、と判断せず、ぜひ純粋な練習課題としてチャレンジしてみてほしい。
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