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宮越ホールディングス(8834)最新情報と考察

「盯工程」という中国の建設プロジェクト情報(進行中のプロジェクト、入札情報など)に特化したプラットフォームに、WICに関する詳細な最新情報が公開されていました。

原文:世界创新中心(WIC)(又名皇冠工业区)(深圳皇冠(中国)电子有限公司)
訳文:ワールドイノベーションセンター(WIC)(別名クラウン工業区)(深センクラウン(中国)エレクトロニクス株式会社

特に注目すべきは以下の点です。

・予定工期:2025年第3四半期~2030年第3四半期
・着工予定時期:2025年8月
・データーベース登録日:2024年12月23日
・データーベース更新日:2024年12月31日

工期はQ単位で(7月~9月)で書かれていますが、「プロジェクトの期間とフェーズ」の欄に、より詳細な着工予定時期(8月)が書かれています。

「(2024年12月23日現在)プロジェクトは現在、規制の改正と予備手続きの段階にあり、開始予定時期は2025年8月です」

こちらは12月23日に登録され、12月31日に公開されたもので、上記の他にも未開示だった情報が多く含まれ、公開されていた情報もより具体的になっています。

おそらく、これは申請書類から読み取った情報というよりも、公式な建設プロジェクト情報システムに登録された計画情報ではないかと推察します。

ちなみに、この「盯工程」は建設業界向けの専門的なプラットフォームで、登録には中国の携帯電話番号によるSMS認証の他、法令に基づく身元確認が必要とのこと。今回は、現地の方に貴重な情報を提供いただき、多谢の限りです。なお、当該ページはGoogle等の検索エンジンにインデックスされておらず、会員以外はサイト内での検索は行えない仕様となっています。

そういう事情もあってか、本件をIRに問い合わせたところ「どこでその情報を知ったのか」と驚かれ、工期等の重要情報に関しては、宮越側から公式に開示していないためコメントは差し控えるとのことでした。

ただし、工期の設定に関しては、付帯設備を含めた専門的な設計検討を行い、関係当局との綿密な協議を重ねた上で決定されると説明いただきました。現時点で確定的なことは言えませんが、本情報が登録されたのが昨年末であり、着工までの期間が8カ月弱と比較的短期であることを考慮すると、着工時期が大きくずれる可能性は低いのではないか、というのが個人的な見立てです。

また、本情報の工期(2025年第3四半期~2030年第3四半期)は、先月のIR Agentsの取材記事で公開された「2029年から2030年までに入居契約を確実に締結させる」という情報とも整合性が取れています。「2029年から2030年」というのは入居契約の締結時期を指していることから、2030年第3四半期の竣工予定というのも妥当な時期だと考えられます。

以前の問い合わせで「>このスケジュールは余裕を持たせて設定したフルオープンの時期なので、建設予定の3棟のうち1部を前倒しでオープンさせる可能性もあり得る」という回答をいただきましたが、今回の問い合わせでは、さらに入居前の収益についても詳しい説明がありました。

多くの大企業に関しては、入居のかなり前に契約を結ぶとのことで、その段階で企業をサポートする契約を結ぶ予定とのことです。これは実際に企業から要望が寄せられているそうで、これにより開業前から売上を計上できる見込みということでした。

本情報に記載されている「小規模商業サービス施設」についても確認したところ、地下1階と低層階(1階から3階)に飲食店を中心とした商業施設を設置する計画とのことです。また、低層階には屋内スポーツ施設も併設する予定とのこと。


他方、本情報以外にもWICの進捗が確認できる情報が複数出ているのですが、当然ながら宮越は開示しておらず、また一般的な検索では見つけにくい情報であるため、現時点で市場では誰も話題にしていないようです。以下、長くなりますが詳しく説明させていただきます。

1/3に深圳市の新型産業施設(M0)の建築設計に関する規則案についてのパブリックコメント(2024年11月26日~12月30日に募集)の結果公表が行われたのですが、パブコメを寄せた企業の中に皇冠電子がありました。

原文:市规划和自然资源局关于公布《深圳市新型产业用房(M0)建筑设计通则(征求公众意见稿)》征求意见处理汇总表的通告

訳文:深セン市都市計画天然資源局による「深セン市新工業ビル建築設計通則(M0)(意見募集草案)」に対する意見概要表の公表に関する通知)

