ママでアイドル？

僕の本業はアイドルの先生で、今現在も人数にしたら100人を超えるアイドルを指導しています。

弟子の応援をしたいので様々なアプリで弟子アイドルの投稿を見ていいね的なことをすることもあるのですが、その中で弟子とは関係ない子で「ママアイドル」という単語を見つけ、強い違和感を覚えました。

AKB48が「恋愛禁止」を暗黙のルールにしているというのは一時期有名になりました。今でも実際にそういうグループ、事務所もあります。

僕個人としてはアイドルが恋愛しても良いし、むしろするべきだという考えです。何故なら恋愛によって感情の変化が生まれ、それが表現力につながることが多いからです。しかしアイドルヲタクの世界には彼氏彼女がいるアイドルは推せないという意見もかなりあり、だからこそそれを禁止しているというグループや事務所があるのもわかります。

よく言われるのは「アイドルの応援は疑似恋愛であり夢を買っているのだから、その夢から醒めるような現実を見せるな。恋愛を我慢するのも仕事のうちだ。」という意見です。その意見も確かにと思う部分があります。

僕自身はアイドルに対して恋愛感情がまるで無く、アイドルを応援することが疑似恋愛とも思っていないので、だからこそ恋愛しても別に良いと思っているのですが、そうではない心情でアイドルを応援している人も多数いて、その人達に向ける為に恋愛禁止をルールにするというのは理解できるのです。

前置きが長くなりましたが、では何故そんな僕が「ママアイドル」という単語に違和感を覚えたのか。

それを語る前にもう少しだけ。例えば、アイドルとして大成した人がその後恋愛し結婚し母となり、ママドルと呼ばれることがあります。それについては全く違和感はありませんし、むしろ良い事だと思うのです。しかし、今回僕が見たのはそうではなく、アイドルを始めたばかり、あるいはアイドルとしてまだ知名度が無い状態で、ママアイドルであるということを売りにしている子がいて、それに対しての違和感です。

なぜそう感じたのか。それはアイドルの厳しさを知っているからかもしれません。アイドルは皆さんが思っている以上に本当に大変な仕事です。

ライヴして物販や特典会で握手だけしていれば良いというわけではありません。ライヴする為にはその曲を覚えないといけません。歌だけではなく踊りもです。グループならフォーメーションもあります。インディーズのアイドル業界だとメンバーが諸事情でお休みすることもあり、そうなるとその形に柔軟に変化させて対応しなければいけません。

ライヴのクオリティを高める為にはレッスンも常にありますし、レッスンで課題を出されることもあるでしょう。それも日常的にこなさないといけません。ライヴ以外にも各種SNSを積極的に更新しないといけません。心無いことをリプライやわざわざDMで送ってくるような輩も少なからずおり、それに対しても上手にスルーできないといけません。

これだけでも時間が相当取られ、肉体も精神も削られるというのに、その上で学生だったりすることも多いのです。

と考えると、普通は恋愛したくてもする暇が無い場合がほとんどです。

それなのに、しっかり恋愛してちゃんと子供もいて、尚且つアイドルをやりたいというのは甘いんじゃないの？　という違和感です。

先述した、アイドルとして大成した人がその後母になってママドルと呼ばれるのが問題無いのは、若い頃に様々なものを我慢し、努力し、尚且つ運もあったからこそ売れたわけで、そんな方が母となってそのスタイルを母である自分のことも受け入れているファンに向けて発信しているからです。

しかし、思うがままに恋愛して、子供という結果を残し、尚且つアイドルをやりたいというのはちょっとどうなの？　と、そう思ってしまったわけです。アイドルの世界なめてんじゃないの？　と。

多様性の時代ですから色々な方がいて良いと思いますし、その方のことを否定するつもりもありません。否定はしませんが苦言は呈したいですし、それでも尚頑張るというのであれば死ぬ気でやらんとだめだよと思います。また、子供はどうすんの？　とも思います。本気の育児と本気のアイドル活動が両立できるとは僕には思えないんですよね。だからこその違和感です。

もしかしたらこれもアイドル業界に長くいる僕だからこその偏った考え方なのかもしれません。

ですが、アイドル達は本当に色々なものを犠牲にして頑張っているんだぞというのは、もっと広く知られて良いと常々思っています。

そんなに頑張っているんだから、恋愛で報われたって良いじゃないかとも思うんですよね。だからこその、そういう意味での肯定派なわけです。アイドルは多くの人を幸せにできる素晴らしい職業です。だからこそアイドルには皆幸せになって欲しいと思います。
売れる売れないは運の要素も強いので、売れないアイドルが恋愛してはいけないというわけではありません。売れなくとも長年頑張ってきたならそれなりにファンもいるでしょうし、それだけの人を幸せにしてきたのだから本人も幸せになって欲しいです。
もしくは、完全に隠せるのであれば最初に書いたように恋愛によって表現力がつくこともありますから、所属する事務所が恋愛OKなら、うまく恋愛して欲しいとも思います。

だからこそ、既に違う形の幸せを手に入れた人が、それを隠そうともせずに気軽にアイドルだからこそ得られる幸せまで手に入れようと思って欲しくないなと思った次第です。

僕の考えがゆがんでいるのかもしれませんが。