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【読書】スティーブンキング〜わるい夢たちのバザールⅡ 夏の雷鳴

前回に引き続き10個の短編・中編から構成される本書について読み終えたので感想を書きます。1と比べて読みやすく、キングらしさがあるのではないかと感じました。

元の英語でどう書かれているか分かりませんが1であった散文詩のようなものは翻訳がいい、悪いというのでなく、やはり作者の意図するところやトーンが染み込んできづらいのではないかと感じる一方、こうした普段からお目にかかっている小説形態はお馴染みというか、世界観に入りやすいと感じます。

読んでいない人はネタバレしちゃっているので以下お気をつけください。

ハーマン・ウォークはいまだ健在

別々のお話がエンディングに向けて徐々に交差して行く様は映像を見ているような感じがあり、臨場感があります。しかしこういう終わりに持って行くって...出だしからテンション上がりました。

具合が悪い

割とよくあるプロットなのですがなかなか途中まで気づかなかったです。広告代理店のやり手犬があるものをくわえて出てきたところはキングらしいですね。

鉄壁ビリー

ものすごい野球センスを持つ男が大活躍したのに記録が残っていない、その後登場しないのには訳がある。絆創膏の意味が最後になってよく分かります。

ちなみに小説の舞台同様少し前の世代まではスライディングやホームインでぶつかり合う野球が当たり前でした。怪我するほうが悪い、下手くそだ、みたいな野球がありましたが、コンプライアンスの関係でしょうか、最近の野球は随分きれいなプレーしか見ることができませんね。

ミスター・ヤミー

著者前書きでは若い頃の衝動はどうにもならない、その凄さを書きたかったと言っているのかもしれないけどそれをどう活かすか、ってところが面白い。死ぬ前に人生が走馬灯のように、という話や、死神のお招きがあるというのは昔からよくありますが。こういう形でお知らせが来るのも粋ですね。

それにしても死ぬ前に人間いつ死ぬのかわかればしっかりと準備ができるというものなのかもしれません。そこまでしっかりフルスイングして、後悔のない人生が送れたらいいなぁ、と思います。

小説とは関係ありませんがこのタイトルを見てジャスティンビーバーのYummyという歌を思い出しました。

トミー

60年代、ヒッピー、フラワー、ピース。

苦悶の小さき緑色の神

キングが事故で味わった痛みから出てきた小説ということですが、私も心臓の病気でものすごい痛みに襲われたことがあります。長く生きているといろいろな痛みと付き合うことになります。

お話は世界有数の金持ちの病気の治療の話から一転キングの世界に誘われます。誰もこの痛みから逃げられないのか...

異世界バス

隣り合わせたバスの中で起きたことは本当に起きたことなのか?自分の住む世界とは違う世界の話、どうしようもないことだと割り切れるか?誰しもあり得るシチュエーションに小説のタネを見いだし、グイッとひろげてきますね。

さて次からの3本いずれも秀逸でした。

死亡記事

キングの書いたDEATH NOTE。ググッと盛り上げて、ストンッと落とします。寝る前の読書はいつも寝落ちを期待して読むのですが、リズムのあるこうした中編は面白くて目が冴えてしまいますね。

酔いどれ花火

捕まった犯人がどうしてこうなったか、を刑事さんに語りながらことを振り返るという流れはドラマでもよくみるやり方です。

日本の花火はわび、サビを感じさせますが海外の花火は派手さを競うので少し趣が違うので、それを踏まえて読んだほうがいいですね。有名なところではギリシアのロケット花火でさながら戦争のようなものがありますね。

夏の雷鳴

世紀末に居合わせた友人、そして犬とのわかれは号泣もんです。

Ⅰ、Ⅱを通してキングの小説技法を(翻訳ではありますが)じっくりと教えてもらったような気がします。前書きで作者の狙いやどこからヒントを得たのか、を前もってインプットしてもらっても、読めば驚かされる仕掛けがあり、彼の独特の世界観に引き摺り込まれますね。大変楽しい2本でした。改めて過去の短編集もそのうち読み直してみたいと思いました。


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