このパブコメはM0建築の設計基準や利用規制に関するものですが、一部、開発許可にも関係する内容が含まれているので、以下、3件のフィードバックに関して、原文の要約と、そこから読み取れる点を載せておきます。詳細が気になる方は原文にあたられることをお勧めします。

【フィードバック1】

【意見内容】
・「M0通則」を実施する際、新規プロジェクトと既存プロジェクトを明確に区別してほしい。
・「M0通則」施行時点ですでに「専用規制承認」および「実施主体の確認」が完了している都市更新プロジェクトについては、既存プロジェクトとして扱い、「M0通則」を適用せず、施行前の基準に基づいて進行させてほしい。

【説明・備考】
・すでに各種承認を受けている場合は、元々交付された許可証に基づいてプロジェクトを進行することができる。

【読み取れること】
皇冠電子側の懸念:「M0通則」の新たな規定が既存プロジェクトに遡及的に適用されることで、すでに進行中のプロジェクトに遅延やコスト増加といった影響が出ることを懸念している。一貫性のある運用を求めている。

当局の対応:既存プロジェクトについては新しい「M0通則」を強制的に適用せず、許可済みの基準に基づいて継続可能であることを明記し、懸念を一部解消している。

【フィードバック1】

【フィードバック2】

【意見内容】
・「M0通則」における建築高度制限(新型産業用建築150m以内、工場70m以内など)は場所やプロジェクトと関係なく一律に適用されている。
・例えば、都市中心部の高容積率エリアでは、制限が緩和されるべきだと考える。具体的には、新型産業用建築物の高さを250m、宿舎の高さを200mまで認めてほしい。

【説明・備考】
・建築高度制限に関する規定は「望ましい」という表現を使用しており、一律的な制約ではなく、個別プロジェクトの状況に応じた柔軟な処理が可能であることを示している。
・特定エリアやプロジェクトが高度制限を超える必要がある場合は、詳細な調査や多方面からの検討を実施し、安全性・環境影響などを考慮したうえで専門家による評価と主管部門の承認を得て調整することが可能。

【読み取れること】
皇冠電子の懸念:建築高度制限を「一律的に適用」することで、高容積率が必要な都市中心部のプロジェクトが制限され、計画の実現可能性や収益性に影響を与えることを懸念している。

当局の対応:高度制限は柔軟な対応が可能であることを明言し、特例を設けて調整する余地を示している。このことで、一律的な運用ではなく、プロジェクトごとの個別対応を可能とする姿勢を企業側に示している。

【フィードバック2】

【フィードバック3】

【意見内容】
・「M0通則」の規定において、新型産業用建築物の1ユニットあたりの専有建築面積が500平米以上でなければならないとされている。しかし、この制限は『深圳市建築設計規則』の「300平米以上」という規定と矛盾しており、中小企業が主流の深圳市における現実的なニーズに合わない。
・500平米未満の建築ニーズが多い中小企業にとって、現行の規制は負担が大きく、柔軟な対応を求めたい。
・さらに、具体的なプロジェクト進行(「世界イノベーションセンター」開発など)において、高さ150m制限や専有面積の制限が実行されると、計画容積が実現できず、誘致活動に悪影響を及ぼす。

【説明・備考】
・新型産業用建築物は、深圳市の「20+8産業クラスター」や先進製造業の中小規模企業(例:専精特新「小巨人」企業、国家レベルの高技術企業など)の需要を重視している。そのため、通常500平米以上のスペースが必要とされることを前提にしている。
・一方で、産業機能や業態の変化、また事業段階による需要の違いを考慮し、柔軟性を持たせた対応も必要と認識している。M0をオフィスビル化することを防ぐため、具体的な基準が提示されている。

【読み取れること】
皇冠電子側の懸念:500平米以上の制限は中小企業にとって現実的ではなく、需要にそぐわない規制だと感じている。また、自社プロジェクト(「世界イノベーションセンター」)の進行が規制の適用によって阻害されることを懸念し、規制緩和を求めている。

当局の対応:M0に適合する産業タイプの特性や需要に基づいて500平米以上の要件を提示しているが、一方で需要の多様性や段階に応じた柔軟な対応の必要性も認識し、特定条件下では調整可能な余地を示唆している。

【フィードバック3】

要約しても長いので、さらに総合的に要約したものを以下に置いておきます。

<皇冠電子の要望>
・プロジェクトの状況(新旧、エリア、高さ、面積など)に応じた柔軟な対応を求めている。
・一律的な規制適用による計画の遅延や経済的な影響を懸念し、現実的なニーズに基づく運用を希望している。

