エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
ミシェール・ヨーとキー・ホイ・クァンが主要キャラを演じ、アクション満載とくれば80年代に少年時代を過ごしたものとしては見ずにいられない映画なわけですが、どうにも多忙でなかなか行く機会が得られないまま上演が終了してしまい、諦めていたら下高井戸でまた上映すると。スケジュール見たら今日なら行けるじゃないかというわけで一人行ってきたわけですが、行けて良かった。
アカデミー賞で各賞総ナメ状態で受賞しているということもあり、傑作であることは見る前から予想できていたのですが、これは見る人によって本当に感じ方が変わる映画だなと思いました。
そして、それで良いのだとも思いました。
ともすると難解であり、意味不明にも感じられる荒唐無稽さを孕んでいながらも、大きくは家族愛がテーマであるように一見感じられつつ、いやでもそうじゃないだろと、さらに深読みもできたりします。
わかりやすく多様性を描きつつ、それが嫌味になっていないのも良いです。
僕が感じたのは安部公房の世界観。
あるいはクロノクロスの世界観。
そしてニーチェの哲学。
そのあたりを強く感じたわけです。
そして、この3つは僕の人生を構築する上で非常に重要な要素でもあるのですが、見た人それぞれがそれぞれの人生を構築する重要な要素とシンクロする部分が確実にあるような映画だなと。
衝撃を受けたというタイプの映画ではありませんでした。
しかし、じわじわとこの後きいてくるだろうなというのを感じています。
こういうタイプの映画はなかなかありません。
さらに例えるとしたら、小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」的な、あるいは沼正三の「家畜人ヤプー」的な作品だとも言えるでしょう。
つまりは無駄な知識を沢山持っている人ほど楽しめる作品です。
多くの事を知れば知るほど己の無知さに気づくわけですが、それがグノーティセアウトンであり、この映画の醍醐味だと感じています。
少なくとも見終わった今は。
そして先述したようにこの後じわじわときいてきて、また考えが変わっていくような気もするのでした。