考えるな3

就活には自己分析が必要だというけど、それって本当ですか?

少し前のこと。就活生の娘を持つお父さんから「娘と一緒に就活スーツを買いに行ったんですけど、就職後は使えない。デザインがちがいますからと店で言われたけど、そうなんですか?」と聞かれました。

私はもう大笑しっちゃって、「どこがどう違うか、具体的なこと聞きました?」と聞き返しました。この人は、私が就活スーツの販促ツールやウェブページをいくつも作って来たことを知っています。

大手アパレルの仕事でも、ウェブだけだと写真を加工することはいくらでもあります。簡単にいえば、去年の3Bの上着の写真を画像処理して2Bにできないか。今年はそれを使いたい、ぐらいのことは普通にあるのです。写真の撮影時でも、後ろをクリップで摘んでタイトにするぐらいのことは、当たり前にあります。

メーカーでも小売りでもスーツを供給する側は、どこでも売れ筋の傾向に合わせて、そこにちょっとの違いをイメージで出しているだけです。新卒の就活スーツに独自性なんてありません。

だいたい社会人何十年やってるんですか。自分が面接する立場のときに、就活生のスーツのディテールなんて見ます? そんな見る目のある面接官がいるほうが珍しい。

仕事してるときに、相手のスーツなんて見ます? せいぜい高そうだとか安っぽいとか、くたびれてるとか、そんなことでしょう。就活で着るものと、新卒で働くときに着るものと違いなんてあるわけないじゃない。と答えました。

就職活動で何を着るかは、自分がどうしたいかと、相手がどう見てくれるかだけ。真面目で誠実そうな印象にしていたら、面白みがないと感じる人もいるだろうし。逆にトレンドを取り入れてたら、軽薄そうと撥ねる会社だってあるでしょう。

自分がどうしたいとか、どう見せたいかは、いくらでも変えることができます。でも実際に、相手がどう見てくれるかを変化させることは、ほぼ不可能です。業界・企業によって、面接官によってもかなり違っていて、そう簡単には変わらない。と思うのですが、どうなんでしょ。


官庁に面接に行って、目が点になった私

つい先日、霞ヶ関に行って来ました。ある官庁の臨時職員、半年間の契約で月金のフルタイムではない、平たく言えばスポットで働くアルバイトの面接です。

募集要件に書かれている経験の範囲が、これを満たす人はそう多くない。民間でデザインやソーシャルメディア運用や広報実務の経験があって、みたいなことでした。ディレクションとかプランニングということなら、大勢いるでしょうけれども、実務となると、そうそういないはずだと思ったのです。

なんたって私は、ここからほど近い海兵隊が護っている大使館と民間企業のコラボで、半年間ほど、合意形成もやりながら実務をしていたのです。PRのプランニングやSNSの運用、大使館のスタジオで撮影、ポスターなどの制作もぜんぶやっていました。もちろん自社のデザイナーがデザインしたり、カメラマンが撮影したりはあります。

私が株式会社イグジィットを解散するわけ の続きの続き

こういう経験が求められているかどうかはわかりませんが、要件にある経験を、ほぼひとりやっていたのは間違いありません。そうは言っても、私は高卒。57歳。30歳から、ずっと社長でした。履歴書段階で落とされるだろうなと思いながら、応募してみました。

ところが面接のお知らせが来たのです。結果から言うと、不採用でした。


内容よりも驚いたのは、その面接スタイル

面接場所は上層階の会議室でした。臨時職員を募集している部署がその階にあります。つまり組織図ピラミッドの、かなり上の方にある部署です。

受付に何時何分、その部署に何時何分に到着するようにと指定されていました。会議室の前で座って待っていると、ほぼ指定時刻に招き入れられました。入って行くと、面接官が4人。その前の空間に置かれたイスに座るように指示されました。座ると、氏名、生年月日、現住所、志望動機を簡潔に述べよと指示されました。

この面接スタイル、まるで大手企業の最終の方の役員面接だなと思いましたが、それは霞ヶ関なので、致し方ないこと。志望動機は「簡潔に」と言われたので、まず「フルタイムの勤務ではないこと」「募集要件に書かれていることは私の得意分野で、お役に立てると思いました」と、ほぼこのままの言葉で答えました。

すると「それだけですか?」と尋ねられたので、しまった。もうちょっと建前が必要だったかと一瞬脳裏をよぎりましたが、行政や中央官庁の仕事をしたいとか、そんなことはまったく思っていません。この先、どこに応募しようとも、就社ではなく就職。プロとして、結果を出しますということしかありません。

