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君たちはどう生きるか

2023/07/15

 昨日観た『君たちはどう生きるか』の感想を書きます。
 あらすじを書いたり、重要なサプライズ的展開に触れたりはしないので、観てなくても読んでくれたら嬉しいけど、近いうちに観る予定があって「俺は少しでも情報を入れたくない」「私は本当に何も知りたくない」という人はご注意ください。

 こういうときに折り畳む(クリックしないと先が読めない)方法とかあるのかな……
 note、登録だけは誕生した初期からしているんだけど、ほぼ活用していなかった。作品リストの代わりにしていただけ。それも今はリットリンクに任せているので……
 日記を始めたのは「なんか活用したいな」という気持ちもあった。
 有料記事というのもいちどやってみたいですね。
 どんな内容ならいいんだろう。

 もう少し間を取るために意味もなく写真を挿入する。

渋谷駅の岡本太郎の絵

 私は『タローマン』が面白くて岡本太郎にはじめて能動的に興味を持った、いまいちばんホットな「にわか」だけど、アヴァンギャルドな芸術を大衆に広めるという絶望的な矛盾をはらんだ(大衆が好めば、それはもう前衛的ではないので)すさまじい戦いを生涯繰り広げたのって、とんでもなく尊いことですね……

 このくらいあいだを開ければ、間違って目に入ったという人はいないだろう。では書きます。
『君たちはどう生きるか』の感想です。

 私は絵やアニメについては素人で技術的な分析はできないけど、宮崎駿監督の映画のアニメーションは「他と違う」と思う。
 いまはテレビアニメの絵も本当にゴージャスです。細かい描き込みがすごいし、精緻にぬるぬると動く。
 でも、何て言うのかな……駿監督のは、表面的なリアルさや精緻さに拘泥しない、アニメ表現だからこそ可能な、現実を超えた生命力溢れるリアリティがある。
 唯一無二の圧倒的な作画だと思う。
 なんなんだろう、あの生々しさ……端的に言えば「怖い」。
 出てくる大人たちはみんな妖怪みたいだし(あの潔癖な少年の目に映る大人たちは、父親も怖いし、お年寄りも得体が知れないというのをビジュアルで表現しているのかな……)鳥や魚と言った生き物もかわいくない。
 ホラーみがある。
『君生き』は幻想ホラーです。

 さばいた魚の内臓がどぼどぼと溢れ出てきて眞人(主人公)が押し潰されるところは、グロいけど「あれ、気持ちよさそう」とも思った。

 決して説教くさい内容ではないけど(むしろそのほうがわかりやすくなったかもしれない)80歳を超えた監督のおじいちゃんが説教したい気持ちは伝わってきた。
 言葉にするとありがちかもしれない、でも普通に大切な、
「お前ら、スマホとかばっかり見てないで、手を動かしてものを作り、足を動かして世界を知り、臆せず大人と話し、そうやって見たものや感じたことについてよく考えなさい」
 みたいなこと。

 ストーリーがよくわからない、年老いた監督の散漫な駄作だ、みたいな意見もさっそく目にしますが、別に「わからなくていいのでは」と思う。
 たくさんの寓意が含まれていて、考察すればいろいろ出てくるのかもしれないけど、圧倒的なアニメーションで表現される、あの美しい悪夢のような冥府巡りをよくわからないままに体験すればそれでいいのだと思う。
 だって、じゃあ『千と千尋』や『ポニョ』や『風立ちぬ』ならわかるのかっていうと、あれらだってよくわからんですよ。

 そういえば、主人公の眞人と同年代の子どもって出てきてないな。
 疎開先の学校にもすぐに行かなくなってしまったし。
 現れるのはみんな大人か生き物だ。
 ひとり、少女が出てきますけど、あれも……

 さっき埋め草に岡本太郎の話を少ししました。
 よくわからんけど、その一方ですごくポップで楽しいところもあるじゃないですか、岡本太郎の作品って。
『君たちはどう生きるか』は、めくるめくイメージの奔流が楽しいけど、『ナウシカ』や『ラピュタ』みたいなストーリーテリングは放棄している。ポップかつ前衛的という点で似ているような気がする。
 駿監督の、
「わからないならそれでいい、これが今度こそ本当に最後の長篇になるかもしれないし、俺は言いたいこと、描きたいことを詰めこむんだ」
 みたいな殺気に満ちている。
 やりたいことが変わっただけで、何も衰えてはいないと思う。
 あんな表現意欲を私が数十年後も持っていられる自信はとてもない。

 駿監督、『天気の子』や『すずめの戸締まり』は観たのかな……
 なんとなく、新海監督の近年の伝奇ホラー的な大作への対抗というか、アンサーというか……影響を受けたわけじゃないけど、存在は意識して「俺なら君みたいなお話はこう描くね」みたいな気持ちもあったような感じは受けたんだけど、それは私の穿ち過ぎかもしれない。わからない。
 作家って、周りが思うほど、他の作家のことをまったく気にしていないときもあるし、猛烈に気にしているときもある。

 これは強調しておきたいのですが、『君生き』はわかりにくいというのを率直に欠点とみなすのも、何もおかしくないです。
 理解が浅い人の感想とか、そんなことは決してない。つまらないというのも、健やかで正当な、あってしかるべき感想だと思う。「感想は自由」みたいなふわふわしたフォローではなく「欠点なのは、それはその通りです」という感じ。
 個人的には、その欠点も含めて、観る価値はぜったいにある。
 皆さんと感想を語り合いたいと思う。

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