<当局の回答姿勢>
・基準や制限を設けつつも、特定の場合には柔軟な対応を行う余地があることを示している。
・M0規制が不動産開発に変容することを防ぐ姿勢を強調しながらも、合理性、社会的ニーズを考慮した調整可能性を示している。

総合的なざっくり要約

以下、意見(要望)の実現可能性の整理です。参考程度にお願いします。

【フィードバック1】
実現可能性:◎
理由:
・すでに専規批復と実施主体確認を得ているPJは旧基準で進められる
・開発許可申請時に新基準適用を懸念する必要なし
・当局も明確に既存案件への配慮を示している

【フィードバック2】
実現可能性:○(条件付きで可能)
理由:
・開発許可申請前に高さ制限の緩和が可能
・「望ましい」という表現で柔軟性あり
・事前に専門家評価や当局承認を得れば、制限を超える設計も可能

【フィードバック3】
実現可能性:△
理由:
・当局の回答は政策意図の説明に終始
・特定条件下では調整可能な余地を示唆

※フィードバック1の回答にある、旧基準の規定で進められる場合はフィードバック2~3の懸念(「M0通則」の規定適用)も解消される可能性あり。

意見(要望)の実現可能性の整理

以下、各フィードバックと開発許可との関係についての整理です。こちらも参考程度にお願いします。

【フィードバック1】
開発許可との関係:関係あり
要点:
・当局回答:元の許可内容で進められると明確に回答
→ 開発許可に直接関係する内容

【フィードバック2】
開発許可との関係:関係あり
要点:
・設計段階で必要となる基準であり、開発許可申請時の要件
→開発許可申請の際の設計要件に関係
 → 企業投資プロジェクト等の申請で既に審査済、もしくは開発許可(建设工程规划许可)の申請で審査中?

【フィードバック3】
開発許可との関係:関係なし
要点:
・建物完成後の区画の利用方法に関する規定
→ 建設前ではなく、建設後の運用に関係

各フィードバックと開発許可の関係

宮越目線で全体を整理すると、フィードバック1、2については、当局側が柔軟な対応の可能性を示唆しており、個別協議での調整により開発許可申請の障害にはならないと考えられます。本件は所定の審査・承認とリンクしているので、宮越が過去に承認を受けた審査、もしくは現在進行中の審査により懸念は解消されるかと思われます。フィードバック3に関しては、建設前の申請自体には影響しませんが、当局との調整、場合によっては入居企業との契約方式を工夫(複数区画の組み合わせなど)する必要がありそうです。ただし、フィードバック1の回答にある、旧基準の規定で進められる場合は、フィードバック2~3の懸念(「M0通則」の規定適用)も解消される可能性もあると思われます。

つまり、以上からWICの建設に向けて着々と進捗していると判断できるかと思います。


原文:世界创新中心项目(WIC)项目市政道路勘察劳务
訳文:ワールドイノベーションセンター(WIC)プロジェクトのための市道調査サービス

本件は1/21にリリースされた、WICプロジェクトにおける市政道路の市政道路の調査業務の入札告示です。予算額は48万元(約1,000万円)、調達方式は公開入札で、入札予定時期は2025年2月となっています。

本件に関してIRに伺ったところ、こちらは当局との協議に基づき皇冠電子が手続きを行い、費用は皇冠電子が全て支払うとのことです。こちらは開発許可といよりも、その先の建設工事に向けた実務的作業で、建設に必要な技術的データの収集が目的とのことです。

この種の市政道路調査は建設工事の直前段階で行われることが多いそうで、2025年2月の調査開始から約6ヶ月後(2025年8月)の着工を見据えた準備作業と解釈できます。

したがって、この入札告示からも、WICプロジェクトの建設準備が着実に進められていることが確認できます。


この度、着工予定時期が2025年8月と判明したことを受け、その蓋然性について考察を残しておこうと思います。

私見ではありますが、2025年8月の着工は極めて実現可能性が高いと考えています。その根拠として、以下7点が挙げられます。

①当局との合意に基づく着工予定時期の設定

着工予定時期は当局との綿密な協議を経て、正式な手続きのもと登録された情報です。宮越の決算短信でのスケジュール発表とは異なり、当局との合意に基づく期日であることから、信頼性は高いと思われます。

