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手癖で小説を書くよ #3

 今日も筆を置いた。
 毎日、毎日、これが日課だ。日課としか言えないのが残念ではあるが、これしか僕にはできないのだ。

 生きるために書く。僕は何かを書いていないと、死んでしまいそうになるのだ。
 否、死んでしまうのかもしれない。それはわからない。書くのをやめたことが無いからだ。

 僕はノートを閉じる。
 やっと今日も作業を終えたばかりだ。ここに書かれたものは、みな僕の生きる糧になる。

 何か、とは言ったが、つまるところ簡単なものしか書いていない。いろいろな人間の人生が始まって終わるまで。その一続き。
 それを書くことが、僕の仕事だ。
 何年経っても面白いこの仕事を、僕はやめる気にならない。というか、やめたら死んでしまう。

 やれるだけやったろうじゃん、と決めたのはいつのことだったか。相当、昔のことだったように思う。
 それがここまで続いているのだ。なかなか自分も気が長いと思う。

「さて、終わりにしたし……寝よう」

 そして僕は、太陽を隠して月に明りを灯した。

「作家業ってのは楽しいけれど……神様ってのは、大変だな」

 ふわふわのベッドに身を投げる。

 さあ、明日も誰かの人生を決めよう。
 おやすみ、セカイ。


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金森 璋
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