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企業における「CLO」の存在意義とは?

いよいよ、春ですね!

新しいことに挑戦しようとする人にとって、
「桜」の季節は、自然と「はじまり」を連想させてくれます。


最近では、社会人のリスキリング(学び直し)に関する記事を目にする機会が増えました。今までの自分を振り返り、新たな自分を生み出すために、ゼロから何かを学び始める人が増えてきているとおもいます。

志を持ったすべての人が、自由に学び続けられる環境をつくることは、とても大切なことです。そして、あらゆる企業や組織にとって、そこに所属するすべての人々にとってベストな「学び」を提供することが、よりいっそう重要になってきます。

そこで今回は、企業における「CLO」の存在意義について書きます。

すべての企業には「CLO」が必要だと思っています。
その背景にある理由について、考えてみようと思います。



「CLO」とは何か?


CLO : Chief Learning Officer (最高学習責任者)

CLOとは、Chief Learning Officerの略語です。
日本語では「最高学習責任者」を意味します。

企業が経営目標を達成するために、人材開発方針の策定や学習プログラムの設計など、主に「教育・学習」の領域において責任を果たす人です。

※Chief Legal Officer(最高法務責任者)という別の役職も存在する。
※Collateralized Loan Obligation(ローン担保証券)という訳もある。

一番最初のCLOは、米GE時代のスティーブ・カー氏だと言われています。
当時、CEOのジャック・ウェルチ氏がCLOのポストを用意したようです。

日本の代表的なCLOの例として、日本マイクロソフトの伊藤かつら氏が挙げられます。日本MSでは、「Tech Intensity(技術強度)」を高めることを主眼とした人材育成を軸としています。経営の柱としてテクノロジーを捉え、組織文化とともに、いかに会社の力としていくかを考えます。

例えば、大企業向けにAzureテクニカルトレーナーやトレーニングプログラムマネージャーというポジションを作り、このポジションの人材が、コンサルタントとして企業の人材プランを作成し、育成プログラムを提供したりします。人材育成の成果は、認定資格制度の取得状況などで判断します。

社内では、毎週木曜を「Learning Thursday」と称し、1時間を学習に充てるよう促したり、毎月の最終木曜日は「Monthly Learning Day」として、5時間ほどラーニングに時間を割くよう推進しているようです。さまざまな活動を通じて、ラーニングカルチャーの醸成を目指しています。



「CHRO」との違いは?


秋元作成資料より


企業には、CHRO(最高人事責任者)がいます。Chief Human Resource Officerの略で、組織全体の人事戦略に責任を持ちます。主な役割は、人材の採用や配置、労務、福利厚生、そして社員教育など、多岐にわたります。

一方、CLO(最高学習責任者)が実際にいる企業や組織もあります。そこでのCLOは、組織全体の「学習戦略」に責任を持ちます。主な役割は、社員のリスキリング(学び直し)の支援、専門的な人材の育成、次世代リーダー育成など、学びに焦点を絞った領域での活躍が期待されています。



「CLO」の存在意義とは?


なぜ企業や組織には、CLOが必要なのでしょうか?
CLOの存在意義を考えてみました。

まずは、わたしたちを取り巻く環境をみてみましょう。

  • パンデミックによる働き方の変化(在宅勤務・リモートワーク)

  • 人材に求められるスキル・能力がすぐに書き換えられる時代

  • 市場や顧客の変化を的確に捉え、柔軟に対応することが理想

  • 環境変化に応じて、組織文化を変革する力が求められる社会

  • 「人的資本」などの非財務情報の開示も求める株式市場

  • 個人の多様なパーパスを起点としたアジャイルな学び

  • 変化することが常態化している世の中


このような環境は、これからも続きます。
だからこそ、あらゆる組織には「CLO」が必要だと思っています。

そして、組織において、CLOは3つの存在意義を持ちます。


1. 「ラーニングデザイナー」としてのCLO


  • 「ラーニングデザイナー」=「学びを設計する人

  • 「何をどう学ぶべきか?」を学習者とともにデザインする役割

  • 個人の成長のために最適な学習内容を「キュレーション」する

  • 学びの目的の言語化、学習戦略の立案、学び方の提案


すべてのCLOは、「ラーニングデザイナー」になります。
この人がいないと、組織は学びの目的と戦略を見失います。


2. 「エヴァンジェリスト」としてのCLO


  • 「エヴァンジェリスト」=「学びを周囲に伝播させる人

  • 日々学び続けながら自らを変革させようとする人のこと

  • 自然発生的に「ラーニングカルチャー」を生み出せる人

  • 学びの動機づけ、成長マインドセットの獲得、コミュニティー形成


すべてのCLOは、「エヴァンジェリスト」になります。
この人がいないと、組織は学び続ける文化を維持できません。


3. 「トランスレーター」としてのCLO


  • 「トランスレーター」=「翻訳する人」

  • 翻訳対象は「BTS*」である *Business / Technology / Sustainability

  • 日々刻々と変化する「BTS」を観察しながら、学びを調整する役割

  • BTSそれぞれの分野と、日々の学びを接続できる人材が必要


すべてのCLOは、「トランスレーター」になります。
この人がいないと、組織は意味のない学びを繰り返します。



さいごに


企業における「CLO」の存在意義とは何か?について書きました。
そして、「CLO」にとっての3つの存在意義を考えました。

しかしながら、「CLO」の本当の役割は、
「CLOがいなくてもよい状態をつくること」だと思っています。

これからは、いかに「企業が従業員を育てる」というマインドセットから脱却できるかにかかっています。そして、「従業員が自ら学びを続けられる環境を整える」というマインドセットにアップデートできるかが重要です。それを実現できるのが「CLO」であり、それを実現したら「CLO」がいなくても良くなります。


一人ひとりが自らのパーパスに向かって
自律的に学び続けられる社会をつくっていきましょう。


2022.03.13.
Tokyo, Japan

Takuya Akimoto

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