「手軽に」を使わない【文章術047】
僕のnoteでは、これからライターを目指す人や、新たなスキルを身につけたいビジネスパーソンに向けて、文章力を培うためのポイントを解説し、練習課題を出していく。
今回は、つい使ってしまいがちな「手軽に」などの表現に頼らないための意識づけをしたい。
意味がありそうでない言葉
「語呂が良い」とでも言うのだろうか。それを書くことで、まるで筆が安心するような単語がよくある。
たとえば「非常に」「とても」「すごい/すごく」「手軽に」「素早く」「簡単に」のような表現がこれに当たる。
ついつい、これらの例文のような文章を書いてしまった時には、一旦筆を止めて表現を考え直そう。
もちろん、これらの例文は文法的に誤っているわけではない。しかし、一見意味があるようで、実はさほど意味ない語が文章の密度や説得力を下げてしまうリスクもある。
本来伝えたいことは別にあるのではないか
たとえば、先の例文における「手軽に綺麗な写真を撮影できる」は、どんな変化を表しているのだろうか。そのカメラアプリを使うことで、起きる変化は本当に「手軽さ」なのだろうか。
こうした文を書いてしまっている場合、まずはその「手軽さ」という視点自体が間違っていると疑おう。
もちろん、「プロの撮影家が大掛かりな機材を設置して、念入りな準備と設定の上でないと撮影できないような環境があったうえで、それをアプリを使うだけで撮影できる」といった状態を表現するならば、「手軽に」は最適な語だろう。
しかし、この文にそういう意図は恐らくない。書き手は「何がどう綺麗になるのか」「カメラアプリの使用によってどんな変化があるのか」というリサーチと裏付けをサボってしまったために、「手軽に綺麗な写真を」という表現に逃げてしまったのだろう。
文を変えるためには、表現すべき対象や事象をより具体的に捉えて、伝える内容自体を変えなければいけない。
レシピの例文も同様だ。書き手が考えるべきは、本当に「簡単に」なるのかどうか。もしなるとしても、本当に「とても」を付けるほどの変化なのか、ということである。
単に、語呂が良いから「とても簡単に」と書いてしまっている場合は、そこに文字としての意味が伴っていないわけだ。
たとえば、もし柿プリンのレシピを紹介すると仮定し、「柿をミキサーで砕いて牛乳と混ぜるとプリン状になる」のような前提ならば、「とても簡単に」は間違いではない。
しかし、それを簡単と捉えるかどうかは、読者の主観によっても変わってくるところだ。それならば「普通のプリンを作るのとは違い、蒸し器など使って加熱する手間がなく、冷やすだけで完成します」といった表現に書き直した方が、文の説得力は増す。
どんな場合でも、語呂の良い言葉に逃げず、何を伝えるべきなのかをしっかり考えることが基本だと思っておこう。
(※ただし、クドい文章になりすぎないよう、文面の柔らかさのバランスを取るためには、こうしたふんわりした表現も混ぜた方が効果的な場面もあるとは思う)
練習課題
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?