政治を最も必要とする人は政治から最も遠くにいる 〜企業・団体献金を禁止せよ〜【岸田内閣不信任案賛成討論原稿】2024年6月20日
立憲民主党、長妻昭です。私は、立憲民主党・無所属を代表して、ただいま議題となりました、岸田内閣不信任決議案に、賛成の立場から討論いたします。
岸田総理は国会で、裏金問題で追及を受けると苦し紛れに「信なくば立たず」を連呼します。しかし、これは軽い言葉ではありません。
「信なくば立たず」とは、「孔子が、政治をおこなう上で大切なものとして兵、食、信の三つを挙げ、その中で最も重要なのが信。つまり国民からの信頼であると説き、政治は国民の信頼なくして成り立たない」というものです。
「信なくば立たず」の言葉通り、政治から信が失われた今、政治が成り立たたない現実にあります。
外交政策も経済政策も物価高対策も少子化対策もすべて国民の信頼がなければ絵にかいた餅になります。
国民の理解を得て、物事を前に進める力(ちから)が政府・自民党から失われてしまいました。
岸田総理、もはや、このまま総理を続ける選択肢はありません。「信なくば立たず」と言うのであれば、即刻総辞職するか、解散・総選挙をして国民の意見を聞いてみるべきではありませんか。
今回の裏金問題で自民党が犯した大罪は3つあります。
一つは裏金事件を起こしたこと、二番目は実態解明を怠ったこと、三番目は政治改革法案をザル法にしたこと、です。
岸田総理が先頭に立って厳しく取り組めば、国民の理解も得られたと思いますが、現実は、がっかりを通り越してあきれるほど後ろ向きでした。
岸田総理は火の玉どころか、全くリーダーシップを発揮できていません。
安倍元総理が止(や)めた違法なキックバックを、再開したのは誰なのか?
一昨日、安倍派の会計責任者が法廷で「ある幹部」が再開を要望したと証言しました。
岸田総理が指示して、この安倍派の会計責任者に聞き取り調査をしていれば、真相がわかったはずです。
岸田総理は、森元首相からもヒアリングをしたと国会で答弁しましたが、これも森元首相の証言で岸田総理の答弁と異なることが判明しました。
あれだけ実態解明、が大切だ、大切だ、と言いながら、ほっタラカシですか。自民党は、国民が忘れるとでも思っているのでしょうか。
岸田総理、ほっかむりして逃げ回るのはいい加減に、していただきたい。
改めて国民を代弁して岸田総理に申し上げたい。
裏金議員に、裏金の使い道を洗いざらい明らかにさせて欲しい。
裏金の領収証がないのなら税務署に行って税金を払わせて欲しい。
それが世間の常識です。
岸田総理は、国民が何に怒っているのか?わかっているのでしょうか。
会計責任者のせいにして責任逃れをする政治家。
未だに使い道を明らかにせず税金も払っていない裏金議員。
議員個人に渡され使い道を明らかにしない5年で50億円ものカネ。
さらにカネの力で政治が歪められているのではないかとの疑念。
これらに怒っているのです。
今回の自民党の法案では本質的な問題は、何一つ解決されていません。実質的に今と変わりません。
今度こそ、カネに汚い政治を終わらせる これが、多くの国民の願いだったはずです。
岸田総理は、なぜ、この議論が起こったのか自覚しているとは思えません。
岸田総理!
なぜ、政治家の責任を厳しく問う連座制に準じた法改正をしなかったのですか?
なぜ、政治資金の入りと出、すべてに領収証を義務づけなかったのですか?
なぜ、政治資金パーティーを含め、企業団体献金を禁止しなかったのですか?
立憲民主党の法案はこれらにすべて答えるものです。
「政治とカネ」の本質的問題は、企業や団体から献金や政治資金パーティーとして、政治に流れ込む莫大なカネが政治を歪めている、というところにあります。カネに歪められる政治の問題です。
「政治を最も必要とする人は、政治から最も遠くにいる」――。
これは私が敬愛する山井かずのり代議士の言葉です。
日本の政治の問題を端的に示す、至言だと思います。
政治の近くにいるか、遠くにいるかは、カネの力次第。献金力といってもいいでしょう。
私は議員としてカネの集まらない分野が冷遇される現状をいやと言うほど見てきました。
少子化対策は、何年も前から重要だと言われながら、今回テコ入れしても、先進国に比べ、予算や法律の手当が手薄です。
少子化対策の分野はカネが集まりません。パーティー券も売れません。子育て中の親御さんが2万円のパーティー券を何枚も買うことなどできません。
教育費の自己負担比率も日本は先進国トップクラスです。生まれた環境によって教育に大きな差がついてしまいます。この分野もカネが集まりません。予算はいつも後回しになっています。
非正規雇用・格差対策も喫緊の課題にもかかわらず後回しになっています。この分野もカネは集まりません。逆に非正規雇用を便利に使っている企業や業界からは、巨額なカネが集まります。
さらに日本は、新しい産業を育成することに大きく遅れをとっています。
研究開発支援はもとより、ゲノム医療、AI、量子コンピューター、メタバース、スタートアップ支援など政府が強力にバックアップしなければならないにもかかわらず、それがなされていません。
なぜなのか?
