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でき太くん三澤のひとりごと その154

◇ 集中力


昔、東京の塾で働いていたころのこと。
中学3年生の生徒が「わからないところがある」といって、質問にきました。

この生徒は数学が実によくできるお子さんで、学校での成績も常に上位でした。

そんな彼でも解けない問題があるのがくやしかったようで、授業の前に質問にきたというわけです。

その問題はかなり難度の高い難関高の過去問でした。解法への糸口がまったく掴めない状況だったようです。

私はそのころから「教えれば教えるほど学習効果はなくなる」と考えていましたので、今回の生徒からの質問も、あえて細かくは説明せず、ちょっとしたヒントを与えるだけにとどめておりました。

すると、「おっ!もしかして!」と呟いたかと思うと、その生徒は横に私がいるのも忘れたかのように「自分の世界」に入っていきました。横で見ていても、その生徒の集中の深さはすばらしいものでした。

彼が質問にきた職員の控室は、問い合わせなどの電話も鳴っていますし、他の先生が大きな声で授業の打ち合わせなどをしています。他に質問にきている生徒の「わかんないーー!」という大きな声もするような、少しうるさい場所です。

しかも、彼が問題を解いているのは、私の机の隅っこのとても狭い場所。
学習環境としては、必ずしも良いものではありません。

そういう環境を微塵も気にすることもなく、彼は式を書いては消したり、図を描いてみたり、どんどん「自分の世界」に入っていっていました。「自分の世界」に完全に没入している彼には、控室の騒音などは一切耳に入っていないようでした。

私がこの仕事を続けてきて感じることは、勉強がよくできるお子さんの多くは、自分で集中をコントロールできるということです。

まわりの環境がどうであれ、自分が集中したいと思ったときに、グッと集中力を高め「自分の世界」に入っていきます。


「自分が集中したいときに集中できる」


勉強がよくできる子は、そういう技術を持っているように思います。

では、どうすれば私たちは彼のように自分で集中をコントロールできるようになるのでしょうか。

それにはまず、深い集中状態を「体感する」必要があると、私は思っています。

深い集中状態にあるときの自分を「体感」していなければ、そこへ自分を導くことはできません。

小さなお子さんが公園で遊んでいるときなどは、知らず知らずのうちに、まわりの声が聞こえなくこなくなるほど深い集中をしているときがあったりします。こういう「体感」をしていることが、将来自分で集中をコントロールできるようになるために、とても大切なことのように思います。

つぎに必要なことは、できるだけ集中して物事に取り組むことを意識することだと思います。

ダラダラと物事を取り組むのではなく、いつも集中して取り組むことを意識するのです。

そうすると少しずつ、自分がどういう状態にあれば集中できるのかという感覚がつかめるようになってきます。

この感覚がつかめれば、自分で集中をコントロールできるようになってきます。

逆に、ダラダラと物事に取り組むことが多いと、それもひとつのトレーニングとなり、結果としてダラダラと物事に取り組む姿勢が身についてきてしまいます。

この姿勢が身についてしまうと、今度はなかなか集中できません。物事を取り組むときに、自然に、反射的にダラダラしてしまうのです。

そう考えると、日々自分が物事をどのように取り組んでいるのかということは、とても大切なことですね。

いつも集中して、テキパキ仕上げることを意識していれば、そういう姿勢が身につき、自然に集中力も高まる。

逆に、ダラダラすることが多いと、そういう姿勢が身につき、集中力は落ち、ミスも増え、仕上がりも雑になる。次第にそういう自分が嫌になり、勉強が嫌いになっていく。


日々物事に自分がどのように向き合っているのか。

そのひとつ一つが、将来の自分につながっていく。

こういうことを、今すぐに理解できなくても、少しずつ子どもたちには伝えていきたいですね。


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