見出し画像

European Champions Report 2024

「European Champions Report 2024」は、欧州8大リーグの2022/23シーズンにおける国内チャンピオンのビジネスパフォーマンスを詳細に分析し、クラブごとの収益構造、コスト管理、収益成長の要因、さらには育成体制の取り組みなど、多岐にわたる要素を浮き彫りにしています。このレポートでは、マンチェスター・シティ、パリ・サンジェルマン、バルセロナ、バイエルン・ミュンヘン、SSCナポリ、SLベンフィカ、フェイエノールト、ガラタサライの8チームのパフォーマンスが取り上げられています。それぞれの収益構造と財務状況の特徴を以下に詳細に説明します。

Football Benchmark, "The European Champions Report 2024" よりまとめ

1. 総収益の回復と成長

2022/23シーズンは、全クラブがコロナ禍からの完全な回復を示し、収益が大幅に増加したシーズンとなりました。マンチェスター・シティは826百万ユーロ、レアル・マドリードは830百万ユーロと、全体の中で最も高い収益を記録しました。ナポリは33年ぶりのセリエA制覇とチャンピオンズリーグでの健闘が後押しし、前年比79%の増収を達成し、収益成長率でトップに立ちました。多くのクラブがスタジアム収入、放映権、商業収入のすべてでプラスの変化を見せ、全体収益の増加に貢献しています。

2. 収益の内訳と項目別の強み

各クラブの収益構造には顕著な違いが見られます。マンチェスター・シティとパリ・サンジェルマン(PSG)は、収益の約半分を商業収入から得ており、彼らのブランド価値の高さやスポンサーシップ契約の強さを示しています。PSGの放送収入は国内放映権の分配方法の改善により前年から79%も増加し、総収益の約31%を占めるまでに成長しました。バルセロナも、商業収入が収益の49%に達し、Spotifyとの新たなスタジアム命名権契約やスポンサーシップ契約が主要な収益源となっています。バイエルン・ミュンヘンは商業収入が400百万ユーロに達し、全体収益の57%を占め、長期的なパートナーシップやグローバルなファン基盤の構築が寄与しています。

3. 試合日収入の回復基調

コロナ禍で大きな影響を受けた試合日収入も、2022/23シーズンには回復の兆しが見られます。バルセロナは190百万ユーロの試合日収入を記録し、収益の24%を構成しました。ナポリも38百万ユーロの試合日収入を達成し、チームの地元での人気やスタジアムのフル稼働が収益に貢献しています。マンチェスター・シティの試合日収入は83百万ユーロで、収益の10%を占めており、チャンピオンズリーグや国内カップ戦の試合が観客数の増加を後押ししました。スタジアム収入の回復により、チームの財務基盤がさらに強化されています。

4. コスト管理と利益構造

収益の増加に伴い、多くのクラブはコスト管理にも注力し、利益構造の改善を図っています。PSGは人件費を13%削減し、スタッフコスト比率を79%まで低減させることに成功しました。これは高額な選手の放出や人件費の見直しが効を奏した結果です。バルセロナは304百万ユーロの純利益を達成しましたが、これは特別な会計取引(放映権の一部売却など)によるもので、安定した財務状況には今後も課題が残ります。ナポリはコスト管理と収益増加を両立し、スタッフコスト比率を40%まで抑えることに成功し、健全な財務基盤を維持しています。

5. 選手の市場価値と人材育成

選手の市場価値の観点では、マンチェスター・シティは1,414百万ユーロで世界最高の選手評価額を持つチームとされています。エーリング・ハーランドがその価値を押し上げ、同クラブのブランド価値にも貢献しています。PSGも1,152百万ユーロの選手価値を誇り、フランス国内での市場価値でトップです。また、マンチェスター・シティとSLベンフィカは、若手選手のトップチームへの移行で先行しており、特にベンフィカは積極的なアカデミー運営と移籍収入に依存するビジネスモデルで財務基盤を強化しています。

6. 育成と選手移籍の戦略

近年、チームは若手選手の育成と選手移籍の収益化を強化しています。例えば、SLベンフィカはEnzo Fernandezをチェルシーに、Darwin Nunezをリバプールに高額で売却し、移籍収益の大部分を占めています。これにより、クラブは経済的に健全な運営を維持し、次世代の選手育成に投資しています。マンチェスター・シティもアカデミーからの直接的な選手移行と戦略的な移籍収益の両方で成功を収めています。

7. コマーシャルとスポンサーシップの影響

商業収入において、ブランド力の向上とファンエンゲージメントの促進が重要な役割を果たしています。例えば、PSGの商業収入は、NikeやQatar Airwaysとのパートナーシップによるもので、収益の50%近くを占めています。バルセロナもSpotifyやNikeとの契約を締結し、商業収入の成長を牽引しています。マンチェスター・シティもSNSフォロワー数や視聴者数の増加を通じて、グローバルブランドとしての地位を高め、スポンサー契約の更なる強化に取り組んでいます。

8. 財務健全性と将来の課題

クラブごとの財務状況には大きな違いがありますが、いずれのクラブも財務健全性を高める努力を続けています。PSGはArctos Partnersからの出資を受け、施設や国際的な展開を支援する計画を立てています。バルセロナはスタジアムの改修やメディア権利の売却を通じて収益源の多角化を図り、ナポリは財務効率を高めながら競争力を維持する戦略を採用しています。各クラブは、今後も経営の持続可能性を高めるために、より効率的な収益構造と柔軟なコスト管理を模索する必要があります。

まとめ

「European Champions Report 2024」は、欧州トップクラブがどのようにしてビジネスを成長させ、収益を増加させているかを示しています。各クラブの収益構造や運営戦略にはリーグや地域ごとに大きな違いがあるものの、共通して見られるのは商業収入の成長、ブランド力強化、コスト管理の徹底、そして若手選手育成への投資と言えることができそうです。

いいなと思ったら応援しよう!