優曇華の花
小学校低学年のころ、ある思いが心を捉え、さらに他の思いと結びつき、暗い気持ちで、いたたまれなく過ごしていたことを思い出す。
目を開けると外の景色、明るい光が入って来る。記憶では、陽射しが強い、校庭の遊具で子供たちが遊ぶ光景が浮かぶ。自分側は、目の形の真っ黒な方だ。目をつぶるとよくわかる。真っ黒だ。この僕は、あくまでこの暗い側で、目の前にいる他の子なんかにはなれないんだ。どの瞬間でも、一度もなれないんだ。これは事実なんだ。
もう一つ、人はいつか必ず死ぬ。これも事実だ。必ずだ。当時の死のイメージは、目をつむった暗い側。生まれる前は真っ暗で、何も覚えていないじゃないか。
この2点で、覆しようのないことだった。この二つをはっきりと事実と受け止めた時、僕は首が折れて絶望した。
掃除の時だろうか、うす暗い校舎の裏で、低い木の枝に見つけた、優曇華の花がなんだかそれを教えているように感じた。
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