近くに「寄せる」と、分かりやすい【文章術028】
僕のnoteでは、これからライターを目指す人や、新たなスキルを身につけたいビジネスパーソンに向けて、文章力を培うためのポイントを解説し、練習課題を出していく。
今回は、関係の強い語を近くに寄せる意識付けをしていきたい。
主語と述語を近くする
文のなかには、主語と述語、副詞と動詞・形容詞のように、互いに繋がりの強い言葉がある。こうした語の繋がりがある場合に、それらを近くに寄せると、文の可読性が高まる。
まずは主語-述語の繋がりについて、たとえば、次のような文について考えてみる。
実は、スラスラと文を書けている日ほど、このような文を書きがちだと思った方が良い。文法的に破綻はしていないものの、読者にとっては構造を意識しながら読まなくてはならないような文だ。
この文の問題は、主語と述語の位置が離れすぎていることにある。
要するに、「私はケーキを食べた」という事実を繋ぐ間に、様々な情報が入っている。そのため、読み手が頭を使わざるを得ない構造なのだ。
この問題を解消するために、主語と述語を近づけて、書き換えてみる。
例1'の形では、伝えたい情報はなるべく維持しつつも、文の読みやすさを向上できた。もちろん、描写表現の細かいニュアンスとしては、変わってしまっている部分もある。しかし、読みやすさが求められるビジネス文では、こういった可読性が重視されることが多いと理解しておきたい。
副詞を近くする
副詞と形容詞、副詞と動詞などの関係性にも同じことが言える。例として、次のような文で考えてみよう。
この文では、主語と述語は近いが、副詞と動詞が離れてしまっている。この語順でも、強調表現としてはアリかもしれない。しかし、やや不自然さがある。
例2'のように、副詞-動詞の繋がりが優先されても、この程度の文の長さなら違和感はない。副詞-形容詞や形容詞-名詞などの場合も同様のことが言える。
ルールはシンプルだが実践になると難しい
ここまで読んでもらって、「そんな簡単なこと、言われなくても分かってるよ」と思った読者は多いだろうが、実はその簡単なことが実践になると難しいのである。
たとえば、次の文を読んでみてほしい。
非常に読みづらいはずだ。専門用語や固有名詞が入り混じる文章で、さらに文のブロックが長くなっているからだ。これでは、「どれが主語で述語なのか」「どの副詞や形容詞がどの語と関係性をもつのか」などを、読者が判別しづらい。
誰しも、小難しい話を書こうとしてうっかり気を抜くと、こんな文章を書いてしまいがちである。
これを解消するには、まず主-述を近づけて、分かりやすく整える必要がある。主-述になりそうな語は以下の太字部分だ。
整理すると、
・A社は、スマートフォン「AX」を発売した。
・AXは、新機能「サツエイプロ」を搭載した。
・サツエイプロは、静止画を綺麗に撮影できる。
となる。
さらに副詞や形容詞などの修飾関係をより、理解しやすく整えていく。たとえば、「美しく-撮影できる」の部分は、もっと近づけられる。
・暗所でもより美しく静止画を撮影できる。
・暗所でも、静止画をより美しく撮影できる。
さらに、
・イメージセンサーサイズが向上したことに加え、
・高度なソフトウエア処理の恩恵によって、
などの部分は、長いので、補足的な説明に変えた方が良さそうだ。
こうしたアプローチで文を整えていくと、次のようになる。
まだ、わざとらしい部分が残っているので、完璧ではないものの、読みやすさは向上したはずだ。これは、主語と述語の繋がりが見えて、副詞と動詞などの位置関係も近くなっているからである。
なお、さらに自然な文にするために、筆者なら以下のような調整を加えるだろう。
ただし、これは例3'のような骨格が下地にあってこそできる書き方である。例3"を書いているときでも、頭の中ではまず例3'を最初に書いているのだ。
練習課題
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