見出し画像

同じ長崎のスタートアップ「HafH」さんの閉店に思うこと。地方でスタートアップを成長させていくには

AIウェルネス・スタートアップの株式会社イグアス代表CEOの中村あきらです。

年齢や出産へのタイムプレッシャーを感じるキャリア女性に、「彼と1年以内に結婚する」というコンセプトで自分らしい結婚を実現する恋愛・結婚のパーソナルトレーニング「parcy's」(パーシーズ)という完全オンラインサービスを行なっています。

国内・海外の女性会員が7万人を超え成長中、長崎発のグローバル上場企業を目指しています。

恋愛結婚のパーソナルトレーニング®︎「parcy's」

\2分でわかるparcy's/

株式会社イグアスは長崎のスタートアップなのだが、長崎にも数社のスタートアップ企業がある。
その中に長崎のスタートアップのパイオニアと呼ばれていた株式会社 KabuK Styleさんがいる。

メインサービスは、「HafH」という月に定額の料金を支払えば、全国の宿泊拠点が泊まり放題になる旅のサブスクサービスをやっている。

今回そのHafHさんが、長崎の拠点であり一号店である「HafH Nagasaki SAI」を閉店させるということで、同じ長崎のスタートアップとして胸に来るものがあった。

今日は、そんなHafHさんの長崎閉店に思うこと、地方スタートアップがシリーズA・PMF前後をどう乗り越えていけばいいのかを書いていきたい。

長崎のスタートアップのパイオニアだった「Hafh」さんの長崎終了

以下が元創業代表の大瀬良さんの投稿と創業者であり現CEOの砂田さんの投稿になる。長崎で挑戦したことへの想いが綴られている。

HafH Nagasaki SAI, Fukuoka The LIFEが閉店します。 多くのご愛顧、ありがとうございました。 たくさんの方の心に、ずっと残っていきますように。 (LIVE) https://www.youtube.com/live/VEj8PmYcAiw?si=iPnekAMeuTVVPbPi

Posted by 大瀬良 亮 on Thursday, May 16, 2024

ぼくたちも上場企業が一社もない長崎、若い人たちが次々に出ていく長崎という場所に上場企業をつくり、若い人たちが長崎にいながら世界で挑戦できるような会社をつくりたいと思ってがんばっている。

ぼくよりも歳は近いものの年齢的に先輩であるお二人には、何度かご挨拶させていただき、二人からは長崎でやっていくことの大変さや憤りを感じさせていただいていた。

ただでさえ、スタートアップを上場させていくことは大変なのに、上場企業が一社もない長崎に拠点や資金を投入して盛り上げようとしていたお二人には尊敬してもやまないところだ。

地方・長崎でスタートアップを成長させていくことの大変さ

砂田さんの投稿でもあったが、

日本の西の最果ての都市をアジアのハブにしようなんて野心は、あまりにばかげており、私自身がまだまだ世の中を知らない若造であったことも思い知らされました。今の私ではまだまだ力不足。今は "まだ" です。

砂田さんのnote

自分自身も長崎で今の会社を2018年に設立して、「地方でやることはこんなにも大変なことなのか」と日々感じている。
20代で会社を一度少し大きくした経験やシリコンバレーなどで世界中のサービスを見てきた自信などは、この5年〜7年はボロボロに砕け散るほどだった。

世界一の会社をつくりたいという想いは、自分自身に対して「もうやめた方がいいんじゃないか」と何度も思ったことか、言っている自分に対して何度恥ずかしさが出てきたかわからない。

採用においても、長崎に移住したり、地方に住んでいる人はマイペースに働きたかったり、セカンドライフを楽しみたかったりする人が多い中で、
採用説明会で、ぼくたちは世界一の会社をつくるためにいる、地方でゆったりではなく、「ここは砂漠なんだ。ここにラスベガスをつくるようなことをやるんだよ。地方でやるのは、それだけ大変なことだよ」
という説明をいちいち入れないといけなかった。

ただそんな状況と、地方で働きたいニーズを合わせていくことは難しく、去年末から自分たちもフルリモートの会社へと変わっていった。

年商1億・シリーズA・PMF前後を地方で乗り越えていく難しさ

地方のスタートアップが、その街や本社機能を想いを持ってやり出してもある成長段階で難しくなることがあるなと感じている。
それはシリーズA前後やPMF前後でおこる。
年商で言うと1億を超えてきたり、社員でいうと10人〜50人になっていくようなフェーズだ。

スタートアップでは、このフェーズになると組織構築のフェーズが強くなる。出てくる課題は、数億の資金調達、正社員の採用、役員や幹部社員の採用、事業会社とのアライアンスなどだ。