②市政道路調査業務の入札公告が開始されている点

当局との協議に基づき、皇冠電子は48万元(約1,000万円)の予算で市政道路調査業務の入札手続きを進めています。この調査は建設工事に向けた技術データ収集が目的であり、通常、建設工事の直前段階で実施される性質のものです。

2025年2月に予定される調査開始から約6ヶ月後の着工というタイムラインは、実務的な工程として極めて現実的です。このタイミングで皇冠電子が具体的な準備作業に着手している点は、着工時期が迫っていることを裏付ける重要な動きといえます。

③福田区行政による厳格な進捗管理体制

福田区行政は目標期日から逆算して各マイルストーンを設定する手法を採用。特に重要案件については、区の幹部による週次での進捗管理が行われ、プロジェクト全体の効率化が図られています。さらに、地区本部を設置し、期限遵守や進捗に問題が生じた場合の担当者責任を明確化するなど、厳格な管理体制が敷かれています。

詳細は以下のポストをご参考にしてください。

④区長による直接的な指示

2023年8月、福田区の周江涛区長が現地視察を行い、WICプロジェクト(皇冠城市更新项目)の計画調整作業の加速を関係部署に直接指示しています。

周江涛氏は、行政における福田区のトップであると同時に、共産党福田区委員会の副書記も務める極めて影響力のある人物です。党の副書記は区内ナンバー2の地位であり、さらに中国では党が行政よりも上位の権限を持つことから、区の発展方針に対して強い決定力を有しています。

詳細は以下のポストをご参考にしてください。

⑤国策としての位置付け

これは宮越や株主が国策と吹聴している訳ではありません。本プロジェクトは「福田区重大行政决策」という国家的重要案件に選定されています。これは年間でも数件しか選出されない案件であり、政府サイトに特設ページまで開設されるなど、明確な国策として位置付けられています。

詳細は以下のポストをご参考にしてください。

⑥交通インフラ整備との関連性

プロジェクトの前提条件となる泰然四路の拡張工事は、车公庙エリアの交通問題改善という観点から急務とされています。そのため、工期の遅延は単なるプロジェクトの遅れに留まらない重要性を持っています。

詳細は以下のポストをご参考にしてください。

⑦国際ファッション都市構想との連動

车公庙地区は、深セン市が掲げる国際ファッション都市の中核エリアとして位置付けられており、本年までに構築に向けて全力を注ぐことが明かされています。その核となる「ファッションアベニュー」が泰然四路に整備される予定であり、また「ファッションプラザ」は宮越の所有地(十亩地/皇冠科技园)エリアに建設が計画されています。

詳細は以下のポストをご参考にしてください。

上記7つの要因を総合的に勘案すると、2025年8月、もしくは第3四半期(7~9月)での着工は十分に実現可能性が高いと考えられます。

そして、2025年8月の着工を見据えると、修正規劃(草案)の承認および開発許可の取得は近いタイミングで公表される可能性が高いと個人的に踏んでいます。何にせよ、開発許可取得後、解体作業や実務的な準備に一定の期間が必要となることを考慮すると、許認可手続きが大詰めの段階にあるのは間違いないでしょう。

最終課題の「ゴミ中継施設」の移動に関しても、昨年夏から調整を続けて「移動しない」という選択肢は排除され、当局マターで複数の候補から決定を下すというフェーズに入っています。当局側も8月着工のスケジュールを認識していることから、この課題についても早期解決に向けて動いているものと推察されます。

宮越は先月のIR Agentsの取材記事で「中国の旧正月である2025年1月末までに許可が下りることを期待している」と回答していました。当時はこの回答の根拠が明確ではありませんでしたが、今回判明した2025年8月という着工予定時期(情報登録は2024年12月23日)を踏まえると、この発言は単なる期待表明ではなく、実務的なスケジュールを見据えたものだったと解釈できます。

留意事項ですが、上記の考察はあくまでも現時点で確認できる情報に基づくものです。早い段階での承認取得は期待したいところですが、それを投資判断の基準とせず、長期的な視点での投資をご検討いただければと思います。

年明けからの暴落で株主の入れ替わりもあったかと思いますが、宮越に関してはご自身で情報をよく吟味された上で、どっしり構えて見届けられる方に保有してもらいたい限りです。

最後に

宮越はIR活動に積極的ではなく公式から発表されていない情報も多いため、個人投資家の集合知で補完できればという想いでまとめています。本まとめが宮越について理解を深める一助となれば幸いです。

なお、本記事は特定銘柄の取引を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

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パキナ
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