私は、新しい産業育成の分野は、まだ企業や業界団体が巨額の献金やパーティー券の購入ができるほど育っていないため、政治家の関心が薄く予算や法律の手当が後回しになっているとの疑念を持っています。
カネ塗(まみ)れの政治の中で、政治家の関心は、昨日より今日、今日より明日、とより多くの金を集めることに重点が置かれるようになってはいないでしょうか。
カネ集めが政治家やその事務所の優先課題となり、カネが集まる分野や政策に政治家の関心が集中してしまう。一方でカネが集まらない分野は関心が薄い。これでは本末転倒です。
若い優秀な人物だったのに、議員に成った途端、厳しいパーティー券の販売ノルマに追われ、しがらみ の海に自ら飛び込み、しがらみ、まみれになって、当初目指した理想や政策を忘れてしまう。
これでは、国民も政治家も不幸です。
もうこんな政治は終わりにしましょう。
「企業献金はそれ自体が利益誘導的な性格を持っている」
これは、30年前、政治改革議論をリードしていた民間政治臨調会長の亀井正夫住友電工会長の言葉です。
「企業が議員に何のために金を出すのか、投資に対するリターンを確保するのが企業だから、企業が政治に金を出せば必ず見返りを期待する」
この発言も当時の石原俊(たかし)経済同友会代表幹事のものです。
当時は旧経団連すら「企業献金については、廃止を含めて見直すべきである」と見解を打ち出していました。
政党助成金が導入される当時、連立政権合意で「公費助成等と一体となった、企業団体献金の廃止等の法案を本年中に成立させる」との約束が交わされました。
この、政党助成金と引き換えに企業団体献金を禁止する約束は反故にされ、いまだ、二重取りだとの批判が絶えません。
岸田総理は、八幡製鉄献金事件の最高裁判決で「企業献金の自由が認められた」と、国会でしつこいぐらい繰り返しています。
しかし、この判決では「金権政治の弊害には立法政策で対処すべき」との見解も示され、企業献金を公共の福祉の枠内で規制できるとの趣旨の判断が示されたことも忘れてはなりません。
日本は先進国でも献金規制が緩い国です。G7だけみても、フランスもカナダも企業団体献金は禁止され、米国も政治団体PACを除いて禁止されています。
英国でも企業献金について、一定額以上は株主総会の議決が必要となるなど厳しい規制があります
私たち立憲民主党は、圧倒的な資金力のある企業団体献金を政治資金パーティーも含め禁止することが重要であると考えます。
私たちが目指すのは、カネの力で歪められず、真に必要なところに予算や法律の手当がなされる政治です。
これが、まっとうな政治、です。
政治にカネがかかるといいます。確かにお金があればあるだけ使い道はいくらでもありますが、キリがありません。
政治資金は軍拡競争に似て、相手がより多く使えば、こちらも負けてはいられない、どんどんエスカレートします。
立憲民主党の法案のように、すべての政治家を個人献金中心の政治活動に転換させ、税の優遇を大幅に拡充する個人献金促進策をとれば、相手と同じ土俵の中で、工夫して一定の資金の範囲内で政治活動は続けられます。
自民党案を詳しく見ると、なんと、これまで法律に規定されずグレーだった政策活動費が法律に明記され合法化されているではないですか。不透明な金を合法化することになり、今より酷くなっています。これではザル法以下の代物(しろもの)です。
さらに政策活動費の領収書の公開は、10 年後とされていますが、首を長くして10年待っても、出てくる領収書は黒塗りの場合もある、とのことです。バカにするのも、いい加減にしろ、と言いたい。
マスコミが言うように「キックバック」で始まり「ブラックボックス」で終わる、ということは決して許されません。
さらに自民党案では、政治資金パーティーについて、従来20万円超で公開だったものが、5万円超で公開となりました。
しかし、これは政治資金パーティー1回当たりの公開基準であるため、開催回数を4倍に増やせば非公開金額は同じことになります。
自民党は連座制に準じた政治家の責任を規定せず、政治家が確認書を書くとしていますが、「知らぬ存ぜぬ」という、いつもの言い訳を書面に書くものにすぎず、これも実効性はありません。
今、国民の信頼は地に落ちたままです。国民の皆さん、本当に、カネに汚い政治を終わらせましょう。
岸田総理は、ベストな案として自民党の政治資金改正案を国会に提出したはずです。そうですよね。
しかし、その法案が成立しても、国民の自民党案に対する不信は非常に大きいままです。政治の信頼は地に落ちたままです。
であれば、本当に国会(こっかい)の多数派が正しいのか、国民に聞いてみようではありませんか。
正々堂々と解散・総選挙をして、国民に自民党案がいいのか、立憲民主党をはじめとする野党案がいいのか、聞いてみることが最善の道ではないでしょうか。
岸田総理が自民党案に自信があるのなら、国民に信を問い、理解を得る努力をすべきです。
永田町の常識が国民の非常識ならば、永田町を変えなければなりません。 その力は国民の皆様、一人ひとりにあります。
自民党の中にも公明党の中にも、岸田総理を公然と批判する議員が出てきました。であれば、堂々とこの議場で意思を明確に示していただきたい。
自民党、公明党、与党の中からも、岸田内閣不信任案に賛成していただきたい、と強く申し上げます。
「明日の天気は変えられないが、明日の政治は変えられる」
私たちは決してあきらめず闘い続けます。
ご清聴、ありがとうございました。(了)
*当日の本会議演説では議場の雰囲気や時間の都合でこの原稿に追加したり、削除したりした部分があります。実際の演説は【長妻昭チャンネル】でご覧ください。