応募に際して、志望動機を1000文字以内で書くようにとあったので、書類として提出しているのです。それに採用されるための建前としても、ウソはつけません。長く広告表現の仕事をしてきましたが、私の仕事上のスタンスでもあります。

今のご時世、SNSだPRだというと、何を言うかではなく拡声器を買う方法ばかりが追求されます。ウソでも煽りでもなんでもいいよと。なにより大切なのは「何を言うか・伝えたいか」というところに、ウソのないこと。騙すのはもってのほかだし、上手いこと言う程度ならまだしも、ウソをつかないと訴求力や説得力がないなら「何を言えるか」が間違っているのです。

面接で取り繕って採用されてもなぁ、と思います。

しかし驚いたのは、聞かれたことではありません。面接官たちの服装だったのです。


業界・企業・団体によって、その制服がちがう

会議室に入って質問に答えながら、どうしてこの人たちは、こんな奇妙な服装なんだろうと思っていました。

採用されなかったからといって、恨みがあるわけではありません。むしろ私なんかを面接してもらって、貴重な経験をさせてもらって、ありがとうございます。ぐらいの気持ちですが、服装はどうしても気になります。

というのも、新卒の就活だろうが社会人だろうが、仕事の場で着ているのがスーツでもカジュアルでも、それはいわば制服です。制服にセンスのいい悪いも、それほどありません。気にしなきゃいけないのは、清潔かどうかと、破綻していないかです。

よく言われることですが、スタイルがチグハグな若い子は、悪質なキャッチに捕まりやすいと。なぜってそれは、精神状態を表しているから。

面接官の4人は、スーツの下にカジュアルなシャツを着ていました。別にスーツにカジュアルなシャツを持ってきても、構わないと思います。

古いとか新しいじゃなく、一般的なスーツの上着と、シャツの素材や色・柄がチグハグだったのです。センスがあるないとはレイヤーの違う、破綻した組み合わせ。

霞ヶ関は、6月からクールビズ。ノーネクタイどころか、大臣がアロハを着ている映像を見たりします。沖縄のホテルで、かりゆしの上にジャケットを着た従業員を見たことがあります。別におかしくありません。要は組み合わせと着こなし方次第。かりゆしをパンツにインしてたら、それはちょっと、ですが。

そんなどころじゃなくて、いったいその柄のシャツはどこに売ってるんだろうと思ってしまうレベルだったのです。きっと霞ヶ関界隈では、ありきたりのスタイルなのだと思います。クールビズでカジュアルなシャツだけど、キャリア組みの人たちは、スーツでインして着る。靴は革靴。それが制服。

霞ヶ関界隈以外では、誰もそんな格好していないし、いいと思う人も、ほとんどいないのではないでしょうか。あくまでも霞ヶ関のドレスコード。もし採用されて、ここで働いていたとしたら、私も合わせるようになるでしょうか。いや、ないです。あんなシャツを売っている店を知りませんし、入りたくありません(笑)


人の反応なんて、そうコントロールできない

就活のスーツと、採用されてからのスーツがちがうなんてことは悪い冗談でしかありませんが、その職場での同調圧力はものすごくあります。よく外資だと働く環境や意思決定のプロセスが違うといいますが、それも千差万別。日本にある外資系企業でも、働いている人の多くが日本人で、上司も日本人なら同調圧力は強いでしょうし、自分もそう感じてしまうのです。

スティーブ・ジョブズがイッセイミヤケに依頼して、黒いタートルのハイネックを大量につくり、着続けていたということを引用して、「着る服を考える時間なんて無駄だ」という起業家は大勢います。制服・作業服でいいんだ、ということです。しかしそういう会社でも着るもののコードがゆるい、キャパシティが広いとは限りません。ベンチャーなら、働き方のコードは厳しいはずです。

業界どころか、個別の企業で、明文化されていないコードはいくらでもあります。そこで働き続けるには、その空気のようなコードに、それなりに合わせていくことが必要でしょう。採用されるには、個別の企業の価値基準に合わせていくことが必要なのだと思います。


今回の面接では、履歴書について、ほぼ聞かれなかったので、ああ条件を満たしていないのだなと思いました。というのも、もし採用されたら早急に最終学歴の卒業証明書や前職の在籍証明書を揃える必要があるのです。

私の履歴書は大学中退になっていますし、中退前から仕事をしていたことが書かれているのですから、不思議に思って当然です。ここを聞かれずに、会社解散の時期についてだけ聞かれたので、基準外でダメなんだろうと感じました。

