「学び」とは何か? 2つの要素について
学び、ラーニング、Learning
最近、いろいろなところで「学び」という言葉を見かけることが多くなりました。リスキリング(学び直し)、社会人の学び、生涯学習、学び続ける組織など、たくさんの場面で「学び」というキーワードが頻出しています。
背景として、変化の激しい世の中において、自らを変革させる力が問われています。つまり、自ら主体的に学び続けることの重要性が高まっています。
学びの構成要素
そもそも「学び」とは何か?
この問いからスタートしたいと思います。
誰もがこれまで人生の中でなにかしらの「学び」を経験してきています。しかしながら、「そもそも学びってなんだっけ?」と聞かれると、答えるのがとても難しいのが正直なところです。
一般的には、学校教育や習い事、受験勉強、お稽古など、「誰かから何かを教えてもらった」という経験と紐づけるかもしれません。定義は1つに定まらないのが学びの特徴でもあります。
私は、以下のように定義してみました。
学びには、「変化」と「意図」という2つの要素が欠かせないと考えます。
❶変化
まずは、「変化」について説明します。
人が「何かを学んだ」というときは、
「何かを得た」という感触を持つことが多いです。
知らない → 知る
(知識を得た)
無意識だった → 意識しはじめた
(視点を得た)
わからない → わかる
(理解を得た)
できない → できる
(能力を得た)
また、何かを得ただけではなく「何かを手放した」ときでも、学びが成立する場合があります。いわゆる、Unlearnです。日本語では「学習棄却」とも呼ばれますが、いったん学んだ知識や既存の価値観を意識的に棄却することを意味します。特に、環境変化の激しい現代においては、既存の知を新しい視点から探索する動きがあり、そこではUnlearnが欠かせません。
上記において共通していることは、どちらも「変化」していることです。
ある状態から別の状態に変化をしています。つまり、学びの本質は変化することにあると言えます。何かを経験することで、行動が変容する。何かを体験することで、心が変化する。学びに必要な1つ目の要素は、「変化」しているということです。
❷意図
次に、「意図」について説明します。
人が「何かを学んだ」というときは、
受動的に学んだ場合と、能動的に学んだ場合に分けられます。
受動的に学んだ場合というのは、受け身の状態です。
これは、ほぼ無意識に近い状態です。具体的には、無計画な状態で、何も考えておらず、たまたま偶発的に何かを得たとき、受動的な学びが起こります。よく考えると、これ自体、実に素晴らしい学びではないか!と思います。しかし、これは学びではなく、単なる出会いの一種です。学びではないと言える理由は、意図(intention)が伴っていないからです。
一方、能動的に学んでいる状態では、自ら主体的に行動しているイメージを持つことができます。自ら手を伸ばして、何かを得ようとしている感覚があります。具体的には、自分で計画を立て、何らかの仮説を持った上で、試行錯誤(トライ&エラー)を通じて何かを得たとき、能動的な学びが起こります。そこには、明確な意図(intention)が伴っています。
上記を通じて言えることは、「意図」の有無が重要だということです。事前の意図なく何かを得た場合、それを単なる出会いと呼び、意図的に何かを得た場合、それを学びと呼ぶことができるのではないかと考えました。つまり、学びに必要な2つ目の要素は「意図があること」です。
4象限
最後に、学びを実現するためには、
「変化」と「意図」の2つがどちらも成立する必要があります。
変化していても、意図的でなければ学びではない。意図的な状態でも、変化してなければ学びではない。そのように言い切ってしまうのも怖いですが、そのように考えてみようと思います。
まず、変化していても、意図的でない場合、
このケースは「マインドセット」に課題があります。(左上の象限です)
実際に何かを得たり、何かができるようになった時、人は「学んだ」と感じがちです。しかしながら、もしそれが受動的に得たものだったとしたら、それは偶然の産物であって、本質的に学んだと言えません。自らのマインドセットを受動的なものから能動的なものにシフトすることによって、学びが得られるようになると思います。
次に、意図的な状態でも、変化していない場合、
このケースは「行動そのもの」に課題があります。(右下の象限です)
主体的に何かを得ようとしているのにも関わらず、変化が見えてこないケースです。もちろん、変化が生じるまで長い時間と忍耐を伴う領域もあります。しかしながら、意図的に計画を立てて取り組んでいるのにも関わらず、何も得られないときは、行動そのもの(学び方やアプローチ)を改めてみるとよいかもしれません。
「変化」と「意図」の2つの要素
どちらも成立することによって、学びが起こります。(右上の象限です)
つまり、意図的に変化しているときに学びは起こると言えます。
英語でもLearning as intentional changeと書きました。
また、これはUnlearnでも同じことです。
さいごに
ここから先、考えたいことは、おもに2点あります。
いかに「変化」を実現するか?
いかに「意図的」になるか?
これらは決して一筋縄ではいかない、人によって答えも多様に存在するような難しい問いだと言えます。しかしながら、豊かな学びを実現するためには、避けて通れない問いです。
次回のnoteでは、上記2つの問いに答えるための記事を書こうと思います。
誰もが「能動的な変化」を実現できるようにするために、新たな提案をします。それは、学びの9原則(9つのP)という概念です。加えて、あらゆる組織において学びを実現するためには、CLO(Chief Learning Officer)という存在が重要となるということについて書きたいと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
2022.02.20.
Tokyo, Japan
Takuya Akimoto