世界で愛される人気商品『ゆずすこ』の生みの親。株式会社高橋商店代表取締役高橋努武さん
福岡県の柳川市に本社を置く株式会社高橋商店。
地元の食材を活用し、世の中に必要とされる食品をより安全安心に開発製造していくことを使命として活躍される高橋努武社長にお話を伺いました。
プロフィール
出身地:福岡県柳川市
活動地域:福岡を拠点に全国、タイ、アメリカなど
経歴:1967年福岡県生まれ
オクラホマシティ大学大学院経営学修士卒。卒業後日本水産株式会社入社
その後株式会社高橋商店に転職され営業業務を担当。
2000年に14代目として代表取締役社長就任
現在の職業及び活動:株式会社高橋商店 代表取締役
座右の銘:我以外皆我師
受け継がれた伝統と、新たな革新を経て、これからもたくさんの「おいしい」をお届けしたい。
Q.高橋さんは今後、どのような夢やビジョンをお持ちですか?
高橋さん(以下、高橋敬称略):大きく分けて2つあります。
1つ目は、食品の製造販売の会社として、技術とかを含めた食文化を発信、継承していきたいと思っています。国内外の方に日本の食文化を伝えていきたいですね。現在ゆずすこは28ヶ国に展開しているんですよ。
最初はゆずすこを海外に輸出しようとするところから始まって、海外では柚子が珍しいので「柚子とは?」から話さないといけないんです。そこで食文化の継承をしていたら、柚子を使って自分の国の食文化に入れたいという話が出て、商品と原材料を輸出するようになりました。柚子を使ったアイスやジュースをつくるなど、そういうのが広がってきたんです。最初はそう思っていなくても、色々お話しする中で要望が出てきて対応するようになるんです。文化を伝えるっていう意味では、幅広い層の人に伝えることになるので、現地で生産するようになったりもしました。
2つ目は、私を含め社員が仕事を通じて人間形成をしていくことです。
仕事は収入を得るためだけにやっているのではなく、24時間の大半を過ごす社員や関係する方々を通して、自分自身をつくり上げる手段として高橋商店がある。自分自身を見つめなおし、人間として生まれて、学ぶべきことをしっかり学んでいける会社として在りたいと思っています。
記者:ニーズに合わせて変化、進化させていく過程が、みんなでつくっているような感覚が伝わりますね。
Q.夢を具現化するために、どんな目標や計画を立てていますか?
高橋:自分自身で気付いていくために、毎年経営方針を変えています。
3つあって、1つは具体的に仕事に通じること、もう1つは心の部分の成長です。人間として成長していくために、どのように捉えていくか。
この2つの方針を毎日朝礼で唱和しています。
そして3つ目は部署ごとに違っていて、分かれて部署ごとに唱和をしています。
普通は「売上目標何パーセント!」とかやるんでしょうけど、それよりももっと枠を広げた土台になる考えが大切なことと思っています。2つ目までは毎年私が考えて、3つ目は各部署のリーダーが考えるようにしています。
毎日唱和することで今一度再考し、定期的に検証しながら新しい価値あるものをつくりあげていきます。
記者:確かに土台がないとせっかく築いたものも崩れてしまいますもんね。
Q.その目標や計画に対して、現在どのような活動指針を持って、どのような活動をしていますか?
高橋:一番はコミュニケーションを大切にしています。私と社員や、社員同士とか。コミュニケーションがとれていないと、細かいところからヒビが入るんです。問題の根本がコミュニケーション不足ってことがしょっちゅうあります。だからコミュニケーションは大切にしていますし、同じ組織としての情報共有を意識しています。
同じ部署内はコミュニケーションがとりやすいけど、他部署はとりにくいですよね。だから毎週月曜日朝一にコミュニケーション会議をやって横のつながりをつくっています。予定の確認とか、どんな問題があるとか。これには私と役員は入りません。
そのあと、営業販売ミーティングを行い、商品開発改良会議の後で幹部だけ集まってランチミーティングを実施し朝出たことをまとめて、会社としてどうするかを決めていきます。
商品開発改良会議の始まりは、先週1週間のお客さんからいただいた言葉とか商品に対する意見、自分が感じたことなどを一人ひとり発表します。ベースはお客さんからの意見を元に、既存商品の改良につなげています。
これは私が社長になってから19年間ずっとやっています。
また、社内の情報共有やコミュニケーションの道具として、Linkitというビジネスチャットも取り入れています。こういう道具は便利ではあるけれど、それだけで済ますの良くないと思っています。
将来的にはアナログが少なくなっていくと思うけど、やっぱり大切なものもあるので、大切なものを残して、新しいものをつくっていくことを大切にしたいです。
Q.そもそも、そのビジョンを持ったきっかけは何ですか?そこには、どのような発見や出会いがあったのですか?
