弱い刺激が効く理由
私のセッションではあまり強く触ることはありません。
必要なときはしっかり触るけど、
あくまでも「快」の範囲。
「どうして触れてるだけなのに変わるの?」
といつも聞かれるので、今日はその理由について書きます。
アルントシュルツの法則、というのがありまして
弱い刺激は組織の働きを目覚めさせる
中くらいの刺激は組織の働きを高める
強い刺激は組織の働きを抑制する
非常に強い刺激は組織の働きを静止させてしまう
というものです。
私のワークはだいたい「弱い」か「中くらい」。
刺激に対して受け手の呼吸が止まったり、
筋肉が緊張してたらそれは強すぎる。
「硬いものは強い力でないと変わらない」
という信じ込みはいまだに強いけど、
からだってそんな単純なものじゃありません。
何が筋肉を緊張させているか?
脳、神経、心の状態。
気付いていてもいなくても、
「危険だ」と判断してるから緊張させている。
目的は筋肉を緩めることではなくて、
この「からだ」という有機体に無意識のレベルで
「今は安全ですよ」と知ってもらうことです。
からだは施術者よりもずっとずっと賢いから、
「安全だ」という情報を受け取れば
最適な状態に自己調整してくれます。
『北風と太陽』の太陽のように、
旅人が自分から緩まっちゃいたくなるようにする。
施術者ができるのは環境を整えることだけで、
変化するのはいつだって受け手のからだの力でしかない。
*
この仕事を始めたばかりの頃、
「もっと強くやっていいですよ(弱いよ)」
ってたまに言われました。
とくに男性から。
最初はリクエストに応えてみたりもしたけれど、
やっぱり違うと思って
クライアントが口で言ってることよりも
からだが言ってることを聴くようにしました。
「どのくらいの強さが必要?」
「どのくらいの深さが必要?」
「どのくらいの長さが必要?」
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そうすると、
だいたいみんな寝落ちして、
そして目覚めて
「なんでこんな弱い力で変わるの?」
と不思議がる。
からだに触れるということは
神経を介して脳と会話するということです。
「触ってるだけでどうして変わるの?」
とみなさん不思議がるけれど、
ずっとずっと会話をしているんです。
施術者はそういう訓練をしているから
それが分かっているけれど、
こういう「ふれあいの駆け引き」の能力って
本来は誰もが持っているもののはず。
力技よりやさしさ。
厳しさより思いやり。
コミュニケーションをとり続けること。
そういうのが、私は好きです。