やっとスタートラインに立ったHPVワクチン政策
2021年11月26日、約8年間続いたHPVワクチンの定期接種の「積極的勧奨の差し控え」が廃止されました。
ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種の今後の対応について
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000858774.pdf
(中略)
「積極的勧奨の差し控え」の廃止、つまり、他のA類疾病と同様に勧奨することになりました。
本通知の要点を以下にまとめます。
●各自治体が行う個別の勧奨は、基本的に令和4年4月から順次実施する(前倒しも可能)
●14歳~16歳への個別の勧奨は、HPVワクチンの供給体制などに配慮しながら行う(ワクチンの供給量が不足する恐れがあると想定されている?)
●ワクチン接種後に体調の変化が現れた場合の医療提供体制について、関係者と十分に連携してこれを確保する
●キャッチアップ接種の詳細は今後検討を進める
―――以上、要点まとめ―――
本通知が発出される前段階として、副反応検討部会での議論がありましたので、11/12の議事録を拾っていきます。
(議事録) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22253.html
(資料) https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000208910_00034.html
資料1、9ページ目
HPVワクチン接種後に多様な症状を訴える事例があったことから、このワクチンの安全性について評価が重要であるのは、言うまでもありませんが、8年もかけて知見を収集した結果、「特段の懸念は認められない」とされています。
その上で、安全性の再評価のサイクルを狭めていってはどうか、との意見も出ていました。
積極的勧奨が再開された後も、安全性の評価については、かなり慎重に行うようです。
また、ワクチンの接種の有無に関係なく、多様な症状が出ている人へのケアについて意見が出ていました。
これは全くそのとおりで、現実として、ワクチン接種に関係なく、多様な症状が出ています。
ワクチン接種後に出ている症状だけに着目してしまうと、未接種で多様な症状が出ている人へのケアを見落とすことになりかねません。
https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000088972.html
No association between HPV vaccine and reported post-vaccination symptoms in Japanese young women: Results of the Nagoya study
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5887012/
また、ワクチンの接種回数についての意見がありました。
2回で済むならそれに越したことはないので、最適な接種回数についても、検討していってほしいところです。
さて、政策的な今後の課題について述べます。
2020年1月21日、日本産科婦人科学会が厚労省の担当者宛に要望書を提出しています。
https://www.jsog.or.jp/news/pdf/20200121_youbousho.pdf
現状どうなっているかというと、
1はクリア
2はいずれ接種率は上がっていくでしょう
3は検討中
4については、9価ワクチンは女性のみ承認されましたが、定期接種化は未だにされていません。
5は未実施
6は寡聞にして知りませんが、どうなっているのでしょうか?
7はリーフレットの改定などを行って情報提供に力を入れていますが、引き続き取り組みが必要でしょう
以上のように、未実施の項目が残っていることから、積極的勧奨の再開は、スタートラインに立ったところだと言えるでしょう。
個人的には、今後、ワクチンの供給体制がネックになってくることを心配しています。
<20220617追記>
2022年3月4日に開催された「第18回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会」の議事録がアップされましたので、注目点を拾っていきます。
資料
議事録
多くのハイリスクの遺伝子型をカバーする9価ワクチンの定期接種化について、前向きな意見が出ています。
9価ワクチンの男性への定期接種化を検討すべきという意見が出ています。これは前述した要望書の4番、5番に関連する内容です。
・3回接種から2回接種の検討
・キャッチアップ接種に使用するワクチンの種類(+供給問題)
・男性接種
これらの論点が示されました。
今後のワクチン政策の動向にも注目です。