見出し画像

Contract for the Web(ウェブの約束)の「原則」を仮訳しました〜インターネットと人権

「インターネットと人権」に関する最新の取り組みとして、人々がWebを使い守っていくための原則である「ウェブの約束(Contract for the Web)」という文書がある。Webに関わる政府、企業、個人が尊重するべき原則と、そのための具体的な目標を定めたものだ。2019年7月に最初のドラフト(草案)が公開された。

この文書は、皆さんご存知のWWW(World Wide Web)の発明者であるティム・バーナーズ=リー卿が2018年11月に策定計画を発表したものだ。2019年1月には政府、企業、市民団体を代表する80名以上が署名した。策定過程では政策の専門家を含む600人以上の人々の意見を取り入れた公開討議を行った。政府としてはフランスとドイツ、企業としてはGoogle、Amazon、Microsoft、Facebook、Twitter、DuckDuckGo、GitHubらが支持している。文書を公開しているのはティム・バーナーズ=リー卿らが設立したWorld Wide Web Foundationである。将来的には、「国連のような国際機関、そして各国の規制にこのWebの約束を埋め込んでいくことを目指す」としている。

この文書の「原則(principle)」部分を仮訳したものを以下に掲示する。実際の文書では、原則に加えて「目標(Goal)」が記載されている。これは国連のSDGs(持続可能な開発目標)と似た考え方だ。誰もが納得できるシンプルな「原則」と、そのための具体的な目標を併記することで、行動計画へのインプットとなることを目指している。

今回の記事では、見通しがいい形で目を通してもらい狙いから、まず「原則(principle)」を記すことにした。

ウェブの約束(Contract for the Web):仮訳

■政府が守るべき原則

原則1
すべての人がインターネットに接続できることを保証する

すべての人は、誰であろうと、どこに住んでいようと、積極的にオンラインに参加できる

原則2
インターネットは常に利用可能な状態に保つ

誰も、完全なインターネットアクセスの権利を否定されない

原則3
人々の基本的なオンラインプライバシーとデータの権利を尊重し、保護する

そのため、すべての人は自由に、安全に、そして恐れを抱かずにインターネットを使うことができる

■企業が守るべき原則

原則4
すべての人がインターネットを手頃な価格で利用できるようにする

すべての人はウェブの利用や形成から排除されない

原則5
ユーザーのプライバシーと個人データを尊重して保護し、
オンラインでの信頼を構築する

人々はオンラインで自分の生活をコントロールし、データとプライバシーに関する明確で意味のある選択をすることで力を得ることができる

原則6
人類の中で最良の人々を支える技術の開発と、最悪の事柄への挑戦

つまり、ウェブは本当に人を第一に考える公共財

■市民が守るべき原則

原則7
ウェブ上のクリエイターやコラボレーターになる

ウェブには誰もが楽しめる豊かで関連性の高いコンテンツがある

原則8
市民の対話と人間の尊厳を尊重する強固なコミュニティの構築

誰もがオンラインで安心して歓迎されていると感じるように

原則9
ウェブのために戦う

ウェブは現在も将来も、オープンで世界中の人々のためのグローバルな公共資源であり続ける

©2008–2020 World Wide Web Foundation This work is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International Licence

当文書はWorld Wide Web Foundationが公開するWebサイト https://contractfortheweb.org/ 掲載コンテンツ中、Contract for the Webの9つの原則(Principle)のテキストを、星暁雄(Akio Hoshi)が日本語に翻訳したものである。CC-BY 4.0ライセンスに従い当文書の複製は認められるが、そのさい著作権者の表示を必要とする。

スクリーンショット 2020-03-30 17.16.04

シリーズ「インターネットと人権」について

連載コラムを持っていた「仮想通貨Watch」が2020年3月で休刊したことが、このシリーズを始めたきっかけです。「次に書く場所はどこにしよう。noteはどうだろう。いいかも?」ということで取り組んでみました。

連載コラム記事の最終回では、人権の原則とインターネット、そしてブロックチェーンとの関わりを中心に書きました。以前から関心がある分野だったのですが、記事の執筆ではちょっとした苦労を味わいました。

苦労のひとつは、この分野で参照できる日本語の資料が非常に乏しかったことです。「私たちには、『インターネットと人権』という分野で日本語で読める資料や記事がもっと必要ではないか」と考え、力不足は承知の上で、取り組んでみることにしました。また間違いの訂正や情報提供を歓迎します。当方の連絡先は hoshi (アットマーク )commonsmedia.co.jpです。

■皆様からのサポートを歓迎します。

1年前の交通事故の報告記事へのサポートは、本当に身にしみました。ありがとうございました。

この記事がイイネと思われた方は、投げ銭(サポート)をお願いいたします! よい記事作りに反映させていきます!