温かい朝ごはん
VVR
ヴァージニアレイクを後にし、次に向かったのはVVR(ヴァーミリオンヴァレーリゾート)だ。行程的に早すぎるリサプライとなるが、行ってみたいので良しとする。ここで0DAYをとり、洗濯や充電をしつつゆっくり過ごした。ビールを飲んで卓球をしたりビーチでくつろいだり最高に楽しい時間を過ごした。
そんな中、まさかの日本人PCTハイカーに出会えた。足を痛めたようで前日からここで休憩しているそうだ。彼は気さくな性格で年齢も近くとても親しみやすい。
同じ西日本の中でも割と近くの出身だったり、同じ山に登ったことがあったりと共通点があり親近感を覚えた。
突然の別れ
ザックと一緒に歩き始めて5日が過ぎた。この日は朝からザックの様子がおかしい。普段は休憩を嫌がらない彼が休憩しようという自分の提案に少しおもしろくない顔をした。なんだか先を急いでいるようだ。
話を聞いてみると、彼は8月1日からLAに住む弟の所へ遊びに行く約束があるらしく、あと一週間で歩き終えないといけないらしい。急ぐ訳だ。
ザックとは一緒にゴールしたかったが、せっかくのJMTを急ぐのはもったいないし、bishopという町でのリサプライもしないと食料が持たない。
悲しいがここから別々で歩くことにした。連絡先を交換しザックを見送った。
橋
ザックとの別れは想像以上に寂しく心細い。久しぶりに熊を意識した。
誰かと一緒にいる事がどれだけ心強いのかを改めて感じた。これはトレイルだけに限らず、日常生活でも同じなんだと思う。当たり前だけど当たり前じゃない。感謝しないといけない。そんな事を思いながら一人寂しく昼ごはんを食べる。
昼食を終え休憩していると雲行きが怪しくなってきた。少し肌寒くなってきたのでカッパを着て行動を再開した。案の定雨が降ってきた。ザックとは別れるし、雨は降るしで気分が沈む。
雨は初日ほどひどくはないが、上流から流れてくる川の水が普段より力強い気がする。上流ではもっと降ってるのだろうか。
そんな川を横目にひたすら歩いていると、川沿いで休憩している人がちらほら。
特に気に留めることもなく歩いていると川向こうから声が聞こえた。
なんだろう。よく聞くと別れたはずのザックが対岸から自分の名前を呼んでいる。
彼がいることと、ルートではない対岸にいることの両方に驚いた。
話を聞くと、自分が地図のとおり進もうとしていた先には橋があるのだが、その橋は数ヶ月前に決壊して無くなっているとの事だった。ザックは英語が話せない、読めない自分には橋が壊れている事も分からないのではないかと思い、雨が降る中じっと自分の到着を待ってくれていたのだ。
彼の優しさに感動した。どれだけ待ったのだろう、どれだけ寒かっただろう。考えれば考えるほど感動し、泣きそうになった。
彼のおかげで無事に川を渡ることができ、その日は結局同じテン場で過ごした。
寝る前、ザックから珍しく明日の朝一緒にごはんを食べようと提案があった。これで本当のお別れになると思ったのだろう。
次の日の朝、約束通り一緒に朝ごはんを食べた。いつもより切なく、いつもより温かい特別な朝ごはんとなった。
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