ここから会社を年商10億〜、社員30名〜100名、シリーズB・Cへ行くには上記の課題をクリアして、会社を成長させないといけない。

自分が長崎でやって感じたことは、このフェーズが地方だとかなり難しい。
シード段階は、エンジェル投資での資金調達や社長と距離が近いことでなんとか頑張ってもらえる社員は出てくるが、アーリー期に入ると組織の立ち上げ・拡大フェーズがかなり難しくなってくる経験をさせてもらった。

実際に起こった問題は以下になる。

上記のように、組織が大きくなることによって社長に近い事によって頑張れるという動機はなくなっていく。
それよりも、サービスへの求心力、役員層の力量などが重要になっていく。

資本(エクイティ)調達によって成長スピードが求められるスタートアップでは、採用が決まっていかない停滞や、フラットなチームから階層ができていくことによる組織不和がとても大きくなっていった。

このフェーズにおける体制変更を、スムーズにしていくためにはある程度の採用流動生が多いことや、スタートアップへの理解などが求められるが地方ではかなり難しかったと言える。

だからこそ、地方スタートアップは組織のフェーズになると今であればフルリモートにしていくこと、役員など中心層を採用流動生が高い都市(日本だと東京におく)などが今の最適解ではないかと感じる。

もし地方でスタートアップのシリーズAを乗り越えていく環境をつくれるとしたら・・・

ここからは仮にだが、地方でスタートアップがシリーズAを乗り越えるまでを完結していくとしたらを自分の経験から考えていきたい。

①資金調達は地方銀行、地方VC、地方事業会社がタッグを組んでシナジー投資を行う

シリーズA以降になると資金調達は1億以上を超えてくることになる。理想は、その地方で半分以上の資金調達ができることだ。
そうではないと、東京や海外での外部資本が増えるにつれて「地方でやる必要ないよね?」と株主圧力が高まってくるからだ。

地方で社長の思いに共感してくれたエンジェル投資家たちは応援してくれても、ファイナンス側にその地方でやることへのメリットがないと「合理的に考えて東京でやった方が早いっしょ」的な発言が株主間で増えてくることになる。

そうなってくると、パワーバランス的に上場に近づけば近づくほど「地方から出ろ!」力学がかかってしまう。

そうならないためには、想いを共有してくれる事業会社やVCを探していくことは前提で、やはりその地方を盛り上げることを存在意義としたリスクマネー供給先があることが大切になる。

長崎でいえば、長崎を盛り上げる目的で作られたVCがあり、地銀である十八親和銀行、そしてジャパネットタカタのような大きな会社が投資を行いスタートアップを成長させることができたら、長崎にいながらスタートアップが調達シリーズを乗り越えていける。

②採用は、株主となる事業会社や地銀から最初の一人部署長を派遣してもらう

地方で難しいのは、役員採用と幹部採用になってくる。
スタートアップにおける幹部採用は、全て最初は一人部署長になる。

組織として出来上がってくるとまず部署が出来てくる。
マーケティング部、セールス部、カスタマーサクセス部、経理部、総務部、法務部、人事部などだ。

ここから入ってくる人材は、必ず一人部長になる。この採用が地方では難しい。ある程度挑戦心があり、チームをマネジメントした経験がないと回らない。
だけど、この部署立ち上げの最初の一人さえ見つかればあとはポテンシャル採用でいける。

だから、株主である事業会社や地銀からその最初の一人を派遣してもらい、その下にポテンシャル採用をつくれば部署を立ち上げることができる。
また派遣であれば、その管理社員もがっつりとスタートアップにジョインするよりもリスクは少なくなる。
1年もすれば、その派遣社員がいなくても経験がなかった人材が部署を回すことができるようになる。

また役員採用に関しては、このフェーズになるとPMFした業界をずっと経験して最低でも組織を50人〜200人をマネジメントした経験が求められる。
大企業の事業部長クラス、数百人規模組織の役員クラスだ。

イグアスでは、婚活業界に20年以上いて副社長として200名以上をマネジメントした経験がある鷲野さんが来てくれたことでやっと組織が安定した。

これには県を上げて年収1000万円〜2000万円以上のハイキャリア人材の移住を推進していくほかはない。
ハイキャリア人材の移住には、子供の教育の環境がかなり優先度が高くなる。
鹿児島にハイキャリア人材の移住が増えているのは、そこにしかない教育があるということは大きい。
教育以外の不便はAmazonや通販で何とかなるが、教育に関してはハイキャリア人材はかなり吟味している印象だ。

自分の価値観にあった出産、価値観に合った保育園、価値観に合った教育をハイキャリア人材は探している。
そこが整っていると、地方へ優秀な人材が移住してくる理由になってくる。

③新卒や若い人の採用は、産学官連携で紹介してもらう

地方ほど新卒や若い人の採用は、産学官からの紹介が大きい。
県庁の若者未来課などからの紹介、大学などの教授からの紹介、コワーキングスペースなどからの紹介から新卒に入ってくることはとても多い。

