プロジェクトマネジメントという観点からのIPO
ランサーズ経営企画室長の多胡です。前回は、コーポレート部内部統制マネージャー/経営企画室の小林より、「いかに関係者へ協力を仰ぐか」について共有させていただきましたが、そのテーマから発展して、今回はPMとしてどのようにIPOプロジェクトを進めてきたかについて触れたいと思います。
▼ランサーズIPOチームのTIPS リレー
0. ワーママ女性CFOがランサーズIPOを経て学んだ4つのこと
1. 雲外蒼天。投資家との初ミーティング
2. 現代ならではの引受審査乗り越え方
3. 内部統制整備/審査対応のヒント
4.プロジェクトマネジメントという観点からのIPO
小プロジェクトの集合体であるIPOプロジェクト
①審査対応、②目論見書を始めとするドキュメント作成、③前回ご紹介した投資家マーケティング、④内部管理体制構築、、、など、いくつもの小プロジェクトが連なって、IPOという大プロジェクトは構成されております。
そのため、IPOプロジェクト全体Project Manager(PM)としての私の役割は、それぞれの小プロジェクトの進捗を把握し、課題(リソース、時間、リスク)を解決しながらプロジェクト完了までチームを効率的にリードすることでした。大変幸運なことに、我々は当初描いていたしていたスケジュール通りに上場することができました。このようにオンスケジュールで上場する企業は非常に限られており、肌感覚ではありますが約5-6割ぐらいではないでしょうか?そのため、ランサーズがオンスケジュールでIPOを実現できたのは、本当に運が良かった!!と言えます(笑)
プロジェクトマネジメントの困りごと
やや話が飛びますが、以前社内でプロジェクトマネジメントの勉強会をするにあたり、どういったことにランサーズ社員は悩んでいるのかアンケートをしたことがありました。一番多い悩みは「どう人を巻き込み、動かすか」であり、プロジェクトの大小や難易度、専門性に限らず、「なかなか自分が思った通りに人が動いてくれない」というのが、誰もがPMをする際に一度はぶつかる壁であることが分かりました。
チームを巻き込んで最短で目標を達成するには?
IPOプロジェクトに話を戻すと、IPOプロジェクトチームメンバー全員が"やり抜く力"が非常に長けていて、さらIPOチーム外の全社員が大変サポーティブでしたので、PMの一番の悩み事である「人を巻き込む」ことに関して何かすごく大変だった記憶はございません(笑)それよりも、自分がオーナーで手を動かしていた小プロジェクト③審査対応や④投資家マーケティングを推進する方がずっとずっと疲れました、、、(笑)
とはいえ、PMをしてチームで動かすにあたり、①スケジュール管理②細かいゴール設定③チーム内外のコミュニケーションについて特に意識をしていたので、そちらについて共有させていただきます。
①ゴール逆引きでの思考・動作の徹底(1年⇒3ヶ月⇒1週間)
ほぼ全員が初IPOなので、先読みしきれない、今後待ち受けているものが把握しきれないことに関して一定ストレスはありました。そのため、スケジュール大(年間)、スケジュール中(3ヶ月間)、スケジュール小(1週間)に分けて、毎週チームで定例MTGで確認し、先々のイベント逆引きで、今すべきことの進捗や漏れているタスクがないかについて、確認しておりました。先々について一定把握できているという心理的安全な状態をつくるとともに、ゴールを見据えながら足元の作業をする(全体のスケジュールの中のどのパーツを今つくっているのか)ことで、その重要性や納期への意識を高めることができたのではないかと思います。
②MUST/NTHを意識したプロジェクトのスコープ切り
やりたいことは沢山あるので、あれもこれもタスクに入れたくなってしまいますが、チーム内の最重要ゴールを「ランサーズの成長に繋がるIPOをオンスケでする」とし、タスクの中で何がMUST(必ず必要)で何がNice to have(あったらいいが、なくても死なないもの)なのかを意識して、チームにはコミュニケーションをしておりました。特にIPOを目指すベンチャーだと、リソースが充分ではない会社が多いと思うので、限られたリソースをどこの課題を解決するために使うのか、優先順位と役割分担はプロジェクトを進める上で非常に重要になります。そういった中で、7月に様々なイベントが重複することが判明したときは、リソース観点の問題に直面し、「それぞれのイベントはMUST案件かNTH案件か、その上で実行するかどうか」を真剣に議論をしました。結論として、NTH案件だと整理した上で、それでも「やる」といった意思決定をしました。このように重要度の目線を揃えた上で、それでもリソースを張るかどうかの判断をする、というステップを踏んで決めたことはいくつかございます。このタスクについてはたしかに一時的にかなり負荷はかかりましたが、それでもチームで優先順位を議論した上「やる」と決めたので、全力で取り組み、結果として実りのある施策だったと考えております。
③IPOプロジェクトチーム内/外でコミュニケーションを変える
最後にIPOチームではない社員へのコミュニケーションについてです。IPOは全社に関わるものであるため、直接のIPOプロジェクトチームでない、つまりこのプロジェクトに対して何らミッション/役割/責任を持たない社員にも必要に応じてサポートいただく必要があり、それをいかに円滑にできるかが、プロジェクトを進める上でのキーになると考えております。なので、直接のIPOプロジェクトチームには「やるよね」前提でコミュニケーションをするのに対し、準備チーム外(ミッションを持たない)社員へ協力を仰ぐ場合は、①最優先で依頼する②背景を説明する(「3.内部統制整備/審査対応のヒント」より)、さらに③いつも以上に感謝をきちんと伝えるなどして丁寧にコミュニケーションをしていました。
参考までにですが、IPO準備が本格化する前に「上場を目指す意義」をCEO秋好より全社員に説明しました。その際になぜIPOするのか?そのために覚悟することなどについて全社員に共有し、このような時間をきちんと設けて会社としてのIPOを通じてやりたいことが明確に社員に伝わっていたので、プロジェクトチームからの依頼に対しても意図をご理解いただいた上で協力してもらえた、という背景がございます。
以上が今回の経験を踏まえて感じたちょっとしたTIPSになります。
TIPS⑥:IPOプロジェクトのPMするにあたり
-スケジュール逆引きでの思考・動作の徹底
-MUST/NTHを意識したプロジェクトのスコープ切り
-IPOプロジェクトチーム内/外でコミュニケーションを変更