No.1【神様小説】⛩️愛喜楽天の湘南青春日和 ㊗️🌈 ⛩️第一話:「神様、江ノ島に降り立つ」
潮の香りが漂う江ノ島の商店街。
観光客のざわめきと江ノ電の走る音が心地よく混ざり合う中、一人の男が鳥居の前でのんびりと空を見上げていた。
「……神様って意外と暇だなぁ」
男の名前は愛喜楽天(あきらてん)。
令和の時代に8福神目として天界に認定された新人神様だ。
身長は高く、整った顔立ち。だが、その雰囲気はどこか抜けている。
手には缶ビール、口元にはかじりかけのウィンナー。
神様とは思えないほどだらしない姿だ。
「おい、愛喜楽天! そこで何してんだよ!」
声をかけたのは地元の高校生・光(ひかる)。
愛喜楽天が江ノ島に降り立った日、偶然出会った縁で、なぜか面倒を見ることになってしまった人物だ。
「ん? 見てわかんない? 神様の仕事中だよ」
愛喜楽天は寝転がりながらあくびをする。
「どう見ても仕事してねぇだろ! その缶ビールなんだよ!」
「まぁまぁ、神様もリラックスが大事なんだよ~」
「お前、ホントに神様なのかよ……」
愛喜楽天は、誰にでものんびりとした態度で接する。
そしてその「適当さ」と「ゆるさ」が不思議と周囲の人々を引き寄せていた。
ある日、愛喜楽天は光から相談を受けた。
「俺さ、クラスのあいつに告白したいんだけど……どうすればいいかな」
「おお! 恋の相談か! よし、任せろ。俺が神力でバッチリ手助けしてやる!」
愛喜楽天は胸を張って答えたが、光はその言葉に不安そうな表情を浮かべる。
「いや、神力って……お前、いつも失敗してるだろ」
「大丈夫大丈夫! 今度こそ成功するって! 俺、神様だもん!」
愛喜楽天は自信満々に準備を進め、当日を迎えた。
湘南の夕日が海を赤く染める時間帯。
告白の場として愛喜楽天が選んだのは江ノ島の展望台だった。
「ここならロマンチックだろ?」
「まぁ、そうかもだけど……変なことすんなよ?」
光の警戒も聞かず、愛喜楽天は張り切って神力を発動。
告白の場を彩るため、空中に花びらを降らせた。だが――。
「うわっ! ちょっと多すぎだって!」
花びらは強風に乗って舞い上がり、視界を完全に覆い尽くしてしまった。
光の告白相手である女の子は驚いて逃げ出し、光は頭を抱える。
「だからやりすぎるなって言ったのに!」
「ごめんごめん! 思ったよりパワーが強く出ちゃってさぁ」
愛喜楽天は申し訳なさそうに頭を下げながらも、どこか他人事のように笑っていた。
その夜、光は愛喜楽天を責めることもなく、「まぁ、俺の勇気が足りなかったんだな」とつぶやいた。
「お前、ほんとポンコツだけど、なんか憎めないよな」
「それ、褒めてる?」
「……一応な」
二人は笑い合いながら海辺を歩いた。
そのとき、愛喜楽天はふと立ち止まり、ぽつりとつぶやいた。
「俺さ、神様って言われても、自分に自信がなくてさ」
「え?」
「神様なら何でもできるはずなのに、俺、こんな感じだろ? 人を幸せにしたいのに、失敗ばっかりしてさ」
愛喜楽天の声は少し震えていた。
光は初めて彼が弱音を吐くのを聞いた気がした。
「でもさ、今日お前が手伝ってくれて、少しだけ勇気出たよ」
「そうか……?」
「だって、普通に考えて告白のために花びら降らせるとか、誰もやんないだろ。それって、ある意味すげぇじゃん」
光の言葉に愛喜楽天は驚いたように顔を上げる。
そして、ぽつりと涙をこぼした。
「お前、ほんと褒め上手だな……ありがとな」
その後も愛喜楽天の失敗は続いた。
だが、光をはじめとする地元の人々は、そんな楽天を少しずつ受け入れていった。
彼ののんびりとした性格やユーモア、そしてどこか抜けているけど愛らしい振る舞いが、みんなを笑顔にしていたからだ。
湘南の海辺で風に吹かれながら、愛喜楽天は空を見上げてつぶやく。
「神様ってさ、もっとすごいことができるもんだと思ってたけど……こうやって人と話して笑い合うのも悪くないな」
光はそんな愛喜楽天を見て笑いながら答えた。
「お前はお前らしく、ゆっくりやれよ。ポンコツ神様も案外悪くないぜ」
こうして、愛喜楽天のゆるくも温かい江ノ島の日常が始まる。
涙あり笑いありの青春神様ストーリーは、まだまだ続いていく――。
続く。
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主題歌『癒しの神様』🌈⛩️