地方だと優秀な人ほど、自分の地域の就活はしなかったり、コワーキングスペースなどのイベントに入り浸っていたりする。
そこからの紹介があると、よりスムーズに新卒が決まっていきやすくなる。

また地方では親がスタートアップに就職しないでほしいという考えを持つ問題もあり、親がスタートアップで働くことについてどう思うかを面接段階で確認する必要もある。

長崎で新卒採用したメンバーたち

イグアスも毎年新卒を長崎から採用しているが、紹介で入ってきた人がとても多い。地方を出ていきそうな優秀な若い人に地方でスタートアップで働くという選択肢を提示してあげてほしい。

上記をその都市のみで補うことができたらスタートアップからのMade in 地方の上場企業ができていくと思う。

PMFしたスタートアップの損失は、地方にとって「未来の産業」の損失

改めて、「HafH」さんのような資本調達しPMFしたスタートアップが地方から離れていくということは、地方にとって小さい会社1社が離れたということだけでなく、「未来の産業」の損失だと思う。

今のジャパネットタカタが長崎の雇用や街づくりを担っているのと同じように、スタートアップ1社は未来のジャパネットタカタであり、雇用を生み出す未来の産業だ。

「HafH」さんも「HafH」が生まれたことにより、ノマドの人やワーケーションを大切にする人たちの人口や流動性がかなり増えた。
「HafH」がなくなることでその流れも断ち切られていくだろう。

大きな産業というのは、1社から生まれる。その1社1社に想いと情熱を持った挑戦者がいる。
大きなビジョンを持ったスタートアップや挑戦者は、地方は未来の産業として特別扱いやひいきをしたとしても大切に育てなくてはいけない。

地方でスタートアップをやるには「情熱」と「想い」それだけ。

長崎のスタートアップのパイオニアであった「HafH」さんの長崎終了や、今の自分たちの立ち位置やフェーズを見て思うことは、
地方でスタートアップをするということはとてつもなく大変なことだなということ。

大きな野心があればあるほど、心が潰れそうになる。

地方で資本(エクイティ)調達してスタートアップをやるには、とんでもなく大きな情熱が必要だと感じる。ただそれでも挑戦し、成長していきたい。

願うことは、HafHのお二人や他の長崎のスタートアップ経営者、今はまだ地方という足枷を背負ってでもがんばっている想いを持った挑戦者たちを大切にしてあげてほしいなと思う。

資金をベットしていけば長崎から新しい挑戦者たちは、離れていかないと思う。新しい挑戦者が離れていくということは、未来の雇用や人材も離れていくということだよね。

HafHさんが長崎を離れるって大きな損失だ。
長崎は建物への投資が多いけど、やはり魅力的な人がいない街に人は留まらないし集まってこない。

HafHがあったり、大瀬良さんや砂田さんがいたから長崎に来てた人はいっぱいたよね。もったいない。

長崎がもっと人材や挑戦する人たちに投資したら、上場企業ももっとたくさん生まれるし、若い優秀な人たちが長崎を選んで長崎から世の中に仕事をしていけるようになる。

HafHさんには、地方でのスタートアップ経営でかなり参考にさせていただいたなと思います。これまでの歩みに感謝しつつ、勝手ながら想いを引き継ぐような気持ちで、自分たちもここ長崎から事業を大きくしていけるようにがんばろうと思います。


イグアス 会社概要


イグアスは長崎県に本社をおくスタートアップ企業です。「人生の転機となる環境をつくり、女性が活躍する社会を実現する」をミッションに、女性の活躍推進支援と、長崎の経済活性化を目指した新規ビジネスの創出に取り組んでいます。

社名  : 株式会社イグアス
設立  : 2018年6月
代表者 : 代表取締役CEO 中村 あきら
URL   : http://y-guazu.com/

事業内容:
1. 恋愛結婚のパーソナルトレーニング「parcy's」の開発・運営
2. 法人向け社員のパートナーシップ支援福利厚生サービス「parcy's for well-being」
3. 長崎の人材成長・起業家育成のためのシェアハウス=亀山社中スタートアップ(長崎リバ邸)の運営


▼絶賛採用募集中!
事業拡大中の当社では複数のポジションで人材を募集しています。詳しくは、当社採用ページおよびWantedlyをご覧ください。
採用ページ: https://y-guazu.com/recruit

▼イグアス提供サービス
・恋愛・結婚のパーソナルトレーニング「parcy's」(パーシーズ)
( https://www.parcys.com/ )

・恋愛・結婚のパーソナル診断「parcy's診断」
https://checkup.parcys.com/

・parcy's note(パーシーズノート)
( https://www.akiradrive.com/ )

▼法人・自治体の方へ
・法人向け社員のパートナーシップ支援福利厚生サービス「parcy's for well-being」
( https://www.parcys.com/well-being/ )

いいなと思ったら応援しよう!