もちろん聞かれたら答えるつもりでした。中退前から会社に在籍していたのは、大手広告代理店と放送局が作ったニューメディア対応の会社に呼ばれたのです。ニューメディアって言葉自体が古すぎて笑えますが、興味があれば検索してみてください。当時は雇用契約とか、そんなものはまずありません。今考えると、業務委託なんだろうなと思いますが、身分は学生でもほぼ毎日出勤していました。そう、大学には3年生の途中から、ほとんど行っていないのです。

一方で毎日デザイン賞の学生賞を受賞しましたので、どうせ4年で卒業できないだろうし、辞めていいやと思ったのです。そんなことを説明したところで、面接官たちの価値観からすれば、きっとマトモではない履歴書で、マトモではない経歴の人でしかないでしょう。

唯一履歴書に書いてあることでは「今月、会社解散ですか?」と聞かれました。「いえ、会社解散は2月27日です。まもなく清算登記と清算事業年度の税務申告が終わります」と答えながら、ただ法律上、行政上のことなのに、この人知識がないんだなと思いました。

知らなくて当たり前ですが、解散も清算も行政上のヴァーチャルな手続きです。税務署/財務省、法務局/法務省、社会保険事務所/厚生労働省ぐらいのところで、部分的にしか知られていないでしょう。逆に知っている人なら、これらをマトモにやる企業経営者は、かなり真面目だと思ってくれるかもしれません(笑) 

永久に続く法人はありませんが、解散や清算をキチンとやる人は少ないそうです。なぜってメリットはなにもありませんし、ペナルティもないそうです。

解散は任意の日を決めます。解散したら、法務局で解散登記を行います。解散登記の会社謄本を持って、税務署や都税事務所に解散届を提出します。そして官報に公告を出します。社会保険事務所には、解散登記の会社謄本をつけて全喪届けを出し、ホームページに掲載されます。そして2ヵ月以内に解散年度の税務申告を行います。この申告は、通常の法人決算・申告と同じものです。

そしてその申告が終わったら、今度は清算作業に入って、1ヵ月以上の清算期間を設けて、清算年度の税務申告をするのです。もう社会保険事務所が関係ないだけで、解散と同じようなプロセスを踏んで、清算するのです。

ね、めんどくさいでしょう(笑) もちろん税理士や司法書士の費用もかかりますし。

書類には全部、会社名・住所・電話番号・代表取締役名を書くのですが、私は毎回聞きます。「住所電話番号は、もう存在していませんが、それを書きますか?」と。事務所は解散日に解約して、存在していません。それでもどの役所でも、存在していない事務所の住所や電話番号を書くように言われます。本当に行政上のヴァーチャルな手続きです。

そんなこんなで、解散手続きを放ったらかす人、解散はしても清算はしない人など、様々なんだそうです。私はこんなことまでキチンとする、真面目で行政的には貴重な人だと思うのですが(笑)

そんなことを説明しても、面接官は「へー」ぐらいでしょう。そんな経験や経歴求めてないし、関係ないですよね。


自己分析なんて、ざっくりでいいはず

こうやって私はnoteに書いて行くことで、自分の行動とか思考を振り返ったり、自己分析してるんですけど、自己分析なんて、その程度でいいと思うんです。

自分の求めていることは、文章にしているとざっと整理されてきます。自分のことは自分で理解しているかというとそうでもないけど、文章化していると枠組みぐらいは見えてくる。

よく自己分析は、他人の評価、親・友人知人・先生・上司同僚とかからもしてもらえというけれど、学生ならともかく、おっさん過ぎる私に言ってくれるわけがない(笑) 言ってくれたところで、バイアスがかかり過ぎで一般性がない。誰かの評価が、汎用的に通用するなんてこともないだろう。

ましてや就職となると、それぞれの企業によって違うんだし。同じ履歴書や職務経歴書でも、相手によって評価はまったく変わってくるだろうし。そんなところで、きりきりと自己分析をする必要もない。

だけど自分は何を求めているのか、どうしたいのかは明確にしておく必要があるな。まず、所属したいとか帰属したいとは思ってはいない。ソーシャルメディアマーケティングとか広報や制作まわりのことで、トータルにやりたいと思っているけれども、それが無理なら切り売りでもいい。要は必要としてくれるところと、出会えばいいんだな。

と考えてくると、婚活してるのに、結婚は望んでない。好きになってくれる人と出会いたい。みたいな、こじらせ系のややこしい主張に近いのかも。

なんかヤバイな(笑)




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