バルト諸国への旅(第1章.ツアーでは味わえない旅の楽しさ)
バルト諸国へ旅したことがある。バルト諸国とはラトヴィア、エストニア、リトアニアの3国で、旧ソ連に属していたが、地理的にはバルト海に面した北欧に位置する。3国とも国土が小さいので、観光客は3国まとめて回る人が多い。私も3国ではないが、ラトヴィアとエストニアの2国を回った。
まずは、東京からフィンランドのヘルシンキ経由でラトヴィアの首都リーガに到着した。実はこの時、ヘルシンキで予定していた飛行機を乗り過ごしてしまい、予定よりだいぶ遅れてリーガに着くことになった。それでも20:00頃には無事、予約していたホテルの玄関をくぐることが出来た。
次の日、リーガ市内を見して、もう1泊、同じホテルに泊まった。
そして翌日には宿を出て、いよいよバスに乗って国境を越える。そう、ラトヴィアからエストニアへ向かうのである。私は宿を出て、バスターミナルへ行った。そして9:15、バスはラトヴィアの首都リーガを出発してエストニアの首都タリンへ向けて走り出した。
途中、国境を越えたのだろう。しかし気付かぬままバスは走り続けた。ラトヴィアからエストニアの国境なんて気づかないほど緩いものなのかもしれない。
そしてリーガから4時間20分。バスはようやくタリンへ到着した。時刻は13:35である。バスターミナルでは大きな荷物を抱えながら国境を越えてきた人達が数多くいた。前述したように、バルト3国は小さな国なので3国まとめて回る人が多い。そのため、空港ではなくバスターミナルがその国の玄関口であることが極自然であるみたいだ。
しかし、バスターミナルが玄関口である故に、市中心部までの行き方が少し分かりにくい。空港なら「○番のプラットフォームから○番のバスに乗れば市中心部」と大きく表示されているケースがあるが、バスターミナルはそうはいかない。いかにも郊外然とした所にあるタリンのバスターミナル。ガイドブックと勘を頼りに市中心部へ行くしかないのだ。
実は私もこの時、右往左往してしまった。ガイドブックによると、バスターミナルから市中心部へ行くにはトラムか市バスが便利と書いてある。ちょうど近くにトラムの停留所があったので、私はそこで待つことにした。
すると、学生風の若い男性が声を掛けてきた。「市中心部まで行くんですよね?だったら、トラムじゃなくて次に来る17番のバスに乗ったほうがいいですよ」と教えてくれた。私のような、いかにも旅人然とした格好をしていると色々な人から声を掛けられるので、本当にありがたい(たまにありがたくないこともあるが…)。
やがて17番のバスが来たので、彼に教えてもらった通りバスに乗り込んだ。市中心部のバス停はバスターミナルから数えて三つ目か四つ目だった。先程の彼が「次のバス停で降りればいい」と教えてくれたのだ。本当にありがたい。私は彼に礼を言ってバスを降りた。彼も「どういたしまして」と笑顔を見せた。
私が旅をしていて一番嬉しく思うのは、地元の人達の何気ない優しさに触れた時である。本当にちょっとしたこと。それだけで嬉しい。だから私は日本に来て困っている外国人がいたら、お節介になり過ぎない程度に優しくしてやりたい。
そう言えば、私に親切にしてくれた彼にとってバスターミナルで見る外国人は見慣れた風景なのだろうか?「あ、また外国人。バルト3国、まとめてバスで回る外国人多いから、バスターミナルの近くはいつもこうなんだよなぁ…」とでも思っただろうか?まあ、彼は若いから、物心ついた時から外国人観光客が多かっただろうから見慣れた風景かもしれないが、私が学生の頃は旧ソ連というだけで行きにくいイメージがあった。だから、こうして気軽に行けるようになったのは隔世の感がある。
私は市中心部のバス停を降りて、旧市街へと続く門をくぐった。そこには中世から続く素晴らしい街並みが広がっていた。そう、石畳が連なる城壁に囲まれた小ぢんまりとした街だ。バルト諸国。エストニアのタリン。こんな素敵な街を気軽に行けるようになった幸せを今、噛みしめた。
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