洗礼
ヨセミテで3日間を過ごし、いよいよJMTの始まりだ。
ハイカーズバス出発時間の8時20分まで1時間以上ある。ヨセミテロッジで朝食にしよう。朝食はクロワッサンがメインのワンプレートにポテト、ウインナー、スクランブルエッグがのって14ドルだ。ちょっと高いが量は多い。
朝食を終え、今日からの行程を考えているとバスが到着した。いつの間にかハイカーたちがバス停の周りに集まっている。チケットを見せバスに乗り込む。
一番前の席が空いている。景色も見やすく良い場所に座れた。
運転手は目の色がとても綺麗な青色の小柄な若い女性だった。出発前、何かゴソゴソしていると思っていると、とても軽快な音楽が流れ出した。自前の音楽だろう。
日本ではなかなかない光景だが、こんな自由な感じがとても良い。彼女もノリノリで運転を始め、バスの終点Tuoluminmeadowsを目指す。
Tuoluminmeadowsからは5.8mi(9.28km)のロード歩きから始まる。ここはヒッチハイクをしてモノパストレイルヘッドへ向かうのが良いという情報をネットで見ていたので人生初のヒッチハイクをする。
が、何十台見送っただろう。全然止まってくれない。むしろわざと加速していく人もいる。心が折れそうになっていると雲行きが怪しくなり気温が下がってきた。
雨だ。すぐにレインウェアを取り出し着る。雨宿りする場所はないためこのままトレイルヘッドを目指す。それからも止まってくれる車は現れないままトレイルヘッドに到着した。
出鼻をくじかれるスタートになったが、気を取り直していこう。 それから数時間、相変わらず小雨と気温の低い状態は続いているが、だんだん景色が良くなってきた。カラフルな草原の真ん中にトレイルが1本伸びている。周りを見れば赤茶けた山や雪をかぶった山などに囲まれている。雨でも十分楽しめる景色だが、晴れていたらもっと素晴らしかっただろう。 今夜はアルガーレイクスで泊まる予定だったが、ヒッチハイクできなかったのと自分の歩みが遅いために予定よりかなり手前で泊まることに。濡れた服を着替えてラーメンを食べて温まり寝袋にくるまった。
初日の天気とはうって変わり、素晴らしい朝を迎えた。落ち込みかけた気持ちも
一気に晴れる。
昨日濡れた服を靴を朝日で乾かす間に朝ごはんにする。朝ごはんとはいえお腹がそこまで空いていなかったので、行動食のナッツとスープにした。
濡れた服を乾かし、出発したのが9時。今日はスイッチバックが続くのは分かっていたけど想像以上に長くキツイ。昨日ヒッチハイクができてたとしてもここは簡単に越えられなかったかもしれない。
出発から2時間で登りきり、そこから1時間かけてパスを下った。時間はちょうど12時だ。下ったところは景色も良いし水もあるからここで昼にしよう。
今日の昼はトルティーヤにツナを乗せ、ハンバーガー屋でもらったケチャップで味付けしたモノ。こうして文章にしていても美味しそうな感じはしないけど、実際も美味しくなかった。
話は変わるが、この時はまだ自分が1日にどれくらいの距離を歩けるとか、食事は1日にどれくらい食べるとか全然分かっていない。なので歩きながらその日のテン場を考えたり、その時のお腹の空き具合で食べるものを決めていた。
こんな決め方でいいのだろうか。テン場はなんとかなったにしても、食料だけはどこでリサプライ(食料の再補給)するか考えておかないと大変なことになる。
そうは思いながらもイメージできないので仕方ない。とりあえず歩きながら考えるスタイルで行こう。
そんなアバウトな感じで決めたこの日のテン場は※JMTに合流する手前の所だった。
※JMTは北からも南からも歩くことができる。北のスタート地点はヨセミテのハッピーアイルズと呼ばれるところだ。でもそこは非常に人気があり、パーミット(許可証)を取得するのはなかなか難しい。そのため自分はそこを通らない別のルートを選択し、2日かけてJMTに合流するという訳だ。
12マイル(19.2km)を歩ききり今日のテン場に到着した。
テントを設営し、日本から持ってきたアミノバイタルを水に溶かして飲む。
最高に美味い。水も美味しいけどたまには味がついたものが欲しくなる。
もっと持ってくれば良かった。
昨日は初日にして寒く不安な夜を過ごしたが、今日は天気も良く快適に眠れそうだ。
明日はいよいよJMTに合流する。