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DSG/DB U形寝台車の系譜:INDEX


はじめに

戦後、西ドイツの復興も経済発展と共に成長を始めた1950年、DBや食堂車、寝台車を保有運営するDSGも様々な試作車輌を新規に設計、製造を始めました。まだ統一した全長も決まらない中で旅客車輌の基本は、いくつかの試作車による試行錯誤を経て全長26.4mで統一し制式化を進めていくことになりました。

1952年、DBからyl-Wagenが登場し、これがUIC-X客車の始まりとなります。
また、1956年の3等級制から2等級制に変更したのは、欧州他国の鉄道も同様で、それまでの1等車はなくなり、2等車が1等車に、3等車は2等車に格上げされました。これは、日本の国鉄が1960年に3等級制を廃止したよりも若干早いことになります。

座席車輌については、1952年に8輌の2等/食堂合造車輌Typs BR 4ümgと1/2等合造座席車輌Typs AB 4ümが登場したのが戦後量産車輌の始まりと思われます。それらはGruppe 53と呼ばれ、1960年にはGruppe 61、1962年には、F-Zug "Rheingold"客車として有名Gruppe 63が登場しています。

座席車輌のほか、DBが車輌保有、サービスがDSGの簡易寝台車、車両を保有していたDSG(後にDBに移管)の寝台車もUIC-X客車に含まれていますが、ここではユニバーサルタイプと呼ばれるDSG/DB所属のU形寝台車のみを抽出して記します。

Symbolmark DSG | 1954 - 1994

DSG時代

1950-1974

1950年に、戦勝国の米国が軍人輸送向けに定員40名の寝台車をDSGに発注し、20両の新製寝台車(WLBs4üe-50)が登場したのが戦後最初の寝台車でしたが、戦前設計のSchürzenwagenをベースにした車輌のため、全長22.32mの車両でした。
1954年、車輌メーカーのWegmann社から試作車として10輛の新型寝台車(WLABC4üm-54)が登場。この車両は、全長26.4m、エアコン付き、12の寝台個室をシングル、ダブル、トリプルなど1等車から3等車として様々なニーズに応えられる仕様にした画期的な車両となり、その特徴から「ユニバーサル」と名付けられ、「U形寝台車」と命名されました。

当時、西側中央ヨーロッパでは寝台車を所有・運営するのはDSGとCIWLの2社でしたが、U形寝台車のコンセプトはCIWLのMU形やU-Hansa形にも引き継がれています。また、当時多くの旧型寝台車もU形寝台車に倣って改造を受けているようです。
1990年代にICNやCNLが登場するまでは、欧州での寝台車カテゴリは「S」、「D」、「T3」、「T2S」の4つに分けられていて、U形寝台車の各個室はこのうちの「S」(1等)、「D」(1等)、「T3」(2等)の3つのカテゴリを設えることが可能でした。

1957年には、DSG独自車両であるWLAB4ümg-59 及び -67(後のWLABmh174/175)がBremenのHANSA社で製造され運用に就きました。
全長は26.4m、エアコン付き、車掌室には小型のキッチン設備もあり、当時最新のゴムチューブ式の貫通路が設備されました。この車両は1973年まで製造されています。

上記3形式は「U形寝台車」と呼ばれ、今回はこれら3種と番外編としてT2S(2等寝台車)の合計4種の寝台車についてまとめてみたいと思います。

TEN-Poolの車両側面に描かれたTENロゴマーク

TEN

1971-1995

1971年から1995年まで中央ヨーロッパで国際寝台車プールが存在していました。CIWLとDSG(後にDBに移管)の全ての寝台車は、この国際寝台車プールに統合し、各国の鉄道会社に割り当てられたため、より経済的に運用できるようになりました。略称「TEN」は、非公式名称「TEN-Pool」から来ています。


DB AutZugの車体側面に描かれていたロゴ

DB-NachtZug/DB AutoZug

1995-2013

TEN Poolが1995年に終焉を迎え、各国鉄道会社は再び自社のカラーで運用されるようになりました。DBは夜行列車専門のDB-NachtZug、季節運用のカートレインでもあるDB AutoZugの2つの会社による運用を始めました。


City Night Lineの車体側面に描かれていたロゴ

City Night Line

2010-2016

1990年代にSBB、DB、ÖBBのドイツ語圏3カ国の鉄道会社がスイスにDACH HOTELZUG AGという合弁企業を設立しました。新製した2階建寝台車両と簡易寝台車(Bcm 243)から改造された座席車両、DRの試作座席車両を食堂車に改造した3種が組成された新世代夜行列車「CityNightLine」が登場。運用路線も当初の3カ国間だけではなく、イタリアやオランダへもネットワークを拡大しました。しかし、営業的には常に芳しくなく、早々にÖBBが撤退、その後も社名を変更するなど迷走し、最終的にはDBが引き取る形で同社を買収、2010年からDB AutoZugの夜行列車と合わせて新しく「City Night Line」としてリスタートする形で運用を開始。この時にDB所有のU形寝台車もCNL寝台車として運用に就きました。

しかし、残念ながら業績回復は叶わず、2016年に全てのCNL列車は運用を終了。一部民間事業者などを除いて、ドイツから寝台夜行列車の灯が消えました。

NightJetの登場とU形寝台車

CNL消滅後、当然のことながら寝台夜行列車復活の動きは利用者などから起こり活発化する中、それに応えるようにÖBBから「NightJet」が登場、CNLの終焉で余剰となった多くの寝台車もNJが引取り、車両設備的にはCNLと大差ないものの、食堂車の廃止、路線やダイヤの見直し、数々のサービスの向上で徹底的にCNLの失敗要因を分析し、アイデアを凝らし実践した結果、早々に黒字化を実現、SBBやSNCFもNJブランドで夜行列車を運用開始するなど、かつて夜行列車廃止を推し進めていた国も再興を果たしています。2023年には新型車両も調達され運用開始し、徐々に路線を拡大しながら現在に至っています。

U形寝台車は、老朽化もありCNLからNJへの移籍はされず、ルーマニア国鉄など旧東欧地域に売却されるなど、一部車両は今なお他国で現役で運用されているようです。

* U形寝台車各形式の詳細は以下「車両形式」からリンクしています(有料記事)

車輌形式

  • WLABüm 173 (WLABC4üm-54 → WLAB4ümg-54 → WLABüm 173)

  • WLABm 174 (WLAB4ümg-59 → WLABmh 33 → WLABmh 174)

  • WLABmh 175 (WLABümh-67 → WLABmh 175)

番外編

  • WLABsm 166

車両詳細

U形寝台車3種は、各形式の車両について別ページにて詳細を記す予定です。また、U形寝台車と同時期にT2Sと呼ばれる2段式ベットを使った2等寝台車両(WLABsm 166)についても「番外編」として詳細を記す予定です。

U形寝台車の詳細記事については、現在未公開ですが、順次有料記事として公開してゆく予定です。

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