高橋:大きな壁にぶつかって、考えさせられるタイミングがあったからじゃないですかねぇ。実は私が社長に就任して11日目にして倒産の危機に陥りました。当時取引先1位のそごう百貨店が経営破綻になり2億の売上が無くなったんです。売上はマイナスからのスタートで、もう崖から落とされた気分でしたよ。いかに立て直そうかと試行錯誤して動き回ったんですけど、ほぼ空回りしてしまって。そのときに「何をやろうじゃなくて、何を持っていて、何ができるか」を考えるようになったんです。今まで培った製造技術や既存の商品など、今あるものをうまく生かしたやり方ができないかと。私たちがやらないといけないことはものづくりであり、商品を開発することだって原点回帰しました。当時は売店がなかったから、柳川の観光客に対して、工場見学と売店をつくったり。そうしたら売上が戻ってきたんです。
そごうの事件が無かったら売店もないしゆずすこもない。今思えば、あの事件が会社にとって次の時代のためにも必要だったんじゃないかと思います。
記者:就任後すぐに倒産の危機なんて、想像を絶しますね…。
Q.その原点回帰の背景には、何があったのですか?
高橋:今だから言えるけど、本当に苦しかったんですよ。経営不振になると銀行や人などからそっぽむかれることもあります。でも社長が下向いてると雰囲気として浸透していくし、社員がかわいそうだった。だから無理でもいいから前向きな行動とか発言を意識してました。
でもそんな中でも「一緒に頑張りましょうね」って言ってくれて、お金だけじゃない心の支援をしてくれる人もいました。下向いている自分に対して、上を向かせてくれるコミュニケーションをしてくれる人もいる。そういう人達のおかげでコミュニケーションが大切だって思っているのかもしれません。普通の状態だったらスルーしそうな言葉でも、谷の底にいる時に言われるからこそ沁みるんです。
仕事をすることが目的ではなくて、人間として生まれて生きていく使命を全うしようって。これは社是の『創造・挑戦・使命』にもあります。
時代は変わるし、新しいものをつくっていくけど、社是は変わらない。ものづくりとしての思いは変わらないんです。
記者:社長の想いがひしひしと伝わってきます!
Q.最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。
高橋:本当に大切なものは何なのかを考えることです。
絶対って言葉がつかえるのは、「生老病死苦」の5つしかないって仏法の経典に書かれています。
誰でも絶対苦労はする。人間にとって苦労は当たり前。苦しいとき自分だけが苦しいって思うから苦しいけど、人間が絶対経験すると思えば軽減されませんか。苦を通して使命に気付いたり、人にこうしてあげようって気付いたりするのかなって思います。苦は通過点であり、そこから成長していくので、苦を乗り越える体力づくりと気力づくりは必要ですね。
記者:苦しい時があるのは自分だけじゃないし、誰もが通る道だということですね。本日は本当にありがとうございました!
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高橋努武さんの活動、連絡については、こちらから
【編集後記】
今回、記者を担当した荒牧(写真右)と池田(写真左)です。
食文化や技術をしっかり継承していくだけでなく、革新的な挑戦をし続ける高橋さん。さらには社員ひとりひとりの成長を心から応援し、共に歩んでいこうとされる姿からは、まさにこれからの時代にも必要なチームプレイを感じました。
高橋さんのこれからのご活躍とご健勝を心より応援しております。
この記事は、リライズ・ニュースマガジン “美しい時代を創る人達” にも掲載されています。