【読書】ピエール・ルメートル/その女アレックス
カミーユ警部シリーズを読み、数年前に読んだ「その女アレックス」を読まずにはいられなくなり、再読しました。一度読んでいたはずなのに、読めばすっかり引き込まれ、寝不足になってしまいました。
そもそもこれは2作目なのに、先に出たせいで、初読の際はイレーヌの話を知らず、カミーユの心情描写に対して今ひとつ踏み込んだ理解ができなかったのですが、今は違います。そして、ルイやアルマンの動きもとっても面白く感じることができました。シリーズものは多少連作を意識していなかったところから綻びがあるかもしれませんが、そこに息づく人物の描写に変わりはなく、読むものを引き込みます。
あ、これは大事なことなので先に書いておきます。もしまだカミーユ警部シリーズをお読みでない方は①悲しみのイレーヌ、②その女アレックス、③母なるロージー、④傷だらけのカミーユの順番で読んでくださいね。
物語はアレックスの視点、捜査部のメンバーの視点と入れ替わり立ち替わりでスピード感を上げて進んでいきます。
本書は大きな物語の転換点で三部に分けて構成されています。
第一部
女が誘拐され、殺されそうになります。何も悪いことをしていなさそうな感じですがなぜ?どうしてこんな目に遭うのか?謎が謎を呼びます。しかし読んでいると臭い、恐怖、色々なものが浮かび上がってきます。翻訳物と侮るなかれ、めっちゃ怖いのです。
第二部
女は捕まった状況からなんとか逃げ出したと思ったら今度はなぜか人を殺しまくります。名前を変えて、次から次へと。容赦なしに。読んでいる我々には目的もなく、殺しているように思えます。一体、彼女はなぜそういうことをするのか、全くわかりません。アレックスのやっていることについていけず読者はカミーユ警部ともども置いてけぼり、どんどん引き離されていきます。
第三部
二部の終わりでアレックスの旅は突然終わります。なぜ女は人を殺したのか、何もわからないまま物語はどこへ向かうのか。どういう結末が用意されているのか。もうこれ以上書けないです。ルメートルの小説はプロット命。プロットを明かしたらもうダメですからぜひ読んでくださいね。
18禁
他の作品もそうですが18禁、R指定でお願いします。子供や女性には見せたくない、聞かせたくないそういう話がいっぱい出てきます。あまりにも描写がひどいのでこの小説をダメ出ししているレビューを見たこともありますが、そこは個人の好き嫌いだから流しておきます。
ラストシーン
このシリーズ、私はいつも終わり方が好きというか、気になります。本作ではヴィダールとのやり取りで締めくくっっていますが、私は4作品の中で一番好きな終わり方です。まあ1作目と3作目はカミーユには厳しすぎますから、当然と言えば当然なのですが。
後書きに書いていた映画化は調べて見ましたがまだ実現していないようですね。ちょっとエログロなところをどうするのかな、と思いますが今時そんな映画は山ほどあるので実現したらぜひ見て見たいですね。
ちなみに「その女諜報員アレックス」という映画はタイトルだけ似てて中身は全く別物なので騙されないように(笑)
さて再読してこれでようやくカミーユ警部シリーズを読み終えた気持ちになりました。最近は年のせいなのか、大量に映画や本を消化しているせいか一度読んだり見たりしても結構忘れるようになってきました。そうでないと新しいのが入らないのだともっぱら自分を納得させてますが。ですので、シリーズものは新しいのが出ると前の作品を読んでから新作に入らないと、話がつながらないことが多くなってきました。でもこれって二度読んでも楽しめるのでお得な感じがしているのは私だけでしょうか?(^^;;
おすすめ度:★★★★★(やっぱり読み直しても最高でした。)